日本公衆衛生雑誌
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68 巻, 1 号
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原著
  • 小田 太史, 福田 治久
    原稿種別: 原著
    2021 年 68 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/30
    [早期公開] 公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    目的 リハビリテーションの主な目的は,日常生活動作を改善させることである。回復期病棟においては,患者に対して集中的なリハビリテーションを提供し,日常生活動作の改善を図ることが求められているが,検証が十分とは言い難い。本研究では,リハビリテーション提供時間に焦点を当て,病床機能報告制度の悉皆調査を用いて日常生活動作とリハビリテーション提供量の関係を検証する。

    方法 本研究は,2014年度から2017年度の病床機能報告から病棟別パネルデータを構築し,全国の回復期病棟を対象とした後方視的コホート研究である。主要評価項目に日常生活機能改善割合を,説明変数にリハビリテーション単位数を使用し,固定効果モデルを用いて回帰分析を実施した。

    結果 2014年度の病床機能報告から「機能区分」が回復期である2,003病棟を抽出し,437病棟(317病院)が分析対象となった。2014年度,2015年度および2017年度の日常生活機能改善割合の平均値は,それぞれ0.601,0.614および0.627ポイントであった。2014年度,2015年度および2017年度のリハビリテーション単位数の平均値は,それぞれ6.302,6.477および6.642単位であった。パネルデータ分析の結果,日常生活機能改善割合の増加とリハビリテーション単位数の増加に有意な関係を認めた(偏回帰係数=0.015, P=0.015)。

    結論 全国規模の調査を用いた病床レベルの検証において,リハビリテーション提供時間の増加が日常生活動作の改善に有意に関係していることが示された。

  • 佐々木 渓円, 平澤 秋子, 山崎 嘉久, 石川 みどり
    原稿種別: 原著
    2021 年 68 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/30
    [早期公開] 公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    目的 乳幼児健康診査(乳幼児健診)では,生活習慣に関する問診が行われている。乳幼児健診の受診率は極めて高いため,問診結果を活用した地域診断が可能である。本研究では,幼児期における菓子や甘味飲料(甘い間食)の習慣的な摂取と生活習慣との関連性について,問診結果を活用して分析した。

    方法 対象地域は,個々の児の健診結果を突合できる愛知県内35市町村である。解析対象者は,2013年度の1歳6か月児健診(18 m)と2014~2015年度の3歳児健診(36 m)を同一市町村で受診した18,251人(男児,9,393人(51.5%))とした。「甘い間食」の習慣化に基づいて,次の4つのカテゴリに対象者を分類した。18 mと36 mで「甘い間食」の習慣化がないN-N群,18 mのみで習慣化があるY-N群,36 mのみで習慣化があるN-Y群,18 mと36 mで「甘い間食」の習慣化があるY-Y群である。その他の生活習慣は,望ましい習慣と望ましくない習慣の2水準に区分した。「甘い間食」の摂取のカテゴリを従属変数とし,生活習慣を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。従属変数の対照カテゴリはY-Y群とし,独立変数の対照は望ましくない生活習慣とした。

    結果 対象者の構成比は,N-N群:Y-N群:N-Y群:Y-Y群=27.7:8.6:24.1:39.6であった。18 mでは48.2%の児に「甘い間食」の習慣化があり,その割合は36 mで63.7%に増加した。18 mで「甘い間食」の習慣化がある児の82.2%が,36 mでも「甘い間食」を習慣的に摂取していた。18 mで就寝時の授乳がないことが,N-N群(オッズ比[99%信頼区間]=1.25[1.11-1.41])やY-N群(1.28[1.07-1.52])と正の関連を示したが,N-Y群(0.99[0.88-1.11])との関連は認められなかった。18 mで親が仕上げ磨きをすることは,N-N群のみに正の関連を示す傾向を呈した(1.10[0.99-1.23])。

    結論 半数近くの児が18 mまでに「甘い間食」の摂取を習慣化し,その多くが36 mまでに改善できないことが示された。18 mにおける口腔衛生行動が,36 mまでの幼児の「甘い間食」の習慣的な摂取と関連していた。乳幼児健診の結果を活用した地域診断は,健康課題と関連する因子の同定に有用である。

  • 藤田 和樹, 陣内 裕成, 藤井 淳子
    原稿種別: 原著
    2021 年 68 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/30
    [早期公開] 公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    目的 本研究の目的は,地域の自立した高齢者を対象にロコモティブシンドローム(以下,ロコモと省略)と認知機能低下の関連を横断調査により検討することである。

    方法 対象者は,2014~2016年度に大阪府泉佐野市が実施した介護予防に関する質問票(基本チェックリスト)により一次予防事業の候補者と判定され,ロコモに関する質問票(ロコモ25)に回答した高齢男女3,751人(男性;1,914人,女性;1,837人,平均71.9±5.7歳)とした。ロコモのステージ(ロコモ度)はロコモ25の合計点を用いて判定した(ロコモ非該当:ロコモ25≦6点,ロコモ度1:7点≦ロコモ25≦15点,ロコモ度2:ロコモ25≧16点)。認知機能低下のレベルは基本チェックリストの認知関連の3項目を用いて評価した(該当項目なし:低下なし,1項目該当:軽度低下,2項目以上該当:中等度低下)。本研究では,ロコモと認知機能低下の関連を検討するため,認知機能低下を目的変数,ロコモ度を説明変数とする多項ロジスティック回帰分析を用いオッズ比を算出した。また,ロコモ度が他の要介護危険要因とは独立した認知機能低下の要因になるかを検討するため,年齢,BMI,基本チェックリストの低栄養,口腔機能,閉じこもりを調整した多変量調整オッズ比を推定した。

    結果 多項ロジスティック回帰分析の結果,認知機能軽度低下に対する多変量調整オッズ比と95%信頼区間は,男性では,ロコモ度1で1.63(1.22-2.18),ロコモ度2で1.78(1.15-2.75)であり,女性では,ロコモ度1で1.65(1.22-2.21),ロコモ度2で1.81(1.18-2.77)であった。同様の解析により,認知機能中等度低下に対する多変量調整オッズ比と95%信頼区間は,男性では,ロコモ度1で1.65(0.97-2.81),ロコモ度2で2.99(1.56-5.73)であり,女性では,ロコモ度1で1.97(1.11-3.50),ロコモ度2で2.43(1.14-5.19)であった。男女ともにロコモ度が高いほど認知機能低下者の割合が多くなる傾向が認められた。

    結論 地域の自立高齢者では,男女ともにロコモ度と認知機能低下の間に有意な関連が認められた。また,ロコモは認知機能低下の独立した関連因子になる可能性が示唆された。今後,縦断研究による検証が必要と考えられた。

資料
  • 安藤 雄一, 池田 奈由, 西 信雄, 田野 ルミ, 岩崎 正則, 三浦 宏子
    原稿種別: 資料
    2021 年 68 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/30
    [早期公開] 公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    目的 歯科疾患実態調査(以下,歯調)では,協力者数の減少傾向が懸念されている。2016(平成28)年調査では従来の口腔診査に質問紙調査が加わり,口腔診査への協力の有無を問わず質問紙調査に回答すれば協力者とみなされることになった。本研究は,平成28年歯調の協力状況を把握し,歯調への協力に関連する生活習慣要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 平成28年歯調と親標本である平成28年国民健康・栄養調査(以下,栄調)のレコードリンケージを行い,分析に用いた。分析対象は,歯調対象地区における20歳以上の栄調協力者7,997人とした。歯調の質問紙調査および口腔診査ならびに栄調の身体状況調査(うち血圧測定および血液検査),栄養摂取状況調査(うち歩数測定)および生活習慣調査の協力者割合を,性・年齢階級(20~59歳,60歳以上)別に算出した。協力者割合は,栄養摂取状況調査,身体状況調査および生活習慣調査のいずれかに協力した人数を分母とし,各調査および調査項目に協力した人数を分子とした。歯調への協力と生活習慣要因(喫煙習慣の有無[基準値:あり],歯の本数[28歯以上],歯科検診受診の有無[なし],睡眠による休養[とれていない])との関連について,性・年齢階級別に多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を求めた。

    結果 歯調対象地区における栄調協力者7,997人の協力者割合は,身体状況調査89%(血圧測定44%,血液検査41%),栄養摂取状況調査83%(歩数測定78%),生活習慣調査98%,歯調質問紙調査65%,口腔診査41%であった。血圧測定と血液検査の協力者の95%以上が,歯調の質問紙調査および口腔診査に協力した。歯調への協力と有意な正の相関が見られた生活習慣要因は,喫煙習慣なし(20~59歳男性の口腔診査,20~59歳女性の質問紙調査と口腔診査),歯科検診受診あり(60歳以上女性の質問紙調査),睡眠による休養がとれている(20~59歳男性の口腔診査)であった。20~59歳男性を除き,歯数20未満と口腔診査への協力との間に有意な負の相関が見られた。

    結論 栄調協力者の約3分の2が歯調の質問紙調査に協力し,口腔診査の協力者割合は血圧測定および血液検査の協力者割合とほぼ一致した。女性を中心に,歯の本数,喫煙,歯科検診受診といった口腔に関する生活習慣要因と歯調への協力との間に相関がみられた。

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