目的 特定疾患(難病)の医療費公費負担制度を利用している受給者の実態を明らかにすることを目的として,4 回目の医療受給者全国調査を1998年に実施した。
方法 1997年度(1997年 4 月 1 日~1998年 3 月31日)に特定疾患治療研究医療事業により医療費公費負担を受けた受給者の全数を対象として,給付開始年度,受給者番号(疾患のコードを含む),性別,生年月日,居住市区町村,加入医療保険の種類などについての調査を行った。この資料を用いて,受給者の性・年齢分布,地域分布,受療状況などの基本的な特徴を疾患ごとに検討し,過去の全国調査結果と比較した。
成績 1. 1997年度の受給者数は399,719人で年々増加している。性別では,男158,766人,女240,953人,性比(男/女)0.66であり,男の割合が過去の調査と比較すると高くなっている。年齢は男女とも45歳から74歳の受給者が多く,高齢者の占める割合が高くなっている。入通院別では14.7%が入院治療を受けており,入院の割合が高くなっている。診療科別では内科が43.6%で最も多いが,専門科での受診に分散してきている。医療保険の種類別では老人保健法による受給者の増加が認められた。都道府県別では東京都が最も多く,山梨県が最も少なかった。
2. 受給者数の最も多い疾患は,これまでの全身性エリテマトーデスに替わって潰瘍性大腸炎52,261人(13.1%)であり,最も少ない疾患は原発性肺高血圧症96人であった。受給者数はスモンを除くすべての疾患で増加しており,多くの疾患で高齢者が増加していることが明らかになった。
3. 今回初めて対象となったクロイツフェルト・ヤコブ病は入院治療患者の占める割合が他の疾患に比べて特に高く,76.4%であった。
結論 1997年度医療受給者全国調査の結果から現在の受給者の特徴および受給者の持つ特徴の変化を明らかにすることができた。受給者の情報は難病患者の性・年齢分布,地域分布,受療状況などの疫学的特徴を把握する重要な情報源であるため,今後も継続的に受給者情報を解析する必要がある。
抄録全体を表示