日本小児科学会雑誌
Online ISSN : 2760-3180
Print ISSN : 0001-6543
ISSN-L : 0001-6543
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
教育講演
  • 宮地 泰士
    2025 年129 巻11 号 p. 1311-1317
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    協調運動機能とは,運動や作業を合目的的・効率的かつ円滑に行うための,全身の運動制御や調整機能および,それらの運動パターンの学習と実行機能である.そのような協調運動機能の発達に困難が生じ,不器用を主症状とする発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,運動や作業だけでなく日常生活における様々な場面で多彩な困難を生じさせる.そして,新たな二次障害や周囲の者達との関係不調を生じさせることも少なくないため,小児科医が知っておくべき神経発達症の1つである.

    DCDの診断は,明らかな協調運動技能の遂行や習得の困難によって,生活や学業などにおける支障が持続していることを確認する必要があるが,鑑別診断にも十分注意を払う必要がある.実際の診察の際には,神経学的微(細)徴候の診察,動作模倣の観察なども行う.協調運動発達の評価尺度もあるが,開発途中のものも少なくない.

    DCDの支援としては,具体的な動作や所作の習得・向上を目的とする課題指向型アプローチによる支援や,協調運動機能そのものの向上を目指す過程指向型アプローチによる支援といった医療モデルによる支援がある.また,当事者が不器用であっても自分らしく活き活きと生活できるように,周囲の理解促進と環境調整を行う社会生活モデルによる支援や心理的サポートも大切である.

原著総説
  • 早坂 清
    2025 年129 巻11 号 p. 1318-1328
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    シトリン欠損症はSLC25A13変異による遺伝性疾患で,新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD),発育不全と脂質異常症(FTDCD),成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)を発症する.シトリンは,主に肝に発現するアスパラギン酸―グルタミン酸輸送体であり,リンゴ酸―アスパラギン酸シャトルを構成する.シトリン欠損症の肝細胞では,一次的に解糖系,二次的にクエン酸回路と脂肪合成が障害される.PPARα活性も低下し,β-酸化も障害される.肝細胞はグルコースと遊離脂肪酸を利用できず,エネルギーの欠乏に陥る.エネルギー欠乏および酸化/小胞体ストレスにより肝障害が進行し,アンモニア処理機構も障害され,不可逆的な肝障害を惹起する.中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)補充療法は,肝細胞にエネルギーを供給し,脂肪合成を促進するとともに,リンゴ酸―クエン酸シャトルを介してレドックスバランスを改善し,細胞質のアスパラギン酸の合成を促す効果的な治療法である.しかし,糖新生の改善は期待されず,低血糖,成長障害,CTLN2発症などの不可逆的な障害を予防するために,必要量の炭水化物を含む食事とMCTの迅速かつ継続的な投与が推奨される.グリセオール輸液は禁忌であるが,高濃度の糖(中心静脈栄養を含む)は,高血糖を避ければ安全に投与出来る.糖尿病の合併例では,インスリンによる血糖コントロールが不可欠である.

原著
  • 大崎 薫, 田原 昌博, 水戸川 昂樹, 森田 理沙, 浦山 耕太郎, 山田 和紀
    2025 年129 巻11 号 p. 1329-1341
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    18トリソミーの先天性心疾患への心臓手術により短期予後の改善が報告されてきた.さらに,心内修復術の報告も増えてきている.当院で心臓手術を行い5年以上経過した18トリソミーの臨床像を検討し,心内修復術の適応条件について検討した.

    2009年4月~2019年3月に高肺血流性心疾患のため心臓手術(姑息術:肺動脈絞扼術)を行った18トリソミー34例を5年以上生存(A群13例)と5年未満死亡(D群21例),D群を心臓関連死(DC群10例),非心臓関連死(DN群11例)に分類し後方視的検討を行った.

    心臓術後の生存退院94%,生存期間中央値37.5か月であった.A群とD群の在胎週数,出生体重中央値は39週と37週(p<0.05),1,954 gと1,746 g(p<0.05),0~1歳の体重増加中央値は+178.8 g/月と+121.9 g/月であった.DC群,DN群,A群+DN群の肺体血圧比中央値は術前1.00,0.74,0.81と術後0.51,0.38,0.38であった.肺生検組織ではHE分類Grade3以上が,DC群50%,DN群11%,A群+DN群10%であった.

    高肺血流性心疾患を合併する18トリソミーにおいて,姑息術後に体重増加不良や遺残肺高血圧を認める症例に対する心内修復術の適応は,より慎重に判断するべきである.

  • 下川 尚子, 室谷 健太, 五百路 徹也, 森岡 基浩
    2025 年129 巻11 号 p. 1342-1352
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    【目的】日本において小児軽症頭部外傷に対して実施されたCT検査数とその検査理由を明らかにする.

    【対象と方法】2022年4月~2023年3月の社会保険診療報酬支払基金の外来レセプトを対象として6歳未満児の頭部外傷に対して実施されたCT検査数と検査理由を調べ,それらと関連しているかについて4つの因子(患者の性別・年齢や受診した医療機関の規模・都道府県)を検討した.

    【結果】日本全国で6歳未満児の軽症頭部外傷に実施されたCT検査は年間15,066件で,その検査理由の10,000件(66.7%)は「家族等の希望」であった.「家族等の希望」で実施されたCT検査は年長児ほど多く,医療機関規模が大きくなるほど減少した.1県あたりのCT検査数が多いほど「家族等の希望」で実施される検査が増える正の相関関係がみられた.

    【考察】日本では「家族等の希望」を理由として実施されるCT検査が非常に多かった.医療被ばくを低減するためには診断アルゴリズムの活用を更に推奨しなければならない.小児軽症頭部外傷はクリニックから大病院などさまざまな医療機関で診察されていたので,診断アルゴリズム推奨の情報は多方面に発信する必要がある.

    【結論】日本では小児軽症頭部外傷に対して本来の必要性より「家族等の希望」でかなり多くのCT検査が行われる実態があり,医療放射線被ばく量軽減の観点からも適切なCT検査の実施になるように更なる対策が求められる.

症例報告
  • 横関 紗帆, 齋藤 真理, 菊池 豊, 橋本 佑介, 福田 真也, 神田 藍, 霜田 かれん, 檜波田 真実, 保科 優
    2025 年129 巻11 号 p. 1353-1357
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    デクスメデトミジンは中枢性α2アドレナリン受容体作動薬であり,小児の非挿管での検査時鎮静に対する適応が追加されたことで,麻酔・鎮静管理を専門としない小児科医の使用機会が増加すると予想される.今回,9歳男児にデクスメデトミジン鎮静下に脳波検査を施行し,デクスメデトミジン終了後に覚醒して歩行・排尿したところ,意識障害を伴う急激な心拍数減少と2度房室ブロックを伴って遷延する徐脈を認めた.これらの症状に,デクスメデトミジンの交感神経抑制作用や心伝導抑制作用が影響した可能性が考えられ,アトロピン硫酸塩水和物を静注して徐脈は改善した.デクスメデトミジンには,低濃度でも交感神経抑制作用を生ずる可能性やクリアランスが低下する状況では血中濃度の低下が遅延する可能性が考えられるため,患者が鎮静から覚醒した後も,患者の活動性を上げて十分に評価することが重要である.

  • 伏見 由季, 宮川 直将, 廣田 恵璃, 浅井 和暉, 林 亜揮子, 慶野 大, 横須賀 とも子, 浜之上 聡, 岩﨑 史記, 後藤 裕明, ...
    2025 年129 巻11 号 p. 1358-1363
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    睡眠時無呼吸は呼吸中枢の異常による中枢性,気道の物理的な閉塞による閉塞性に分類される.新生児・乳児期には中枢性が多く,幼児期以降は閉塞性が大部分を占めるようになるが,基礎疾患を有する場合には中枢性睡眠時無呼吸を起こすことが知られている.今回,中枢性睡眠時無呼吸を契機として前駆B細胞性急性リンパ性白血病(BCP-ALL)の中枢神経再発の診断に至った幼児の1例を経験した.症例はBCP-ALLに対して同種造血細胞移植を行った6歳男児で,頭痛,嘔吐,睡眠時無呼吸を主訴に当院を受診した.中枢性睡眠時無呼吸の診断基準を満たし,白血病特異的な精査を行う中で髄液検査よりBCP-ALLの中枢神経再発と診断した.1週間毎に髄腔内化学療法を行い,髄液検査所見の改善に合わせて睡眠時無呼吸も軽快した.中枢性睡眠時無呼吸はBCP-ALLの中枢神経再発が原因と考えられ,白血病患者において中枢性睡眠時無呼吸を認めた場合の鑑別として中枢神経再発を考慮すべきである.

論策
  • 國吉 保孝
    2025 年129 巻11 号 p. 1364-1371
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/03
    ジャーナル 認証あり

    【背景】小児医療政策において,死亡率低減は重要な政策目標である.しかし,現状の医療計画では死亡率の数値目標を設定しているものの,地域特性を考慮した具体的な介入戦略の提示は限定的である.本研究は,2015年から2023年までの公的統計データを用い,都道府県別の小児(0~14歳)および乳幼児(0~4歳)における死因別死亡率を分析し,地域間格差の実態を明らかにすることを目的とした.

    【方法】人口動態統計月報年計(概数)および人口推計を用い,全死因,新生物,不慮の事故,自殺による死亡率を都道府県別に算出した.各死亡率は9年間の死因別死亡数合計を同期間の各年齢階級別人口の合計で除し,95%信頼区間を算出した.

    【結果】小児の全死因による死亡率は,全国平均で人口10万対20.0人(95%信頼区間:19.8人~20.2人),都道府県間で最大1.4倍(最大値24.0人vs最小値16.9人)の格差を認めた.新生物では2.6倍(最大値2.6人vs最小値1.0人),不慮の事故では4.7倍(最大値3.3人vs最小値0.7人),自殺では3.7倍(最大値1.1人vs最小値0.3人)の地域間格差が確認された.乳幼児においても同様の傾向を認めた.

    【結論】小児・乳幼児の死亡率には地域差が存在し,新生物,不慮の事故,自殺のいずれにおいても,都道府県間で格差が認められた.

地方会
feedback
Top