くすりと糖尿病
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13 巻, 1 号
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原著論文
  • 増本 憲生, 豊田 紗和子, 土肥 麻貴子, 入江 慶, 奥貞 智, 池末 裕明, 橋田 亨, 松岡 直樹, 室井 延之
    2024 年 13 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    血糖コントロール改善だけでなく心血管イベントも抑制するsodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は,術後アシドーシスの発症に注意する必要がある.今回,神戸市立医療センター中央市民病院の心臓血管外科にて冠動脈バイパス術が施行された患者を対象とし,SGLT2阻害薬と術後アシドーシスの発症について調査した.対象63名のうち術後アシドーシスを発症した患者は11名であった.そのうち糖尿病薬を服用していた患者は7名で,SGLT2阻害薬を服用していた患者は2名であった.術後アシドーシスの発症にはeGFR低値が有意に関連していた(P=0.041)が,一方でヘモグロビンA1c値やSGLT2阻害薬をはじめとする糖尿病薬の投与のいずれも有意な関連を認めなかった.冠動脈バイパス術のような侵襲性の高い手術を行う場合は,糖尿病薬の有無に関わらずアシドーシスの発症に注意する必要がある.

  • 工藤 知也, 北島 直希, 山下 恵, 久保田 洋子
    2024 年 13 巻 1 号 p. 38-49
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    地域薬局における服薬指導の質は,医療行為の質を評価・向上させるための指標であるクオリティインディケーター(以下,QI)によって評価できるが,臨床現場でQIを運用するためには,統一したデータを,作業負担なく測定できる必要がある.そこで,処方箋と服薬指導支援機能の利用データから構成される電子薬剤服用歴(以下,電子薬歴)のデータベースを用いて,糖尿病服薬指導のQIの算出プロセスを検討した.その結果,低血糖の糖質摂取の指導実施割合は,スルホニル尿素薬35±32%(平均±標準偏差),ビグアナイド薬25±26%,ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬28±28%,Na+/グルコース共役輸送担体2阻害薬26±27%,アルファ–グルコシダーゼ阻害薬28±31%,チアゾリジン薬31±35%で,副作用の指導実施割合は,ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス12±19%,チアゾリジン薬による心不全18±28%であった.本研究は電子薬歴の記録を用いてQIのプロセスを評価した最初の研究であり,作業負担を増やすことなく,薬剤師による服薬指導の質を向上させる過程で電子薬歴の記録を活用できることが示唆された.

  • 堀井 剛史, 井上 岳
    2024 年 13 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,2型糖尿病患者に対して,保険薬局の薬剤師が5つのコミュニティにおいて,日本版PHOND studyの有効性について検討を行った.評価項目はHbA1cなどの糖尿病治療に関連する検査項目と,生活習慣の改善を目的とした目標の達成率とした.2型糖尿病患者64名を対象とし6か月間において追跡調査を行った.観察開始時のHbA1cが7.0%以上であった患者群は観察終了時に有意にHbA1cが低下した(7.5%±0.5% vs. 7.3%±0.5%).自己効力感は観察開始時と比較して,観察終了時で有意に上昇した(63.8±29.1ポイントvs. 78.3±15.9ポイント).保険薬局の薬剤師と栄養士が連携した,PHOND studyの手法は,2型糖尿病患者に対するケアへのアクセスとセルフマネジメントの促進に役立つ可能性が示唆された.

  • 鳥居(後藤) 綾, 深谷 清次, 網岡 克雄, 吉川 昌江
    2024 年 13 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    本研究では非糖尿病である薬局薬剤師が間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)による血糖測定を体験することによって,来局者への生活習慣を含めた指導内容に変化がみられるか,その変化を来局者がどのように受け止めたか,薬局薬剤師自身および来局者へのアンケートによって評価した.薬局薬剤師に対してisCGMを貼付し通常通りの生活を送ってもらった.その際の結果を提示し,糖尿病療養指導士が個別に食事および運動に関する介入を行った.2か月間の介入後に再度isCGMを貼付しその結果を再提示した.薬局薬剤師へは介入前後に,来局者へは薬局薬剤師介入前と結果再提示後に,それぞれアンケートを行った.その結果,薬局薬剤師が感じた糖尿病・非糖尿病患者への指導内容の変化において,多くの項目で回答ポイントが有意に向上した.来局者が受け止めた薬剤師の指導内容の変化に関しても知識の枠に位置付けた5項目について,3.3–3.6点から4.4–5.0点へと有意に回答ポイントが向上した.本調査から,薬局薬剤師がisCGMによる血糖測定を体験することで来局者への指導項目の幅を広げ,それによって来局者の生活習慣に対する意識が高まる可能性がある.

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