スルプロホスの安全性評価のための各種毒性試験を実
施した.
スルプロホスはラットとマウスにおける急性毒性値から劇物に指定された. 中毒解毒法としては, 硫酸アトロピンと2-PAMの反復投与が有効であった. ウサギを用いた刺激性試験では, 皮膚に対する刺激性はみられなかったが, 眼粘膜に対しては結膜にのみ軽度の刺激症状がみられた. 神経毒性に関して, 解毒剤を前処理したニワトリにLD
50量を投与して試験したが, 肉眼的にも組織学的にも遅発性神経毒性作用は認められなかった.
ラットとイヌの亜急性毒性試験では, 有機リン剤特有のChE活性の阻害が観察され, 高薬量群では体重増加の抑制と飼料摂取量の低下もみられた. ChE活性以外の血液生化学的検査, 血液学的検査, 剖検および病理組織学的検査においては, 一貫した薬量相関性の変化は認められなかった. ラット, マウス, イヌを用いた慢性毒性試験でも, 抗ChE活性が認められたが, 検体長期摂取による組織変化や催腫瘍性作用は認められなかった.
3世代にわたるラット繁殖試験の結果, 30および120ppm投与群においてF
1a新生仔の離乳時の体重減少を認めたものの, その後の世代には反映されない一時的変化であり, 薬量相関性を示す繁殖能の変化はなかった. ラットとウサギにおける催奇形性試験では, ChE活性阻害に起因する母動物の一般症状の悪化や体重の減少が認められたものの, 胎仔毒性や催奇形作用は認められなかった.
スルプロホスは, 昭和60年2月に野菜類のスリップス防除用の殺虫剤として登録を取得した. 登録保留基準値は, ピーマン5ppm, さやいんげん2ppm, きゅうり, なす, かぼちゃ, にがうり1ppm, とうがん0.5ppmと設定された.
スルプロホスは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性の高い農薬であり, 有用な農業資材の一つであると考えられる.
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