目的 地域在住高齢者を対象とした虚弱予防教室による,虚弱および食習慣の改善効果を検討すること。
方法 介入効果の検討はランダム化比較試験,フォローアップ時(介入後 3 か月)までの変化の持続の検討は,介入効果のみられた項目について介入群の介入前,介入後,フォローアップ時の比較を行った。対象は埼玉県鳩山町の地域在住虚弱傾向高齢男女,介入期間は2011年10月から12月,内容は運動,栄養,社会参加の複合的プログラム(PG)とした。運動 PG は,転倒予防を目標とした筋肉運動を中心に 1 回60分×週 2 回実施,栄養 PG は低栄養予防を,社会参加 PG は閉じこもり予防を目標に,それぞれ 1 回30分×週 1 回実施した。測定は介入前後,およびフォローアップ時の 3 回実施した。虚弱および食品摂取の多様性は質問紙調査を,栄養状態には血液生化学検査を,栄養素および食品群別摂取量には簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて把握した。介入前後の効果検討は,intention-to-treat(ITT)解析とし,介入群21人,対照群22人を対象に,Mann-Whitney の U 検定,および対応のない
t 検定を行った。変化の持続に関する解析対象は,介入群のうち 3 回の調査に有効回答が得られた16人で,分散分析および多重比較を行った。
結果 1. 対象者の 7~8 割が男性。平均年齢(±標準偏差)は,介入群75.7±5.4歳,対照群74.7±5.4歳であった。2. メインアウトカムである虚弱総得点の介入前後の変化量には,有意な群間差は認められなかった。3. 介入前後の変化量に有意な群間差が認められた項目は,①虚弱総得点の下位項目である「閉じこもり」得点(中央値[25~75%tile])が,介入群 0[0~0],対照群 0[0~1] (
P=0.023),②栄養素摂取の介入前後の変化量(平均値±標準偏差)では,たんぱく質エネルギー比(%E),介入群2.3±0.7,対照群−0.3±2.0 (
P=0.002)と,動物性たんぱく質エネルギー比(%E),介入群2.4±1.5,対照群−0.5±1.5 (
P=0.002),③食品摂取の介入前後の変化量(g/1000 kcal)では,魚介類,介入群18.1±25.1,対照群−4.1±21.9 (
P=0.004)と,卵類,介入群5.0±11.2,対照群−2.1±11.3 (
P=0.046)で,それぞれ,介入群において有意に改善もしくは増加した。4. フォローアップ時まで改善および増加の持続がみられた項目は,虚弱の下位項目である「閉じこもり」およびたんぱく質摂取量(%E)だった。
結論 本プログラムは,虚弱の改善効果は認められなかったものの,虚弱傾向高齢者の「閉じこもり」を改善し,たんぱく質摂取量を増加させ,虚弱と食物摂取状況を改善に導く可能性を有することが示唆された。
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