大豆による腎保護効果の作用機序として、大豆リン脂質などの微量成分による腎臓での抗炎症効果が報告されている。我々は、分離大豆タンパク質(SPI:Soy Protein Isolate)を特定のプロテアーゼで分解して得た難消化性大豆タンパク質中に大豆リン脂質が高濃度に含まれていることを見出した。腎臓における慢性炎症はネコの腎臓病や下部尿路疾患の原因の一つであることから、難消化性大豆タンパク質はネコの腎臓や下部尿路に対する保護効果が期待される。本研究ではこの素材がネコの腎機能や尿性状に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。試験1では、臨床上健康なネコ10頭に難消化性大豆タンパク質を1 g/頭/日で7日間給餌した際の身体検査所見を評価するとともに、血液検査、尿検査を行い、難消化性大豆タンパク質の投与による生理機能への影響を評価した。その結果すべての個体において、腎機能マーカーである尿素窒素およびクレアチニンの濃度は基準範囲内を維持し、一般観察における有害事象も認められなかった。一方で、臨床上健康なネコを用いたにもかかわらず、試験開始前の段階で一部のネコにおいて尿タンパクやアルカリ尿、ストルバイト結晶の析出が確認されたが、試験終了時には、それらの所見は認められなかった。試験2では長期的な摂取の影響を調べる目的で、臨床上健康なネコ8頭に難消化性大豆タンパク質を0.2 g/kg体重/日で30日間摂食させた。その結果、尿素窒素、クレアチニンおよびSDMA(Symmetrical Dimethylarginine)は基準範囲内を推移し、その他の異常所見も認められなかった。以上2つの試験結果より、難消化性大豆タンパク質は腎臓に大きな負担をかけることなく、アルカリ尿を中性化することにより下部尿路における尿結石の生成リスクを低減することが示唆された。ネコの腎臓および下部尿路に対する難消化性大豆タンパク質による保護効果のメカニズムやその他の健康機能については今後さらなる検討が必要である。
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