ペット栄養学会誌
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24 巻, 2 号
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原著論文
  • 辻本 綾子, 辻本 義和
    2021 年 24 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のあるイヌが年々増加し、食物アレルギー用療法食やグレインフリーと記載のあるフードの種類も増えている。しかし近年、療法食中の原材料に表記のないアレルゲンの混入が指摘されている。ヒトの食品では微量のアレルゲンの混入でも重篤な症状を出す危険があるため、食品中のアレルギー表示義務が法律で定められ、検査方法や手順も確立されている。一方で、ドッグフードにはアレルゲンの混入に関しての明確な基準や表示義務はない。今回、ヒトの食品におけるアレルギー表示の基準となるアレルギー物質検査を、イヌの療法食を対象に実施し、混入の実態について調査した。調査対象は、原材料に小麦・卵・乳の記載のない食物アレルギー用療法食の5製品とした。結果は5製品中、小麦は3製品、卵は1製品で、ヒトの食品での表示基準を超える量のアレルゲンの混入が認められた。乳の混入は認められなかった。本研究によりイヌの療法食において表記外のアレルゲンの混入が確認された。イヌの食物アレルギーは未だ不明な点が多く、適切な理解をすすめていくうえで、今後、アレルギー表示について議論していく必要がある。

総説
解説
ペット栄養管理士コーナー
日本ペット栄養学会 第22回大会
一般演題
  • 辻本 綾子, 辻本 義和
    2021 年 24 巻 2 号 p. S8-S9
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    高脂血症とは血中のコレステロールまたはトリグリセリド(TG)、あるいはその両方が高濃度となる脂質代謝異常である。高TG血症は膵炎との関連性が指摘され、高コレステロール血症は動脈硬化症のリスクになる可能性もあるとされている。高脂血症の治療として、原発疾患があればその治療を開始し、それと並行し「食事療法」を行う。食事療法としては低脂肪食の給餌が基本となる。食事療法に反応が乏しい場合、オメガ3脂肪酸や5-アミノレブリン酸(以下5-ALAとする)などのサプリメントの使用や脂質降下剤の投与などの薬物療法が推奨されている。今回、高コレステロール血症と高TG血症を併発していた1才のチワワに対し、栄養指導として、低脂肪食ならびにモエギイガイ抽出脂質物を用いたことで、高コレステロール血症・高TG血症ともに改善が認められたので、その経過について報告する。

  • 松宮 佑樹, 米澤 智洋, 三澤 嘉久, 藤原 夏樹, 茂木 朋貴, 前田 真吾, 桃井 康行
    2021 年 24 巻 2 号 p. S10-S12
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    ドコサヘキサエン酸(DHA)に抗てんかん作用がある可能性が注目されている。本 研究では、犬の特発性てんかんに対するDHAの作用を明らかにするために臨床試験をおこなった。既存の抗てんかん薬で治療中の特発性てんかんの犬5頭にDHAを投薬した。このうち6ヶ月の試験期間を完了した3頭とも、投与開始から2~3ヶ月後には50%以上の発作回数の減少が認められ、5~6ヶ月後は1ヶ月に0~1回に減少した。すべての症例で一般状態や血液検査項目に明確な有害事象を認めなかった。症例数が少なかったこと、無作為化比較試験ではなかったことから評価は限定的ではあるが、DHAが犬の特発性てんかんに有用な可能性が示された。

  • 酒居 幸生, 鳩谷 晋吾, 古家 優, 島村 俊介, 鍋谷 知代, 谷 浩行, 嶋田 照雅
    2021 年 24 巻 2 号 p. S13-S14
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    慢性腸症(CE)と診断された犬35頭における血中のマグネシウム(Mg)およびカル シウム(Ca)濃度を評価し、腸炎の重症度や予後との関連を比較検討した。その結果、MgはCaよりも多くの症例で血中濃度が低下し、腸炎の組織学的および臨床的重症度と強い負の相関関係を示した。一方、低Ca血症を呈する症例は予後不良であったのに対して、低Mg血症の有無で症例の生存期間に有意差は認められなかった。以上のことから、犬CE症例における血中のMgはCaよりも腸炎の重症度を鋭敏に反映しており、バイオマーカーとして有用であると考えられた。

  • 酒居 幸生, 古家 優, 鳩谷 晋吾, 島村 俊介, 鍋谷 知代, 金城 綾二, 谷 浩行, 嶋田 照雅
    2021 年 24 巻 2 号 p. S15-S16
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    慢性腸症(CE)または消化器型リンパ腫(AL)と診断された犬における血中アミノ酸濃度(39種類)を分析し、両疾患を判別するアミノインデックスの構築を試みた。CEおよびALは、それぞれ14頭および6頭が組み入れられた。2群間で年齢や性別、不妊手術の実施状況、症状の重症度、ステロイド投与歴に有意差は認められなかった。10種類の血中アミノ酸濃度を組み合わせたところ、判別的中率が100%のアミノインデックスが構築された。本指標は犬のCEとALを簡易かつ正確に判別できる可能性があり、ALの迅速診断に有用であると考えられた。

  • 原 愛実, 新名 彩加, 松本 浩毅
    2021 年 24 巻 2 号 p. S17-S18
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    異常な腸内細菌叢の状態であるdysbiosisを正常化することを目的として、プロバイオティクスを含むペットフードやサプリメントが注目されている[1-2]。しかし、細菌製品がイヌの消化器に及ぼす影響についての報告は限られている。本研究の目的は、プロバイオティクスを給与することによって起こりうる糞便中の細菌叢とその代謝産物である短鎖脂肪酸 (SCFA)濃度の変動の関係を調査することである。健常犬にプロバイオティクスを給与し、糞便中の細菌数およびSCFA濃度の変動に対する関係性は単回帰分析を用いて解析を行った。 酢酸濃度の上昇に対する細菌の影響力は、Bacteroides属(係数推定値2.46、p<0.01)、Fusobacterium属(係数推定値2.28、p<0.01)そしてC. coccoides group(係数推定値1.42、p<0.01) の順であることが明らかとなった。さらに、プロピオン酸濃度の上昇には、Bacteroides属(係数推定値0.97、p<0.01)とFusobacterium属(係数推定値0.79、p<0.01)がその順に影響することも明らかとなった。これらのことから、特にBacteroides属とFusobacterium属の細菌数の増加により酢酸とプロピオン酸の濃度を上昇させることで、腸内の免疫機構の修復が期待できることが示唆された。今後さらなる研究によりdysbiosisの関与が疑われる消化管疾患に対する細菌製剤の使用基準の確立が期待できる。

  • 奥山 美咲, 菅野 大, 松井 徹, 舟場 正幸, 友永 省三
    2021 年 24 巻 2 号 p. S19-S20
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    鹿肉を主原料とする市販ペット用間食46種の鉛含量を調査し、国内の市販ペットフードおよびEUの補助食における鉛基準値と比較した。29種の鉛含量は定量下限を下回っていた。鉛を定量できた17種のうち、国産の1種と外国産の1種は国内の鉛基準値を上回り、この外国産間食はEUの補助食中鉛基準値も大きく上回っていた。多くの間食中鉛同位体分布は報告されている鉛弾の分布の範囲外であったが、鉛基準値を上回った外国産間食はこの範囲内にあった。したがって、この間食の原料である鹿肉が鉛弾で汚染されていた可能性は否定できない。鹿肉など野生鳥獣肉のペットフードへの利用に際しては、鉛汚染に注意を払う必要があると考えられた。

  • 辻本 綾子, 辻本 義和
    2021 年 24 巻 2 号 p. S21-S22
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のある犬は年々増加し、対応する食物アレルギー用療法食も数多くある。しかし、ドッグフードにはヒトの食品のように、製造工程などで生じる微量アレルゲンの混入に関して、明確な基準や表示義務はない。 そこで、ヒトの食品においてアレルゲン混入の有無を調べるための検査である「アレルギー物質検査」を、イヌの療法食に置き換えて実施した。原材料に表記のなかった小麦・卵・乳について検査したところ、小麦・卵では基準を上回る微量アレルゲンの混入が確認された製品があった。今回、新たに「大豆」について調査した。また「小麦」は、以前の研究において混入があった製品となかった製品を対象に、製造ロットが異なるもので再検査をした。大豆は3製品中2製品で基準値を超えるアレルゲンの混入が認められた。小麦は2製品ともに基準値以下で、製造ロットによるアレルゲン混入量の違いが確認できた。現在、イヌにアレルギー反応を起こすアレルゲン量は不明であり、微量であっても原材料表記外のアレルゲン混入が除去食試験結果に影響を及ぼす可能性もある。故にドッグフードにもヒトの食品同様にアレルギー表示に関する基準の設定が望まれる。

  • 田村 和也
    2021 年 24 巻 2 号 p. S23-S25
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    犬の歯周病は有病率の高い疾患であり、小動物診療において遭遇する機会の多い疾患である。著者は犬の飼育における主たる習慣因子である食性に注目し、歯周病の進行に対する給餌されている食餌の食性の影響を検討した。歯周ポケット表面積および欠損歯数ともに、ウエットフードの給餌、人の食べ物を与えない、さらに間食を与えないことが歯周病悪化因子となり得る可能性が示された。

  • 橋本 詩織, 糸永 真奈美, 大石 亮, 鈴木 武人, 勝俣 昌也
    2021 年 24 巻 2 号 p. S26-S27
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    去勢雄成ネコに試験飼料3種(プロバイオティクス資材として、セルロースを成分の主体とした候補資材A、フラクトオリゴ糖、難消化デキストリンのそれぞれを添加した飼料)とプロバイオティクス資材を含まない対照飼料を30日間給与した。糞の総DNAと短鎖脂肪酸の濃度を測定するとともに、16S rRNAコード領域のシーケンスによって細菌叢を解析した。いずれのプロバイオティクス資材を給与しても糞の短鎖脂肪酸濃度は変化しなかった。一方、主成分分析とクラスター解析の結果からはフラクトオリゴ糖あるいは難消化デキストリンを給与すると腸内細菌叢の斉一性が高くなることが示唆された。また、供試飼料のちがいは Bifidobacteriumの割合に影響を及ぼす傾向があり(P=0.0953)、フラクトオリゴ糖を給与した ときの平均値が高かった。

  • 五十嵐 寛高, 奥田 歩, 伊藤 哲之, 新田 卓, 久末 正晴
    2021 年 24 巻 2 号 p. S28-S29
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    健常な犬6頭に対し、高栄養食、低脂肪食、高繊維食を2週間ずつ給与し、食後の血清TG・T-Cho濃度の変動について評価した。いずれの食事でも食後の血清TG濃度の上昇が認められ、特に高栄養食で顕著であったが、食後12時間で食前と同程度にまで低下していた。 一方、血清T-Cho濃度は食後の変動がほとんど認められなかったが、高栄養食では低脂肪食高繊維食と比べて有意な高値で推移した。

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