日本公衆衛生雑誌
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50 巻 , 1 号
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論壇
原著
  • 劉 沉穎, 宗像 恒次, 藤山 博英, 薄葉 眞理子
    2003 年 50 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 中国の青少年に精神的健康の問題が多く顕在化する心理社会的要因として,一人っ子政策や核家族化に伴う情緒的支援ネットワーク認知の低下が懸念される。本研究の目的は,中国都市部における高校生,特に一人っ子の精神的健康度を把握し,それらに関連する心理社会的要因について検討した。
    方法 調査対象者は,中国黒龍江省ハルビン市内の高校 1 年生から 3 年生までの310人で,無記名自記式質問紙を用いた調査を行った。調査期間は2000年 2 月に行われた。調査内容は,属性,神経症症状と抑うつ症状としての精神的健康度,心理社会的要因としての自己価値感,特性不安,対人依存型行動特性,ストレス源,情緒的支援ネットワークをとりあげて,1)精神的健康度と心理社会的要因について,一人っ子群と非一人っ子群を比較し,2)兄弟姉妹,年齢,性別等属性の違いによる精神的健康度と心理社会的要因との関連性について検討し,3)精神的健康度に及ぼす心理社会的要因間の因果関係の推定について共分散構造分析による検討を行った。
    結果 一人っ子群は非一人っ子群に比べ神経症傾向と抑うつ傾向の出現率が多く(GHQ:一人っ子群が73%,非一人っ子群が39%,SDS:一人っ子群が63%,非一人っ子群が25%),また特性不安,対人依存型行動特性,ストレス源の認知は有意に高く,そして自己価値感や家族からの情緒的支援ネットワークの認知は有意に低かった。また属性の内,兄弟姉妹の有無が精神的健康度とその心理社会的要因に関連していることが認められた。情緒的支援ネットワークの認知の低下は,自己価値感の低下,特性不安の増大,対人依存型行動特性の増大といった不安傾向特性を促し,その結果,ストレス源がより多く認知され,精神的健康度に悪影響を及ぼす適合度の良好な因果モデルが得られた。
    結論 本研究における中国都市部の高校生の一人っ子群は非一人っ子群よりも神経症傾向および抑うつ傾向の出現率が高くなることが示唆され,特に,兄弟姉妹の存在が精神的健康に良好な影響をもたらすことが明らかになった。また,情緒的支援ネットワークの認知は,精神的健康度および心理社会的要因との関係において重要な役割を果たしていることが明らかになった。とりわけ家族からの情緒的支援ネットワークの認知は,不安傾向特性を低下させ,ストレスを軽減し,精神的健康度を良好に保つ機能を持つことが示された。
  • 大日 康史
    2003 年 50 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 リスクグループである高齢者のインフルエンザ予防接種に対する需要を分析する。そこから予防接種法改正の政策評価および補助によってどの程度需要が喚起されるかを明らかにする。
    方法 同居世帯における高齢者と,独居・老夫婦世帯における高齢者に対して別々の調査を行い,高齢者自身の属性,世帯の属性,インフルエンザ罹患経験,予防接種経験等に加えて,仮想的な状況における接種希望を尋ねた。分析は,実際の接種,仮想的な状況でのコンジョイント分析,両者を融合させた結合推定を行う。
    成績 3 つの推定方法においても頑健的であるのは,費用感応的であること,接種回数,夜間・休日での接種,法的勧奨に強く影響を受けること,過去のインフルエンザ罹患経験,予防接種経験が接種率を高めることが明らかにされた。また,結合推定が安定的であり,もっとも信頼できる。
    結論 予想接種率に人口を乗じた需要に直すと,最低は法的勧奨がなく費用も6,000円である場合の321.8万人,最高は法的勧奨があり無料である場合の893.2万人である。最低をほぼ現状であると考えると,最高の場合の接種率は'00/'01シーズンの 3 倍弱に達する。他方で,500円でも有料化すると160万人分の需要が落ち込む。また,法的勧奨だけでも200万人分の需要を喚起する事が明らかになった。
  • 鈴木 隆雄, 岩佐 一, 吉田 英世, 金 憲経, 新名 正弥, 胡 秀英, 新開 省二, 熊谷 修, 藤原 佳典, 吉田 祐子, 古名 丈 ...
    2003 年 50 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 70歳以上の地域在宅高齢者を対象として,容易に要介護状態をもたらすとされる老年症候群,特に転倒(骨折),失禁,低栄養,生活機能低下,ウツ状態,認知機能低下(痴呆)を予防し,要介護予防のための包括的健診(「お達者健診」)を実施した。本研究では,その受診者と非受診者の特性(特に健康度自己評価,生活機能,ウツ傾向,主観的幸福感,転倒経験,慢性疾患有病率および身体機能としての握力における差異)を明らかにすることを目的とした。
    方法 調査対象者は東京都板橋区内在宅の70歳以上の高齢者863人である。「お達者健診」には,このうち438人(50.8%)が受診した。健診内容は老年症候群のさまざまな項目についてハイリスク者のスクリーニングが主体となっている。本研究では前年に実施された事前調査データを基に,「お達者健診」の受診者と非受診者の性および年齢分布の他,健康度自己評価,老研式活動能力指標による生活機能,GHQ ウツ尺度,PGC モーラルスケールによる主観的幸福感,転倒の既往,慢性疾患有病率,および身体能力としての握力などについて比較した。
    成績 1) 健診受診者における性別の受診者割合は男性49.0%,女性51.0%で有意差はなかった。受診者と非受診者の平均年齢は各々75.3歳と76.4歳であり有意差が認められ,年齢分布からみても非受診者に高齢化が認められた。
     2) 健康度自己評価について受診群と非受診群に有意な差が認められ,非受診群で自己健康度の悪化している者の割合が高かった。
     3) 身体機能(握力)についてみると非受診者と受診者で有意差はなかった。
     4) 生活機能,ウツ傾向,主観的幸福感についての各々の得点で両群の比較を行ったが,いずれの項目についても非受診者では有意に生活機能の低下,ウツ傾向の増加そして主観的幸福感の低下が認められた。
     5) 過去 1 年間での転倒経験者の割合には有意差は認められなかった。
     6) 有病率の比較的高い 2 種類の慢性疾患(高血圧症および糖尿病)についてはいずれも受診者と非受診者の間に有病率の差は認められなかった。
    結論 今後進行する高齢社会において,地域で自立した生活を営む高齢者に対する要介護予防のための包括的健診はきわめて重要と考えられるが,その受診者の健康度は比較的高い。一方非受診者はより高齢であり,すでに要介護状態へのハイリスクグループである可能性が高く,いわば self-selection bias が存在すると推定された。しかし,非受診の大きな要因は実際の身体機能の老化や,老年症候群(転倒)の経験,あるいは慢性疾患の存在などではなく,むしろ健康度自己評価や主観的幸福感などの主観的なそして精神的な虚弱化の影響が大きいと推測された。受診者については今後も包括的な健診を中心とした要介護予防の対策が当然必要であるが,非受診者に対しては訪問看護などによる精神的な支援も含め要介護予防に対するよりきめ細かい対応が必要と考えられた。
資料
  • 三觜 雄, 岸 玲子, 江口 照子, 三宅 浩次, 前田 信雄
    2003 年 50 巻 1 号 p. 49-61
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 在宅高齢者の検診受診行動と基本的要因の関連性について,社会的背景の異なる三地域で男女差および地域差の有・無について検討する。
    方法 北海道内の都市部・札幌市(70歳),旧産炭過疎地域・夕張市(69歳・70歳),都市近郊農村・鷹栖町(69歳以上75歳未満)の三地域で調査・集計を行った。
     調査項目は,基本的属性〔学歴,家族類型,配偶者の状況,仕事の有・無,過去の最長職,月収,家の所有状況〕,ライフスタイル〔喫煙歴,喫煙本数,飲酒歴,身体的活動習慣,食生活への配慮〕,主観的健康状態・医療受療状況〔健康度自己評価,最近 1 年間の入院および臥床,最近 3 か月間の外来受診,かかりつけ医の有・無,慢性疾患の既往歴,現在受療中の疾患,健康に対する不安感〕,聴力,視力,失禁・身体的不自由・痴呆症状の有・無,身体的・手段的 ADL などで,自記式で回答を得た。χ2 検定と Mantel-Haenszel の検定を用い,地域で層別化し男女別に,検診の「受診群」と「非受診群」を比較した。
    結果 男性では「受診群」は「非受診群」と比較して,高学歴・喫煙者の割合が有意に低く,身体的活動習慣を有する者・食生活への配慮をしている者・健康度自己評価で健康・普通ととらえている者,聴力・視力に支障が無い者,身体的・手段的 ADL が良好な者の割合が有意に高かった。
     女性では「受診群」は「非受診群」と比較して,「最近 3 か月間に外来受診有り」の者・「健康に対する不安感を有する」者の割合が有意に高く,受診行動の関連要因に男女差を認めた。
     地域別にみた結果,札幌市の男性では「受診群」の方に「身体的に不自由な部分が無い」者の比率が高かったが,夕張市と鷹栖町では逆に「非受診群」の方が「身体的に不自由な部分が無い」者の比率が高く,地域差が認められた。札幌市の女性では「この 3 か月間に外来受診無し」と「この 3 か月間に外来受診有り」者の比率は「受診群」・「非受診群」でほぼ等しかったが,夕張市・鷹栖町では「非受診群」で「この 3 か月間に外来受診無し」者の比率が高く地域差が認められた。
    結論 高齢者に検診受診を勧奨するに際しては,基本的属性の違いだけでなくライフスタイル・主観的健康状態・医療受療状況・ADL の状況などを配慮に加えることが望まれ,さらには地域特性を考慮する必要もある。
  • 神田 秀幸, 岡村 智教, 門脇 崇, 早川 岳人, 喜多 義邦, 上島 弘嗣
    2003 年 50 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 映画やテレビドラマにおける喫煙シーンは未成年者の喫煙開始行動に影響を与えると言われている。そこで,わが国のテレビドラマの喫煙描写の放映回数,配役の設定,喫煙時の状況などの喫煙場面の実態を明らかにし,未成年者の喫煙行動に影響を与える一環境要因の資料とすることを目的とした。
    方法 2001年 7~9 月期に放映された在京民間テレビ放送主要 5 局が地上波で放映する連続テレビドラマ 7 番組とした。対象とした番組の平均視聴率は10.1~20.3%であった。各放送を 3 分間 1 ユニットに区分し,放送時間内に登場する喫煙場面(喫煙行為そのもの)と喫煙関連場面(灰皿などの描写)のユニット数を計測した。喫煙場面では,喫煙者の配役,喫煙環境,喫煙に伴う行為の有無や喫煙場面の状況について放映ユニット数の計測を行った。
    結果 1. 収録した番組全1,264ユニットの内129ユニット(全放送場面の10.2%)に喫煙場面がみられ,喫煙関連場面は258ユニット(同20.4%)にみられた。
     2. 喫煙場面では,男優(126ユニット,喫煙場面の97.7%),設定年齢20~40代(118ユニット,同91.5%),主演(72ユニット,同55.8%),1 人での喫煙場面(80ユニット,同62.0%),住宅内での喫煙(56ユニット,同43.4%)が登場した。
     3. 喫煙以外の行為を伴う喫煙場面は70ユニット(喫煙場面の54.3%),喫煙以外の行為を伴わない喫煙場面59ユニット(同45.7%)であった。
     4. 喫煙以外の行為を伴う喫煙場面では,仕事の場面(28ユニット,喫煙場面の21.7%),食事の場面(17ユニット,同13.2%)の順であった。喫煙以外の行為を伴わない喫煙場面では,開始時表題場面または終了時配役紹介場面でみられる喫煙場面(32ユニット,同24.8%),喫煙行為のみの描写(27ユニット,同20.9%)の順でみられた。喫煙を否定する喫煙関連場面は 3 ユニット(同0.2%)であった。
    結論 わが国のテレビドラマでは 3 分間を 1 ユニットとして区分した場合,全ユニット中の約30%に喫煙場面または喫煙関連場面がみられた。喫煙場面は,分煙の配慮がなく,喫煙の必然性のない場面での喫煙が多く,喫煙を否定する描写が少ないことが示された。
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