日本公衆衛生雑誌
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53 巻, 8 号
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原著
  • 三浦 克之, 茗荷谷 弘子, 角谷 佳恵, 林 真紀, 本谷 雅美, 葛巻 美紀, 米田 みちる, 三井 外喜和, 西条 旨子, 森河 裕子 ...
    2006 年 53 巻 8 号 p. 533-542
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 血圧低下のための個別健康支援の効果判定のため,従来の個別健康教育プログラムを基本とする支援プログラム,これにグループダイナミクスを取り入れた支援プログラム,さらに郵便等を用いた双方向の通信による支援プログラムを開発し,3 プログラムの介入効果評価のための非無作為化比較試験を行った。
    方法 石川県小松市において検診の血圧が正常高値または軽症高血圧(収縮期血圧130-159 mmHg または拡張期血圧85-99 mmHg)であった20-69歳男女から参加者を募集した。参加者は個別面接による支援プログラム(個別面接支援群),グループによる支援プログラム(グループ支援群),双方向の通信による支援プログラム(通信支援群),および対照群から自由に選択して参加した。介入 3 群では個人の生活習慣の問題点に応じた行動科学的支援を月 1 回,6 か月間実施した。個別面接支援群134人,グループ支援群79人,通信支援群127人の 6 か月間の血圧の,対照群178人と比較しての実質的変化(および95%信頼区間)を性・年齢を調整して算出した。
    成績 対照群と比較した実質的な収縮期血圧変化(介入群と対照群の血圧変化の差)はグループ支援群で最も大きく,性・年齢調整後の実質的変化は−6.5 mmHg(95%信頼区間−10.0, −3.0)であった。通信支援群でも収縮期血圧の実質的変化は有意であり−4.3 mmHg(95%信頼区間−7.3, −1.3)であった。個別面接支援群の実質的収縮期血圧変化は−2.5 mmHg(95%信頼区間−5.5, 0.5)にとどまった。男女別にみると,グループ支援群の女性の収縮期血圧低下が最も大きかった。男性の収縮期血圧低下は介入 3 群ともほぼ同程度で 4 mmHg 前後であった。また体重は介入 3 群とも平均 1 kg 以上低下した。
    結論 非無作為化試験であるという限界があるが,個別健康教育プログラムにグループダイナミクスを加味した支援プログラムおよび双方向の通信による支援プログラムが,ともに正常高値血圧および軽症高血圧における血圧低下に有効である可能性が示唆された。男性では 3 つのプログラムで同様の効果を示したが,女性ではグループによる支援の効果が大きかった。
  • 横田 紀美子, 原田 美知子, 若林 洋子, 稲川 三枝子, 大島 美幸, 鳥海 佐和子, 廣瀬 久美子, 椎名 由美, 山岸 良匡, 崔 ...
    2006 年 53 巻 8 号 p. 543-553
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 循環器疾患の予防を目的とした地域ぐるみの減塩教育キャンペーン,とくにメディアによる健康教育を多角的,継続的に実施する方法,実績並びに評価結果を提示する。
    対象と方法 対象地域は茨城県協和町(現・筑西市,1985年国勢調査人口16,792人)である。当地域では1981年より循環器疾患の予防対策を開始し,1983年から高血圧の一次予防を目的に地域ぐるみの減塩教育キャンペーンを全町的規模で実施している。メディアを介したキャンペーンとして,減塩と栄養のバランスを強調したキャッチフレーズ入りのたれ幕や横断幕,立て看板等を作成し,町内要所約250か所に設置した。このキャッチフレーズは保健センターが配布・発送する広報誌や郵便封筒にも印刷され,常に住民の目に留まるようにした。2003年には減塩教育キャンペーンのためのキャラクターマークを作成し,垂れ幕や横断幕,立て看板の他,ポスターや健康カレンダーにも展開した。さらに減塩マークも作成した。町の行事を介してのキャンペーンとして,循環器疾患予防を統一テーマに据えた「健康まつり」を年 1 回実施した。健診時期には小学生の作成した絵や書道による健診受診勧奨ポスターを町内各所に掲示した。キャンペーンの評価として,アンケート,みそ汁の塩分濃度測定,24時間思い出し法による食塩摂取量の推移を分析した。
    結果 キャンペーンの実施に伴い1983年から1988年にかけて,町の施設で保健師による健康相談・血圧測定が受けられることを認識している人の割合は65%から84%と増加した。また塩分摂取量の目標値が10 g 以下と答えた人の割合は47%から63%と増加した。減塩を実行していると答えた人の割合も38%から58%と増加した。適塩といわれる1.1%未満のみそ汁塩分濃度の世帯は1985年から2004年にかけて47%から66%と増加した。40~69歳の循環器検診受診者を対象とした24時間思い出し法による食塩摂取量は,1982年から2004年にかけて,とくに40歳代で男性は14 g/日から11 g/日,女性は12 g/日から10 g/日へと低下した。
    結論 循環器疾患予防を目的とした地域ぐるみの減塩キャンペーンは,住民組織,学校・教育委員会,食品協会等の関係機関との連携により多角的,継続的に実施することが可能であり,減塩の推進に有効であること考えられた。
資料
  • 高橋 美保子
    2006 年 53 巻 8 号 p. 554-562
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 わが国におけるインフルエンザ流行による超過死亡を明らかにするための一法として,超過死亡の範囲を推定し,記述すること。
    方法 1987~2003年の人口動態統計から不慮の事故(ICD-9:E800-E949,ICD-10:V01-X59)を除く総死亡の月別死亡数を得て,年間死亡率と季節指数を用いたモデルを適用し,インフルエンザの流行がない場合の死亡数の期待値と95%範囲(基準範囲)を求めた。実際の死亡数(観察値)と期待値との差から超過死亡の点推定値を求め,観察値と基準範囲限界値(上限値,下限値)との差から超過死亡の範囲を求めた。なお,インフルエンザ流行月は,感染症発生動向調査の結果を考慮しつつ,「インフルエンザ死亡率0.9(人/10万人年)以上の月」とした。
    結果 超過死亡の点推定値が最も大きかったのは1999年,次いで95年,そして,93年,97年,2000年,および2003年の流行期であった。1999年の超過死亡は約 4 万 9 千人と点推定されたが,その年の超過死亡は約 3 万 7 千人~約 6 万人の範囲とも推定された。同様に,95年の超過死亡は約 3 万 8 千人と点推定されたが,約 2 万 7 千人~約 4 万 8 千人の範囲とも推定された。また,93年,97年,2000年,および2003年の超過死亡の点推定値は,それぞれ約 2 万 1 千人~約 2 万 5 千人のほぼ一定の範囲内にあったが,超過死亡の範囲(最小値,最大値)はそれぞれ,約 1 万 5 千人~約 3 万 6 千人,約 1 万 8 千人~約 3 万 1 千人,約 1 万 4 千人~約 2 万 8 千人,そして約 1 万 1 千人~約 3 万 4 千人と年によって異なることが示された。超過死亡の範囲を比較し,95年の超過死亡が観察期間中で最大であった可能性もあることが分かった。
    結論 インフルエンザの流行がない場合の死亡数のばらつきの範囲を考慮した上で,その年のインフルエンザの流行によって増加したと考えられる死亡数の範囲(最小値,最大値)を把握することができた。超過死亡の範囲の推定は,インフルエンザによる健康影響を把握する上で,有用な方法の 1 つであると考える。
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