くすりと糖尿病
Online ISSN : 2188-5885
Print ISSN : 2187-6967
ISSN-L : 2187-6967
5 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 〜適正使用を確保するための手技指導へ応用〜
    朝倉 俊成
    2016 年 5 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル 認証あり

    海外で発売されているNovoTwistTM(Novo Nordisk A/S:NTw)は,ペン型注入器の注射針取り付けネジに垂直方向に押し込み,わずかに回転させるだけで着脱が可能な注射針である.容易に着脱できるNTwであっても確実に着脱できたかを患者が確認できる手段を確立し,手技指導時に説明しておく必要がある.そこで,本研究ではNTwが着脱時に生ずる回転トルクや音を測定し,これらが高齢者や手指・視覚に障害がある患者でも“着脱が確実に行われた”ことを確認できる信号としての有用性を検討するために,NTwをペン型注入器へ着脱した時に発生する回転トルクと音響信号を測定した.方法はフレックスペン(ノボ ノルディスクファーマ)にNTwを取り付ける際と取り外す際の回転トルクと音響信号を発生させた.その結果,取り付けた時は4.20±0.03N(mean±SD)で,取り外した時は3.33±0.06Nであった.音響信号は,取り付け時に約5〜9kHzと約12〜17kHzの2つの周波数成分が強く分布し,取り外し時の音響信号も約4〜11kHzと約18〜23kHzの2つの周波数成分が強く分布した.結論として,NTwをペン型注入器へ取り付けた時の回転トルクはやや強く,音響信号は非常に鋭い音であることから,針がきっちりと嵌ったことを感じ取れる信号である.一方,取り外し時の回転トルクと音響信号は取り付け時と比較すると強さや鋭さはないものの,外れたことが認識しやすい信号であるといえる.したがって,NTwを使用する患者に“適正な着脱法”を説明する際,「指で感じるクリック感と音を意識すること」を加えることは安全使用上有用と考える.

  • 岩瀬 由布子, 亀井 敬泰, 石田 千晴, 武田 真莉子
    2016 年 5 巻 2 号 p. 180-187
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル 認証あり

    当研究室ではこれまでに,α–リノレン酸(αLA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等のω-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)をマウス結腸に投与することにより,グルカゴン様ペプチド–1(GLP-1)およびインスリン分泌を介した糖尿病治療効果が認められることを明らかにしてきた.しかしながら,水溶液中でのn-3 PUFAの溶解度が著しく低いため,その投与量を高め治療効果をさらに増強させることは困難である.従って本研究では,脂質微粒子キャリアの一種であるリポソームを用いてn-3 PUFAを高用量含有する製剤を調製し,n-3 PUFAによる糖尿病治療効果を向上させることを試みた.αLAを高用量含有したリポソームを調製した結果,約100nmの粒子径が長期間安定に保持されることが確認された.このαLA封入リポソームを高血糖マウスの結腸部位に投与した結果,αLA含有量依存的な血糖降下作用が認められた.また,この作用がGLP-1およびインスリン分泌促進作用を介した血糖コントロールに起因していることが示唆された.このように,リポソームを利用することにより高用量のn-3 PUFA製剤の調製が可能になり,有効かつ安全な糖尿病治療戦略の構築につながることが期待される.

  • 〜従来型のBDマイクロファインプラスと新形状NovoTwistTMの比較〜
    朝倉 俊成, 清野 弘明, 金子 純, 清水 茉耶, 菅原 秀樹, 高橋 正晃
    2016 年 5 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル 認証あり

    現在,わが国で市販されている注射針の形状は,BDマイクロファインプラスTM 32G 4mm Thin Wall(日本ベクトン・ディッキンソン:BDMF)のように針基が凸状になっているが,海外では皮膚に接触する面を平面にし,さらに容易に着脱できるようにユニークな形状を呈したNovoTwistTM 32ゲージ5mm(Novo Nordisk A/S:NTw)が発売されている.そこで,BDMFとNTwの針基形状が使用者にとって視覚的にどのような印象を与えるのか,さらに着脱操作についての評価を得るために,糖尿病患者76名を対象にハンドリングによる調査を行った.その結果,BDMFはNTwより「針が長く感じ,針を見た時の恐怖感や刺した時に痛いと予想される」という負の印象が多く(p<0.001),「曲がりやすい」や「折れやすい」という危険性に関する印象も強かった(p<0.001).着脱操作の評価では,「着脱が簡単」や「急いでいる時でも確実に着脱できる」で,90%以上がNTwを選択していた.最終的に「毎日使用するとしたら使いたい針」は,約80%がNTwを選択していた.これは,NTwが有する特殊な形状がBDMFに比べて負の印象や危険性に関する印象を減少させたこと,新機構によって着脱の操作性を向上させたことを反映したものと言える.今後,多種の注入器との嵌合の互換性を確保するなどの課題はあるものの,NTwのような新形状が高齢者の多いわが国のインスリン自己注射療法において,適正な注入操作や患者のquality of life (QOL)維持に大いに貢献するものと期待できる.

feedback
Top