目的 青年期女子の問題点として「痩せ志向」を取り上げ,1992年からの14年間における痩せ志向の推移を明らかにし,食生活および健康との関連を検討する事を目的とした。
対象と方法 栄養系短期大学 1 回生女子を対象として1992年~2005年の14年間,毎年10月に約100人,延べ総数1,458人(19.2±0.3歳)を対象として食生活と健康に関する62項目を調査,身体状況に関する 4 項目を測定し,各種項目の14年間の推移に増減が認められるかを対象者全員の各種測定値,およびカテゴリーで分類される項目は各年の割合を従属変数,年度(14年)を独立変数とする単回帰分析法を適用し,算出された標準回帰係数(β)の有意性を検定した。さらに食生活や健康の評価指標を算出し痩せ志向との関連を検討した。
結果 14年間で体重(β=−0.072,
P<0.01)および BMI(β=−0.082,
P<0.01)は共に有意に低下する傾向を認めた。他方,体重の希望増減量は平均3.9 kg減で14年間で増減はみられず,希望体重(β=−0.100,
P<0.001)および希望 BMI(β=−0.125,
P<0.001)は共に有意に低下する傾向を認めた。実測値から算出した痩せ(BMI<18.5)の割合(β=0.656,
P<0.02),および,希望する体重から算出する痩せの割合(β=0.801,
P<0.01)は共に14年間で有意に上昇する傾向を認めた。体型の判定は太めに判定が65.2%,正しく判定が33.6%でこれらの割合の推移は共に14年間に増減はみられなかった。「痩せたい」割合は81.2%と高くこの割合も増減なく推移した。増大する痩せの割合および増減なく推移する痩せ志向の問題点を探るため,ダイエットとの関連や疲労自覚スコア,2 つの食生活を評価するスコアを比較したところ,普通体重の維持志向群では食生活は好ましく疲労自覚症状も少ないが,痩せ体型志向がダイエットの実行につながり,ダイエットの実行が食生活に問題をもたらし,疲労自覚症状の増大につながるという関連が示唆された。
結論 14年間で痩せの割合が増大し痩せ志向が増減無く高い割合で推移していることが見いだせた。そして,それらが食生活や健康に問題をもたらしているという結果は,青年期女子を対象とする健康増進の取り組みにおいて,体型認識に対する考え方や食に関する健康教育の必要性が改めて示されたと思われる。
抄録全体を表示