腸内細菌叢は、迷走神経刺激、免疫系あるいはホルモン分泌を介して、宿主の脳機能を変化させて行動を調節する。近年、我々は腸内細菌が宿主脳内における遊離アミノ酸濃度にも影響を及ぼすことを報告した。乳酸菌の機能性に関する報告が増す一方で、学習能力に対する役割は不明である。加齢に伴う認知機能不全は、ヒト、イヌまたネコにおいても問題視されている。本研究では、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 2038 及び Streptococcus thermophilus 1131 乳酸菌株を利用したヨーグルトの長期投与が、マウスの空間記憶や大脳皮質における遊離アミノ酸及びモノアミン濃度に及ぼす影響を調査した。その結果、ヨーグルトの長期投与が8方向放射迷路試験における空間参照記憶のスコアを改善し、大脳皮質中のセロトニン、L-アラニン、D-およびL-セリン、L-バリン、L-イソロイシン濃度を増加させた。以上より、ヨーグルトを長期摂取することで、大脳皮質における数種のアミノ酸やセロトニンの代謝が変化し、マウスの空間参照記憶が改善し得る可能性が推察された。
家庭で飼育されているネコにおいて食事の吐き戻しの経験率は6割であった。この現象に対して飼い主の関心は高いものの、ほとんど対策は取られておらず消費現場で問題となっている。従来の多くのペットフードはエクストルーダーにて成型され、その後に栄養調整や嗜好性を上げる目的として油脂類がコーティングされる。エクストルーダー成型によってキブルが硬くなると同時に表面の油量が多い事によって、キブルは水分を弾きやすくなる。この吸水速度の遅さが胃内での胃液消化が開始されるまでの時間の遅延につながっている可能性があると考えた。そこで、吸水性能と離水性能を兼ね備えたリグノセルロースや繊維粒径の大きい精製セルロースを生地に練り込んだキブルや、エクストルーダーの先端で充分に膨化した状態でカットする製造方法によって作成したキブルを作成する事で、吸水速度の向上と短時間でのペプシン消化率の上昇を実現した。このような吸水速度が速く離水性能の高いドライキャットフードを、吐き戻し頻度の高い単頭飼育の家庭ネコに対して給与したところフードの吐き戻しの頻度を軽減する事が確認された。
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