日本公衆衛生雑誌
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53 巻 , 10 号
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総説
  • 木村 安美
    2006 年 53 巻 10 号 p. 735-748
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
     大腸がんは経済的に豊かな先進国に多く,罹患率,死亡率ともに先進国におけるがんの 2 番目を占めている。日本においてもがん死亡の12%を占め,増加が著しいがんの一つである。従来から大腸発がんにおける欧米型食事との関連が重視されている一方で,大腸がん予防における魚・n-3 系多価不飽和脂肪酸の効果が注目されている。そこで本研究では,国際的に報告されている実験的研究,疫学研究を総合的にレビューすることにより,大腸がん予防の方策を研究・実践するための手がかりとすることを目的として,以下の結果の文献的考察を行った。
    1. n-3 系多価不飽和脂肪酸と大腸発がんに関する実験的研究
     1) 異常腺窩巣(ACF)
     2) 結腸直腸腫瘍
    2. 魚と大腸がんに関する疫学研究
     1) 生態学的研究
     2) 症例対照研究
     3) コホート研究
     4) 無作為割付臨床試験
     その結果,実験的研究では n-3 系多価不飽和脂肪酸は大腸がんに予防的であるという報告がほとんどであった。疫学研究では,魚が大腸がんに予防的に働くことを示唆する報告がある一方,そのような関連を認めなかった研究もあり,一致した結果は得られていない。実験的,疫学的知見を総合的に評価し,魚・n-3 系多価不飽和脂肪酸は大腸がんに予防的に働く可能性があると判断した。今後の疫学研究には,魚・n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取量を正確に把握できる食事調査法を導入することや,バイオマーカーを用いることにより,曝露把握の精度を高める必要があると考えられる。
原著
  • 野田 博之, 原田 美知子, 横田 紀美子, 梅澤 光政, 山岸 良匡, 崔 仁哲, 池田 愛, 謝 翠麗, 若林 洋子, 稲川 三枝子, ...
    2006 年 53 巻 10 号 p. 749-761
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 国保ヘルスアップモデル事業の一環として,過体重・肥満者に対する地域における健康教育の介入効果を検討する。
    方法 茨城県協和町(現筑西市)において,1998年~2003年に基本健康診査を受診した35~60歳の過体重・肥満者(BMI 25.0 kg/m2 以上)の中で,2004年 5 月の時点でも BMI 25.0 kg/m2 以上で 6 か月の介入に同意した155人(男61人女94人)(31%)を分析対象とした。対象者は本人の希望を基に,高度介入群(栄養相談,月 1 回の個別健康相談,週 3 回の運動)59人,中等度介入群(栄養相談,月 1 回の個別健康相談,週 1 回または自宅での運動)62人,対照群(従来の保健事業のみ)34人の 3 群に分けた。メタボリックシンドロームの診断基準は 8 学会合同委員会基準に準じた。
    成績 6 か月(5~10月)の介入にて追跡率は86%だった。介入前に両介入群(高度介入群,中等度介入群)と対照群の間に生活習慣および身体状況の有意な差はほとんどなかった。各介入群の運動施設利用回数は,高度介入群で平均6.4回/月,中等度介入群で平均1.9回/月であった。介入後,両介入群とも,食生活スコア,減塩スコア,脂質スコア,平均運動時間で有意な改善を認めたが,対照群では有意な改善は認めなかった。体重は対照群では平均70.6 kg から70.9 kg(P=0.84)と変化を認めなかったのに対し,高度介入群では平均71.4 kg から69.5 kg(P<0.0001),中等度介入群では平均69.5 kg から66.7 kg(P<0.0001)と減少した。ウエストは対照群で平均91.0 cm から93.9 cm(P<0.001)と増加したのに対し,高度介入群で平均90.1 cm から90.0 cm(P=0.29),中等度介入群で平均90.4 cm から88.7 cm(P=0.39)と有意な変化はなかった。メタボリックシンドロームの割合は対照群では介入前18.2%から介入後40.0%(P=0.01)と増加したが,高度介入群では15.3%から22.2%,中等度介入群では21.0%から19.2%と有意な変化はなかった。
    結論 過体重・肥満者に対する健康教育の介入効果により,体重減少およびメタボリックシンドロームの抑制が高度・中等度介入群いずれにおいても認められた。
  • 筒井 孝子, 東野 定律
    2006 年 53 巻 10 号 p. 762-776
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,保健師が連携業務を促進するための能力形成に関する方法論を検討するために,第 1 に,全国すべての市区町村保健師(以下,保健師と略す)を対象とし,彼らの連携実態を把握すること。第 2 に,連携をしている保健師と連携をしていない保健師の個人的要因や業務の特徴を明らかにすることを目的とした。
    方法 調査の実施に先立ち,全国3,190市区町村に対して所属する保健師の所属部署を把握するための事前調査を実施し,保健師人数および勤務場所等の実態を把握した。次に,事前調査で把握された全国の市区町村保健師21,631人に対する郵送法による質問紙調査を実施した。調査期間は2003年12月から2004年 8 月までであった。
     なお調査項目の内容は,「保健師の性別,年齢,職位,最終学歴,総勤務年数,現在の所属機関での勤務年数,所属部署,業務の種類,実施の状況,連携および連携している機関,専門職等の状況,連携評価尺度における項目」とした。
    結果 全国の保健師の約 8 割にあたる13,024人保健師のデータが収集された。まず保健師の連携実態としては,保健師は,保健所等の行政および保健医療機関との連携はなされているが,精神や障害者福祉施設との連携は密ではなく,また他機関の保健師や行政職,医師との連携はしていたが薬剤師や精神保健福祉士との連携は少なかった。
     また,専門機関ならびに専門職毎に分析した結果において,連携あり群は,無し群よりも連携得点は有意に高く,この得点は実態としての連携状況を反映していると考えられた。保健師は,業務経験が長い程,常勤である程,連携得点は高かった。また,学歴との有意な差は,20歳代以外はなかった。業務内容との関係においては,新規事業の展開やこのための予算獲得をしている群のほうが得点は有意に高かった。日常的な業務の実施状況からみると新たな知識を必要とする業務や高度な能力が要求される業務を行っている保健師の方がこの得点が高いことが明らかにされた。
    結論 保健師における連携は,実態として保健関連部署や専門職との連携はよく行っていたが障害者福祉および精神福祉関連の部署との連携は密ではなかった。また連携得点によって連携の実態だけでなく,事業展開といった業務の評価も可能であることから,これらの得点別の研修等が実施されることが考えられる。
資料
  • 土井 由利子, 横山 徹爾, 川南 勝彦, 石川 雅彦
    2006 年 53 巻 10 号 p. 777-786
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 特定疾患治療研究対象疾患と国際疾病分類(ICD-10, 9, 8)に基づく人口動態死因基本分類表の死因コードとの対応を検討することである。
    方法 「難病の診断と治療指針」を用い,特定疾患治療研究対象疾患(45疾患)について,定義・認定基準と死因コード・傷病名を照合・検討した。
    結果 死因コードを確認できたのは次の疾患であった:多発性硬化症,重症筋無力症,全身性エリテマトーデス,再生不良性貧血,サルコイドーシス,強皮症,特発性血小板減少性紫斑病,結節性動脈周囲炎,潰瘍性大腸炎,大動脈炎症候群,バージャー病,天疱瘡,クローン病,パーキンソン病,アミロイドーシス,ハンチントン病,ウェゲナー肉芽腫(ICD-10, 9, 8);ベーチェット病,劇症肝炎,モヤモヤ病,クロイツフェルト・ヤコブ病,原発性肺高血圧症,神経線維腫症,亜急性硬化性全脳炎,バッド・キアリ症候群(ICD-10, 9);筋萎縮性側索硬化症(ICD-10, 8);特発性拡張型心筋症,表皮水疱症,膿疱性乾癬,原発性胆汁性肝硬変,重症急性膵炎,スモン,後縦靭帯骨化症,特発性大腿骨頭壊死症,混合性結合組織病,悪性関節リウマチ,進行性核上麻痺,大脳皮質基底核変性症,線条体黒質変性症(ICD-10);脊髄小脳変性症(ICD-9)。再生不良性貧血と強皮症を除きコード間の整合性も保たれていた。
    結論 ほとんどの疾患(40疾患)で死因コードによる特定が可能であった。残りの疾患は,現状では死因コードによる特定ができず,今後の検討を要する。
  • 河原田 まり子, 村松 宰, 村井 初美
    2006 年 53 巻 10 号 p. 787-793
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 定期健康診断の問診情報であるメンタルヘルスに関する問診票の内容とその活用の実態を明らかにする。
    方法 北海道内の101か所の事業所を対象に,現在使用しているメンタルヘルス問診票の使用状況について自記式調査票による郵送調査を行った(1 次調査)。2004年10月に実施し,71件の回答を得た(回収率70.3%)。次に,健康診断問診票の質問項目の内容を検討するために,北海道内の 9 事業所に勤務する職員434人を対象に,自記式調査票による郵送調査を2004年12月に行った。調査票の内容は,1 次調査で得られた 4 か所の事業所のメンタルヘルス問診票の質問項目と日本語版 NIOSH 職業性ストレス調査票の 6 つの尺度(抑うつ,職務満足感,身体的自覚症状,量的労働負荷,認知的要求,グループ内対人葛藤)である。327人を解析対象とし,4 つの問診票のそれぞれの質問項目と NIOSH 職業性ストレス調査票の各尺度との相関係数を求め,その関連を検討した。
    結果 健康診断で問診票を使用していた事業所は,解析対象となった70か所のうち25か所(35.7%)で,そのうち21か所(84.0%)は事業所で独自に作成した問診票であった。質問項目の検討のために使用した 4 つの問診票のうち,A 問診票(23項目)は,抑うつ尺度の得点と 9 項目,身体的自覚症状と14項目,職務満足感と 1 項目で中等度の相関(r≧0.4)があった。B 問診票(9 項目)は,抑うつと 6 項目,身体的自覚症状と 4 項目で中等度の相関があった。C 問診票(1 項目)は,抑うつ,身体的自覚症状,量的労働負荷の 3 つの尺度と中等度の相関があった。D 問診票(1 項目)は,中等度の相関はなかったが,抑うつ尺度との関連が一番強かった(r=0.38)。A 問診票を除く 3 つの問診票は,職務満足感と中等度の相関のある項目はなかった。また,4 つの問診票は何れも職場のストレッサーである認知的要求,グループ内対人葛藤と中等度の相関のある項目はなかった。
    結論 現在使用されているメンタルヘルス問診票は事業所独自で作成したものが多かった。使用されている問診票はストレス反応については良く反映しているが,仕事の量的負荷や精神的負荷および対人葛藤などの職業性ストレスについては十分反映されていなかった。
  • 橋本 修二, 川戸 美由紀, 村上 義孝, 多田 有希, 重松 美加, 谷口 清州, 泉田 美知子, 永井 正規
    2006 年 53 巻 10 号 p. 794-799
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 感染症発生動向調査に基づいて,インフルエンザ・小児科・眼科定点対象疾患について,すでに提案された方法を用いて,2002~2004年の罹患数を推計するとともに,その偏りの吟味を試みた。
    方法 2002~2004年の各定点の感染症報告数および2002年の全医療施設数と各医療施設の外来患者延数を用いた。全医療施設から定点が無作為に選定という仮定の下で,罹患数の推計値と95%信頼区間を求めた。定点での感染症報告数を目的変数,外来患者延数を説明変数とする回帰式において,外来患者延数を代入して,全医療施設での仮説的な感染症報告数を設定した。定点での仮説的報告数から同じ方法で罹患数を推計し,全医療施設での合計(罹患数の真値に相当)と比較した。
    結果 罹患数推計値はインフルエンザでは2002年が736万人(95%信頼区間:696~775万人),2003年が1,156万人(同:1,107~1,205万人),2004年が895万人(同:857~933万人)であった。小児科・眼科定点の14対象疾患では2002年の百日咳の1.1万人(同:0.8~1.3万人)から2004年の感染性胃腸炎の746.9万人(同:687.8~805.9万人)の範囲であった。仮説的報告数に基づく罹患数推計値は真値の1.07~1.33倍であった。
    結論 インフルエンザ・小児科・眼科定点対象疾患の2002~2004年の罹患数推計値を示した。これはおおよそ全国の流行規模の目安を与えると考えられた。ただし,一定の仮定の下で算定されたものであって,過大評価の可能性が高いことに留意する必要がある。今後,罹患数の推計方法の検討を進めることが大切であろう。
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