現在、イヌの消化器疾患治療においてプロバイオティクスや抗生物質の投与より先に食事療法が推奨されることがある。本研究では、下痢や潜血便等の消化器症状が存在する16頭の家庭犬を対象に、独自の複合プレバイオティクスを配合した市販療法食を与え、消化器症状への影響を明らかにした。各家庭犬に試験食を8週間給与し、切り替え期間前、給与後4週間目、給与後8週間目でアンケート調査を行った。結果、イヌの炎症性腸疾患の重症度を定義する指標であるCIBDAI、糞便スコアにおいて有意な改善が見られた。このことから、イヌの消化器疾患に、独自の複合プレバイオティクスを配合した市販療法食の給与が有効であることが示された。
ドライタイプの総合栄養食ドッグフードのタンパク質消化率について、飼料評価に用いられるペプシン消化率を用いて各製法による比較を行ったところ、フリーズドライ製法が最も消化率が高かった。さらにイヌ消化性試験においても、フリーズドライ製法は、エクストルーダーによるHTST加工のフードと比較し、粗タンパク質における消化率が有意に高かった。また、フリーズドライ製法のフードでは、糞便中のアンモニアが有意に低減した。以上のことから、フリーズドライ製法の総合栄養食ドッグフードは、タンパク質の消化率が高く、大腸において未消化のタンパク質がウェルシュ菌などいわゆる悪玉菌により分解されて産生される、有害な物質の発生が抑えられることが示唆された。
成犬 (維持期) を対象としたAAFCO養分基準2016年版の基準を満たすように、日本食品標準成分表から食品・調理方法・量を選定し、手作り食の栄養素量の理論値を算出した。さらに、このレシピをもとに調理した手作り食の栄養量の実測値を測定し、理論値との比較を行った。理論値においては、AAFCO養分基準2016年版を満たすことが可能であったが、実測値ではカルシウム、カルシウム : リン比、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ビタミンB2が不足し、ビタミンDは過剰であった。食品の中には、時季や食品の生育環境などにより栄養素量の変動率の大きい食品が存在することや、食品の調理方法により値が変動する可能性がある。そのため、理論値のみではAAFCOの養分基準を満たすことができないことが示唆された。
二糖類の分解酵素であるα-グルコシダーゼを阻害することで、食事中の特に炭水化物の吸収を防ぐ作用のある、サラシノールを含む犬用サプリメント (商品名 : インスラクト) が3頭の糖尿病犬の血糖コントロールに与える影響について検討した。その結果、サプリメントを給与することにより、食後高血糖が抑制でき、血糖コントロールが改善する症例が存在した。今回使用したサプリメントは糖尿病犬の血糖コントロールを良好に保つための補助的な作用を持つ可能性がある。
肥満猫の血清を用い、リポ蛋白質コレステロール分画を測定した結果、健常猫の数値と同程度であり、猫では肥満であってもT-CHOの上昇は認められず、リポ蛋白質コレステロール分画は変化しないことが分かった。一方、肥満ではないがT-CHOが高値を示した検体では、LDLが高値を示し、さらに肝または腎数値が上昇していたことから、リポ蛋白質コレステロール分画の変動は、他の疾患と関係している可能性が示唆された。
昨年度の大会で、食物アレルギー用療法食においても原材料に表記のない小麦や卵、大豆などのアレルゲンが混入していた製品があることを報告した。われわれは今回、原材料に表記のない小麦や大豆の混入が確認された食物アレルギー用療法食を長期間給餌していたが、掻痒性皮膚疾患が継続していた柴犬に対して、調査の中でアレルゲンの混入が認められなかった療法食製品に切り替え、その経過を観察した。食事変更後、皮膚症状が軽減され、結果として、掻痒を抑えるために服用していたプレドニゾロンの休薬が可能となり、維持できたのでここに報告する。また療法食変更前後で実施したアレルギー検査の結果についても検討した。
市販鹿肉ウエットフード (Wet) と市販ドライフード (Dry)を原物ベースで4 : 1の割合で混合した「Wet+Dry」あるいは「Dry」を去勢雄成ネコ4頭に給与し腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。腸内細菌叢を主成分分析で解析したところDryを給与したときは各ネコの腸内細菌叢のプロットが近いところに集まった。一方で、Dry+Wetを給与すると各プロット間の距離が大きくなった。Dryフードの給与では斉一だった腸内細菌叢がWetも同時に給与すると斉一さを失ったことを示唆する結果となった。
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