日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 岩佐 一, 吉田 祐子, 石岡 良子, 鈴鴨 よしみ
    原稿種別: 原著
    2019 年 66 巻 10 号 p. 617-628
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/11/09
    ジャーナル フリー

    目的 高齢者において,余暇活動の充実は,主観的幸福感の維持,介護予防の推進にとり重要である。本研究は,地域高齢者における余暇活動の実態を報告したIwasaら(2018)をふまえ,「現代高齢者版余暇活動尺度」を開発し,その計量心理学的特性を検討した。余暇活動に積極的に取り組む者は,認知機能が低下しにくいとされることから,余暇活動の測定尺度を開発するにあたり,認知機能との関連について検討する必要があると考えられる。本研究では,当該尺度の,因子構造の検討,信頼性の検証,基本統計量の算出,性差・年齢差の検討,認知機能との関連の検討を行った。

    方法 都市部に在住する地域高齢者(70-84歳)594人を無作為抽出して訪問調査を行い,316人から回答を得た。このうち,「現代高齢者版余暇活動尺度」,認知機能検査に欠損のない者306人(男性151人,女性155人)を分析の対象とした。「現代高齢者版余暇活動尺度」(4件法,11項目),外部基準変数として認知機能検査(Mini-Mental State Examination(MMSE),Memory Impairment Screen(MIS),語想起検査),基本属性(年齢,性別,教育歴,有償労働,経済状態自己評価,生活習慣病,手段的自立,居住形態)を測定し分析に用いた。当該尺度の再検査信頼性を検証するため,インターネット調査を2週間間隔で2回行い,192人(70-79歳)のデータを取得した(男性101人,女性91人)。

    結果 確証的因子分析の結果,「現代高齢者版余暇活動尺度」の一因子性が確認された。当該尺度におけるクロンバックのα係数は0.81,再検査信頼性係数は0.81であった。当該尺度得点の平均値は14.44,標準偏差は7.13,中央値は15,歪度は−0.12,尖度は−0.73であった。分散分析の結果,当該尺度得点における有意な年齢差が認められたが(70-74歳群>80-84歳群),性差は認められなかった。重回帰分析を行った結果,当該尺度得点は,MMSE(β=0.31),MIS(β=0.24),語想起検査(β=0.25)といずれも有意な関連を示した。

    結論 地域高齢者を対象として,「現代高齢者版余暇活動尺度」の計量心理学的特性(因子構造,信頼性,基本統計量,性差・年齢差,認知機能との関連)が確認された。今後は縦断調査デザインを用い,余暇活動尺度と認知機能低下や認知機能障害の発症の関連について検討していく必要がある。

  • 三原 麻実子, 原田 萌香, 岡 純, 笠岡(坪山) 宜代
    原稿種別: 原著
    2019 年 66 巻 10 号 p. 629-637
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/11/09
    ジャーナル フリー

    目的 避難所生活での食事状況の改善は喫緊の課題である。避難所における栄養改善のための新たな要因を探索する目的で,弁当等の食事提供方法の有用性について解析した。

    方法 宮城県による「避難所食事状況・栄養関連ニーズ調査」の結果を2次利用解析した。2011年3月に発生した東日本大震災から約2か月後(216避難所)と約3か月後(49避難所)における弁当の提供有無とエネルギー・栄養素提供量,食品群別提供量等の関係について解析した。また,炊き出し回数との関連性についても解析した。

    結果 発災約2か月後では弁当の提供有無によってエネルギー・栄養素提供量に有意差がみられたが,発災約3か月後では有意差は認められなかった。発災約2か月後では,弁当の提供が無い避難所に比べ弁当を提供した避難所では,エネルギー,たんぱく質,魚介類,油脂類の提供量が有意に高値を示した。一方,弁当を提供した避難所ではビタミンB1,ビタミンC,いも類,野菜類の提供量が低値を示した。発災約2か月後に炊き出しが有る避難所では,いも類,肉類,野菜類の提供量が有意に高値を示した。

    結論 発災約2か月後において,避難所での弁当の提供は,エネルギー・たんぱく質や,避難所において不足するといわれている魚介類の提供量も増やす可能性がある一方,ビタミンB1やビタミンCの提供量は低くなる可能性が示唆された。これらの結果から,エネルギーやたんぱく質の提供が求められる発災後の早い段階で弁当を提供することは食事状況改善につながると考えられる。しかしながら,弁当の提供のみでは提供できる栄養素に限界があるため,炊き出し等を柔軟に組み合わせて食事提供をすることが望ましい。

  • 乾 愛, 横山 美江
    原稿種別: 原著
    2019 年 66 巻 10 号 p. 638-648
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/11/09
    ジャーナル フリー

    目的 妊娠間隔12か月未満で出産した母親の育児負担感の実態とその関連要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 A市3か所の保健福祉センターにおける3か月児健康診査に来所した母親を対象に,妊娠間隔やEPDS,育児感情尺度等を問う無記名自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた757人のうち,欠損項目を有する72人を除く685人(有効回答率90.4%)を分析対象とした。妊娠間隔は,妊娠間隔12か月未満群,妊娠間隔12か月以上24か月未満群,妊娠間隔24か月以上群,およびきょうだい児なし群に分類し,育児負担感との関連を分析した。統計学的分析方法は,χ2検定,一元配置分散分析またはKruskal-Walisの検定,および重回帰分析を実施した。

    結果 妊娠間隔12か月未満群が35人(5.1%),妊娠間隔12か月以上24か月未満群が114人(16.6%),妊娠間隔24か月以上群が194人(28.3%),きょうだい児なし群が342人(49.9%)であった。育児感情尺度の3つの下位項目に関連する要因を重回帰分析した結果,育児への束縛による負担感では,妊娠間隔(P=.032),家族構成(P=.014),睡眠時間(P=.010)および夜間起床回数(P=.001)と有意な関連が認められた。子どもの態度や行為への負担感では,妊娠間隔(P<.001),母親の年齢(P=.003),睡眠時間(P=.009)および夜間起床回数(P=.002)と有意な関連が認められた。育ちへの不安感では,妊娠間隔(P<.001),母親の年齢(P=.016)および在胎週数(P<.001)と有意な関連が認められた。加えて,妊娠間隔12か月未満群は他の妊娠間隔群に比べ,ひとり親世帯(P=.005),未婚(P=.007),最終学歴が中学卒業(P=.0027),24歳以下の若年(P<.001)が有意に多かった。

    結論 妊娠間隔は,育児感情尺度の育児への束縛による負担感,子どもの態度や行為への負担感および育ちへの不安感と有意に関連していた。さらに,育児への束縛による負担感,ならびに子どもの態度や行為への負担感は,妊娠間隔が短くなるほど母親の負担感が増大する可能性があることが示された。妊娠間隔12か月未満の母親は,ひとり親世帯,未婚者,低学歴,若年の割合が有意に高いことが明らかとなり,支援の必要性が示された。

公衆衛生活動報告
  • 田口 敦子, 森松 薫
    原稿種別: 公衆衛生活動報告
    2019 年 66 巻 10 号 p. 649-657
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/11/09
    ジャーナル フリー

    目的 人々が望む住み慣れた自宅を最期の場所に選択できるよう在宅医療を整備することは必要不可欠である。地域包括ケアシステムの構築の中でも,在宅医療の体制整備を目的とした福岡県在宅医療推進事業の評価に焦点を当て,事業開始後5年目に行った事業評価の見直しや評価指標の設定方法について報告することを目的とした。これにより,今後在宅医療や事業評価に取り組む自治体が中長期的な見通しを持つのに有益な資料になり得ることを目指した。

    方法 事業開始5年目に当たる平成26年に事業評価の見直しを行った。見直しでは,まず,事業評価の実態を把握することを目的に9か所の全保健所の事業担当者を対象に自記式質問紙調査を実施した。実施時期は平成26年7月であった。事業評価の実施状況,評価内容の妥当性について尋ねた。その結果を基に,在宅医療推進事業を経験した保健師7人と筆頭著者が中心となって事業評価の見直しを行った。とくに評価の改善プロセスがうまくいった事例である福岡県糸島保健福祉事務所では,医師,歯科医師,薬剤師,訪問看護師,市職員等で構成される在宅医療推進協議会で評価指標の目標値や測定方法を検討の上,評価を実施した。

    活動内容 事業開始5年目現在,全保健所で共通して活用されていた事業評価のための様式は,訪問看護事業所用のアンケートのみであった。活用されていない理由として,アンケートのボリュームの多さや評価の時間的確保の難しさ等が挙げられていた。これらの結果を受け,事業評価が①事業担当者やアンケートの回答者に負担がかかり過ぎずに実施できること,②在宅医療の推進状況や地域特性に応じて実施できること,③次期目標設定の方向性がより具体的に検討できることの3点に改善ポイントを置き検討を行った。改善後の事業評価方法は,地域の関係機関に保健所から目標値や測定方法を一方的に提示するのではなく,目標値や測定方法等を在宅医療推進協議会で話し合って決定した。このような方法をとることによって,関係機関が主体的に課題や目標を捉えられるようになった。

    結論 福岡県在宅医療推進事業の事業評価を事業開始5年目で見直すことにより,実効性や継続性の高い事業評価に改善することができた。在宅医療の推進は全国に共通する喫緊の課題であることから,本報告は,今後本事業に取り組む自治体が長期的な見通しを持つのに役立つと考えられる。

正誤表
feedback
Top