圃場近傍水系における農薬の生態影響評価の為,暗条件下における室内水-底質系での標準試験が農薬挙動の基礎情報として活用されている.水,底質における農薬の半減期は環境濃度予測の重要なパラメータであり,代謝情報は代謝物の予期せぬ影響を見過ごさない為の一助となるが,太陽光や水生植物といった環境要素抜きでは保守的な影響評価となる恐れがある.本総説では既存試験法における農薬挙動に影響する因子について述べた上で光照射や水—底質系に導入した水生植物の影響について考察した.温度並びに水—底質比の影響については更なる検討が必要であり,光照射下では光分解や光栄養性の微生物による代謝の影響を受けることが分かった.また水生植物は農薬の吸着や代謝分解に寄与することがわかった.
チオカーバメート系除草剤の活性体であるスルホキシド体は,迅速にグルタチオン抱合を受け,さらに土壌中で分解される.そこで,我々は安定的により効果が高い除草剤の創製を目指し,容易に抱合と分解を受け得るチオカーバメート部位を4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール環に変換した5-{[(2,6-ジフルオロフェニル)メトキシ]メチル}-5-メチル誘導体を合成した.この誘導体は,湛水条件下発生前処理においてのみ除草効果を示した.ところが,5-(メトキシメチル)-5-メチル誘導体では, 畑作発生前処理においてイネ科雑草に対し除草効果を示した.本報では,畑作発生前処理での除草効果の向上を目指し,3-[(ヘテロ)アリールメタンスルホニル]-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾールを母骨格とした構造最適化を行った.その結果,我々はピロキサスルホンが,畑作発生前処理においてイネ科雑草と広葉雑草に対する優れた除草効果と作物に対する安全性を示すことを見出した.
コナガ(Plutella xylostella)由来の未分類グルタチオン転移酵素(GST)をコードするcDNAをRT-PCR法によりクローニングした.得られたクローンの全長を決定しアミノ酸配列を推定したところ,他生物由来のunclassified GSTと67%–73%の相同性を有していた.大腸菌を用いて組換えタンパク質を作製し,単一になるまで精製した.精製酵素は,2,4-ジニトロクロロベンゼンそしてエタクリン酸に対してグルタチオン抱合活性を有していた.競合阻害アッセイを行ったところ,供試農薬存在下で本酵素活性は阻害されたことから,本酵素のコナガ農薬代謝に寄与する可能性が示唆された.
畑土壌環境における残留農薬の評価に使用する農薬動態予測モデル,SPECが開発された.SPECモデルは,土壌表層5 cmの土壌水分およびアトラジンとメトラクロールの残留濃度の予測に関して検証が行われた.不確実性および感度解析によりモデル予測の堅牢性(ロバストネス)が評価された.土壌水分量の日予測は,決定係数(R2)およびナッシュ・サトクリフ効率係数(NSE)がそれぞれ0.38と0.22であり,観測点数(n=269)を考慮すると精度が高いと考えられた.アトラジンとメトラクロールの土壌中濃度の日予測は,R2とNSEがそれぞれ0.91および0.76以上となり,良好な結果となった.圃場容水量,飽和土壌水分量,Q10値は,土壌水分と除草剤の濃度の予測の変動においての主要パラメータであった.
イネの害虫であるクロスジツマグロヨコバイは脱脂後のイネ粗抽出物に対して頻繁にprobing行動を行った.この行動を指標に活性成分の単離・構造解析を試みたところ,活性の局在したODSカラム40%メタノール溶出画分から4つの化合物;isoscoparin 2″-O-glucoside, isoscoparin 2″-O-(6‴-(E)-feruloyl)glucoside, isoscoparin 2″-O-(6‴-(E)-p-coumaroyl)glucosideおよびisovitexin 2″-O-(6‴-(E)-feruloyl)glucosideを同定した.これらの化合物はそれぞれ単独でも一つ抜きの組み合わせでもは活性を示さず,4つの化合物を全て合わせた時のみ元の抽出物の活性と同等の活性を示した.
ネギアザミウマT. tabaciにおいてシペルメトリン抵抗性と生殖型を調査した.産雄性単為生殖型と産雌性単為生殖型のいくつかの系統は,シペルメトリン抵抗性に関わるナトリウムチャネルの変異(T929I)を持っていた.しかし,抵抗性レベルは系統間で異なった.チトクロームP450の活性阻害剤であるピペロニルブトキシドの共力効果は系統により異なった.これらの結果は,ネギアザミウマのシペルメトリン抵抗性には,ナトリウムチャネルの感受性の低下,チトクロームP450による解毒分解がそれぞれ,基幹的,付加的に関与していることを示唆している.
20種類の2-アリールアミノ-4(3H)-キナゾリノン構造を含むアリールスルホンアミド誘導体を合成し,それらの生物活性を評価した.中でも,4-fluoro-N-(2-(4-oxo-2-(4-(trifluoromethoxy)phenyl)amino)quinazolin-3(4H)-yl)ethyl)benzenesulfonamideが,Ralstonia solanacearumに対して100~200 mg/Lの薬量で95~100%の活性を,Gibberella zeaeに対しては50 mg/Lの薬量で69%の活性を示し,市販の殺細菌剤チオジアゾール–銅および殺菌剤ヒメキサゾールに比べて,それぞれ高い活性を示した.構造活性相関に関する予備的検討の結果,アリールアミノ基とアリールスルホンアミド部位の両方のベンゼン環上に電子求引性置換基を有することが生物活性の向上に好ましいと考えられた.
Strigolactones (SLs) are plant secondary metabolites that were first identified as germination stimulants for the root parasitic weeds witchweeds (Striga spp.) and broomrapes (Orobanche and Phelipanche spp.). In the rhizosphere, SLs also promote root colonization by arbuscular mycorrhizal fungi. In plants, SLs as a novel class of plant hormones regulate various aspects of plant growth and development. Herein I discuss structural diversity of naturally occurring SLs and their distribution in the plant kingdom.