ネコにおいて食餌の水分含量ならびに脂肪含量が尿量に及ぼす影響について検討した。健康な成ネコ6頭を用い, 1)低脂肪ドライ食(LFD);油脂含量4.0%,水分含量9.8%, 2) 低脂肪ウェット食(LFW);LFDの水分含量が70%になるように脱イオン水を添加,3)高脂肪ドライ食(HFD);油脂含量15.0%,水分含量9.9%の3種類の食餌を1期2週間の3x3ラテン方格法により給与した。LFD群に比べてLFWおよびHFD群では尿量が増加した。LFW群は,飲水量は最も少なかったが食餌由来の水分摂取量が著しく増加したため,両者を合わせた経口水分摂取量が最大となり,このことがLFWによる尿量増加の原因と考えられた。一方,HFD群では代謝水を含む総水分摂取量はLFD群と差はなかったが,乾物消化率が高く,糞量の減少に伴う糞中水分排泄量の減少が尿量増加の原因と考えられた。以上の結果,食餌の水分含量と脂肪含量は共に尿量に影響を及ぼすが,両者の尿量増加機序は異なると考えられた。
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