2-amino-1,3,4-thiadiazole (ATDA) はある種の植物病原細菌に対し特異的に高い抗菌性を示す興味ある薬剤である. 本薬剤の選択的抗細菌性の機構について, NADへの
14C-ニコチン酸アミドおよび
14C-ニコチン酸の取り込みによって調べた. 実験にはATDAに対し感受性の
Xanthomonos oryzae および
X. citri, 非感受性の
Erwinia carotovora および
Pseudomonas tabaci, 耐性の
X. oryzae 株を用いた. その結果, 感受性菌ではNADの基質としてニコチン酸アミドが利用されたが, ニコチン酸は利用されなかった. 非感受性菌の
E. carotovora では両基質ともNAD合成に利用されたが, 非感受性菌の
P. tabaci および耐性菌では両基質ともに利用されなかった. また,
X. oryzae の無細胞抽出液によるNAD合成系では, 感受性菌は
14C-ニコチン酸アミドから
14C-NADを生成したが, 耐性菌は
14C-NADを生成しなかった. 以上の結果とATDAがNADのニコチン酸アミド部分と交換してNADアナログ (ATDAの活性代謝物) を形成する事実から, 感受性菌ではニコチン酸アミドがNADにはいる経路を利用してATDAをNADに組み込むが, 耐性菌ではその経路のある種の酵素がニコチン酸アミドに対する親和性を失ったか, あるいは損失したために, ATDAがNADに組み込まれないものと考えられた. 非感受性菌の
P. tabaci も同様の機構によりATDAが効果を示さないものと推察された. 一方, 非感受性菌の
E. carotovora では, ニコチン酸アミドが感受性菌と異なる経路を通ってNADに取り込まれるため, ATDAのNADへの組み込み経路がなく, ATDAは効果を発揮できないものと考えられた.
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