ケストースはヒト並びにマウスにおいて腸内細菌叢環境を是正することにより、食物アレルギーやアレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患における異常免疫反応を是正する三糖構造のオリゴ糖である。健常犬においてケストースがどのような効果を及ぼすかについてはこれまでに検討されていない。そこで本研究においては、健常犬を用いてケストース投与前後における腸内細菌叢および免疫解析を行い、その効果について検討した。
イヌの骨格筋、脳、肝臓、腎臓について、解糖の律速酵素であるホスホフルクトキナーゼ-1(PFK-1)のサブユニット構成や、PFK-1とその逆向きの反応を触媒するフルクトースビスホスファターゼ-1(FBP-1)の酵素活性について比較検討した。その結果、各臓器におけるPFK-1のサブユニット構成や酵素活性は、各臓器のエネルギー代謝の特徴に応じた臓器分布をしている事が示唆された。
市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
霊長類研究所内で飼育されている108頭の健常コモンマーモセットの血中亜鉛濃度を測定し、1)血中亜鉛濃度の基準値、2)血中亜鉛濃度のバイオマーカーとしての有用性を検討した。血中亜鉛濃度は53.0±15.8μg/dlであった。WMSと診断された個体の血中亜鉛濃度は19.2μg/dlであり有意に低かった。また、血中亜鉛濃度は血中アルブミン値と正の相関を示した。これらの結果から、健康状態のバイオマーカーとして血中亜鉛濃度の有効性が示唆された。
糖尿病の猫には炭水化物を制限した高蛋白・低炭水化物食を処方するが、基礎疾患や併発疾患を有する場合があり、その際にはそれらに対する食事療法を優先すべきであるとされている。しかし腎臓病用療法食は低蛋白食で脂質と炭水化物の割合を増やしており、理論上は血糖値が増加しやすい組成となっている。従って一般的にはインスリン投与量は増量した方が良いと推察されるが、今回、腎臓病用療法食に変更し十分な水和をしたことで、血糖値が上手くコントロールできるようになり、インスリン投与量を減量できた猫の2症例を報告する。
成雄ネコ4頭に3水準のCa濃度(0.7%、1.5%、1.9%)のドライフードを給与した。食餌のCa濃度が高くなると糞のCa濃度は高くなったが、尿のCa濃度は変化しなかった。シュウ酸濃度は糞も尿も食餌のCa濃度の影響を受けなかった。食餌のCa濃度を高くすると、血清のCa濃度は低くなる傾向があった。以上の結果は、食餌のCa濃度を高くすると、消化管からのCa吸収を抑制することで、結果的に尿のCa濃度が影響を受けないという作用機作を示唆している。
肥満細胞腫に罹患した犬の飼い主およびその担当獣医師から、患者の状態に合わせた手作り食の相談を受けたため、腫瘍疾患時に適した栄養組成 [1] [2] [3] [4] に基づいた手作り食レシピを作成し、そのレシピをもとに、自宅での手作り食を開始したところ、食欲の向上、体重維持、運動量の増加を認めた。また、肥満細胞腫に対しても、明らかな増大はみられず、良好に推移した。手作り食を通じた栄養指導を継続したところ、飼い主および担当獣医師からも満足な結果が得られたため、その概要を報告する
犬猫用栄養補助食品であるヘパテクトⓇプレミアム (HTP) の安全性や有用性についての情報は極めて少ない。本研究では、イヌに対する HTP の安全性を調査するために、臨床的そして血液化学検査の結果に異常のない健常犬に対して HTP の推奨量とその 3 倍量を与え臨床状態の観察と血液化学検査を行った。さらに、イヌに対する HTP の有用性を調査するために、肝庇護薬や利胆薬の内服で上昇した肝酵素が改善しないイヌに対して HTP を与え、その給与前後の肝酵素を測定した。その結果、HTP はイヌに対する 4 週間の連日給与の安全性は高く、肝庇護薬や利胆薬に併用することで上昇した肝酵素の数値を改善させる可能性が示唆された。
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