目的:本研究は,大学体育における柔道授業の実施状況と授業設計について実態を明らかにすることと,授業実施上の課題について整理することを目的とした.
方法:本研究では(1)シラバス分析と(2)アンケート調査を実施した.シラバスの分析では,日本の四年制大学(n=750)を対象とした.このうち柔道を開講していた大学は91大学であった.さらにそのうち49大学が教員養成課程における指導法の専門科目であり,46大学が一般学生を対象とした教養科目であった.また,このうち4つの大学ではいずれの授業も開講していた.大学のウェブサイトに掲載されているシラバスの中から柔道に関係する部分を抽出して,授業設計法(目標,内容・方法,評価)について分析整理した.授業担当者が判明した56大学に対してWEB アンケート調査を実施した.回答のあった14大学はいずれも専門体育で,回答から授業者と受講者の特徴と授業設計法について分析した.
結果:91大学に対して実施したシラバス分析の結果,柔道授業の目標について,「運動技能の習得・向上」が81件(52.6%)で最も多かった.授業の内容・方法について,中学校学習指導要領の例示を中心に設定されていた.評価について,「平常点」による評価が71件(42.8%)で最も多く採用されていた.アンケート調査の結果,調査の対象とした14大学のすべての授業者は,柔道の有段者であり教員免許を所持している“柔道の専門家”であった.授業の目標ついて,「柔道精神の理解」が最も多く目標に採用されていた.次いで,「指導法の習得」の得点が高かった.内容・方法について,シラバス分析と同様,学習指導要領の例示を中心に設定されていた.評価について,「実技テスト」がすべての授業で採用されていた.また,「出席」による評価を採用している授業が2つあり,目標に対応した評価という点で課題があった.
まとめ:本研究の結果,大学柔道授業は,目標,内容・方法,評価の3点の一貫性および整合性が必ずしも明確になっていなかった.つまり,現在の大学体育における柔道授業では,授業の質保証について十分に達成しているといえないと指摘できる.
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