日本公衆衛生雑誌
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63 巻, 6 号
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論壇
  • 井上 まり子, 矢野 栄二
    2016 年 63 巻 6 号 p. 303-309
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/13
    ジャーナル フリー
     Japan, known for its good healthcare access via universal health insurance, leads the world in terms of life expectancy, and possesses a public health system that has improved health standards markedly in the 20th century. However, we currently face major challenges to maintain and promote people's health. Although these complicated problems pose numerous threats to public welfare, education of public health for health professionals still retains 20th-century standards. This also means that graduate education of public health in Japan is traditionally based on obtaining licensure as a medical professional, conducting research and writing papers, and on-the-job training. Since graduate school education is expected to produce competent public health leaders, Japan requires a reform toward a new education design that caters to the current societal needs.
     The current global trend in the education of health professionals leans toward outcome-based education to meet core competencies. Here, “competency” refers to a set of features or particular behavioral patterns possessed by highly qualified persons. In 2006, the World Health Organization (WHO) established a general health professional competency standard that includes both management and leadership competencies. Moreover, the Lancet Commission concluded that there was a need for transformative education based on a “health system approach.” In brief, this means that our education should correspond to the needs of the health system to allow for the resolution of problems by educated professionals with satisfactory levels of competencies. In addition, as “change agents,” these competent professionals are expected to promote societal change toward the realization of better public health.
     In Japan, the Central Education Council has produced several reports on professional graduate school reform since 2000. These reports indicate that graduate school curricula require reform to allow the health professionals to work locally and globally, as well as to solve problems through the application of systematic knowledge that matches practice with theory.
     Therefore, with reference to the current Japanese health situation, global trends in education, and the Japanese educational policies, transformational changes are needed toward a new era of Japanese public health education specifically through outcome-based education to improve the health professionals competencies. We hope that education in the new schools of public health will contribute to solve authentic public health problems and create a healthy future with competent professionals.
資料
  • 小山 晶子, 濱本 洋子, 佐藤 鈴子
    2016 年 63 巻 6 号 p. 310-318
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/13
    ジャーナル フリー
    目的 S 市の中学生を対象に高齢者の生活に関するイメージと,高齢者を支援する社会資源への関心について実態を明らかにし,中学生の高齢者理解に関する教育内容を検討するための資料を提供することを目的とした。
    方法 S 市公立中学校の 2 年生967人を対象に,無記名の自記式質問紙による悉皆調査を行った。調査項目は,対象者の属性,高齢者の生活に関するイメージ,高齢者を支援する社会資源への関心を問うた。
    結果 回収数555部(57.4%)のうち,490部(50.7%)を分析対象とした。祖父母と同居している者は158人(32.2%),祖父母との同居経験を持つ者は232人(47.3%)であった。同居経験を持つ者の大部分は,自立した生活を送る祖父母との同居であった。祖父母と会う頻度が週 1・2 回程度以上の者は303人(61.8%)であった。対象者の祖父母の平均年齢は72.2歳であり,「お年寄り」をイメージする平均年齢は71.3歳であった。高齢者の生活に関するイメージとして,加齢に伴う身体能力の低下が生じること,家族・友人と交流し,趣味や楽しみを持って生活したいと思っていることに対象者は同意を示した。祖父母と週 1・2 回程度以上会う者は,月 1・2 回程度以下の者よりも,元気な高齢者の生活をイメージしていた。高齢者を支援する社会資源については,「防災行政無線」,「送迎車」,「訪問看護」などを知っていた。また,男子よりも女子,祖父母と会う頻度が月 1・2 回程度以下の者よりも週 1・2 回程度以上の者が有意に多くの社会資源を知っていた。
    結論 対象者は,高齢者の身体的加齢変化について一定のイメージを持っていたが,身体的加齢変化によって日常生活に困難が生じるイメージは持っていなかった。性別,祖父母との交流の頻度が,高齢者を支援する社会資源へ関心を持つ要因となる可能性が示唆された。
  • 安藤 雄一, 青山 旬, 尾崎 哲則, 三浦 宏子, 柳澤 智仁, 石濱 信之
    2016 年 63 巻 6 号 p. 319-324
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/13
    ジャーナル フリー
    目的 歯科疾患実態調査は1957年から 6 年間隔で行われ,わが国の歯科保健の状況を把握する貴重な資料として活用されてきたが,協力率が近年減少傾向にある。その原因として,本調査と同一会場で行われている国民健康・栄養調査の血液検査への協力有無が強く影響していることが現場関係者から指摘されている。そこで,歯科疾患実態調査への協力率を血液検査への協力の有無別に比較することを目的として,政府統計の利用申請を行い,利用許可を得た個票データを用いて分析を行った。
    方法 データソースは,①平成23年国民生活基礎調査(世帯票),②平成23年国民健康・栄養調査(身体状況調査票,生活習慣調査票),③平成23年歯科疾患実態調査で,共通 ID によりリンケージを行い,性・年齢に不一致が認められなかった13,311人のデータを用いた。分析として,まず国民生活基礎調査の協力者(13,311人)を分母とした国民健康・栄養調査における血液検査を含む各調査と歯科疾患実態調査の協力率を算出し,次いで国民健康・栄養調査における各調査への協力状況別に歯科疾患実態調査の協力率を比較した。
    結果 国民生活基礎調査の協力者を分母とした協力率は,国民健康・栄養調査全体では56.9%であった。国民健康・栄養調査を構成する生活習慣状況調査と身体状況調査について 1 項目でも該当するデータがあった場合を協力とみなして算出した協力率は,前者が56.8%,後者が45.4%であった。血液検査の協力率は29.9%で,歯科疾患実態調査では28.1%であった。性・年齢階級別にみた血液検査と歯科疾患実態調査の協力率は酷似していた。
     歯科疾患実態調査の協力率を身体状況調査への協力状況別に比較したところ,同調査に協力しなかった人たちと同調査に協力したものの会場に来場しなかった人たちでは協力率がほぼ 0%,来場したが血液検査に協力しなかった人たちでは17.7%,来場して血液検査に協力した人たちでは95.8%と,身体状況調査の協力状況別に著しい違いが認められた。
    結論 「歯科疾患実態調査の協力者≒血液検査の協力者」という関係が成人において認められ,歯科疾患実態調査に協力する機会が国民健康・栄養調査における血液検査の協力者にほぼ限定されていたことが明らかとなった。
公衆衛生活動報告
  • 松本 加代, 平山 千富, 佐久間 陽子, 糸井 陽一, 漁 亜沙美, 北村 淳子, 中橋 猛, 菅原 民枝, 大日 康史
    2016 年 63 巻 6 号 p. 325-331
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/13
    ジャーナル フリー
    目的 保育施設に通園する乳幼児における感染症対策のためには,感染症流行の兆しを捉える早期探知が重要であり,またその情報に基づいてまん延防止対策を講じる必要がある。墨田区は感染症流行の早期探知と早期公衆衛生対応を可能にする保育園サーベイランスを平成25年 8 月より導入し保健所がリアルタイムに保育園内での流行状況を把握することで早期探知,積極的な早期の介入が可能となった。本研究は,システム導入後,保健所の感染症の早期探知とそれに基づく早期介入の事例をまとめ検討する。
    方法 平成25年11月 1 日から平成27年 3 月31日までの期間に墨田区内の保育園サーベイランスを導入している保育施設62園を対象とした。
     保健所が何らかの理由で施設内の感染症流行を探知し,対応をした記録である観察データから保健所の探知理由と対応内容の分類を行った。探知理由の分類は,①従来通りの施設からの連絡,②保育園担当部署からの連絡,③保育園サーベイランスによる自動的な異常探知,④保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認,に分類して記録した。対応内容は,複数選択で11項目とした。
    活動内容 探知理由は,平成25年度は 5 か月間で施設からの連絡 0 件,保育園担当部署からの連絡24件,保育園サーベイランスによる自動的な異常探知14件,保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認 7 件,計45件だった。平成26年度は 1 年間で,施設からの連絡 5 件,保育園担当部署からの連絡 7 件,保育園サーベイランスによる自動的な異常探知53件,保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認25件,計90件だった。システムによる探知が平成25年度47%,平成26年度87%と増加し,現在の探知理由の大半を占め早期探知が可能になった。対応内容は,発生状況確認や保護者への周知についての内容が多かった。
    結論 保育園サーベイランスによる自動的な異常探知や同システムの手動での確認による探知ができるようになった。このシステムは,リアルタイムサーベイランスであり,感染症を保健所が把握するだけでなく,介入,まん延防止対策が迅速にとれることで,保育現場へ還元され感染症対策に活用されることができる。
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