Journal of the Japan Petroleum Institute
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46 巻, 5 号
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総合論文
  • 増田 隆夫
    原稿種別: 総合論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 281-294
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    ゼオライトの拡散機構について, MFI型ゼオライトを中心に紹介した。拡散には結晶内拡散係数と有効拡散係数がある。結晶内拡散係数はゼオライト結晶内のmobilityを表し, その値に分配係数 (=拡散分子の結晶内濃度/気相濃度) を乗ずることで有効拡散係数が得られる。そのため, 主に結晶内拡散係数を取り扱った。MFI型ゼオライトの拡散は主に, (1) 形状拡散, (2) 細孔入口部の拡散抵抗, (3) 吸着阻害の拡散, (4) 共存物質の影響, に支配される。 (1) と (2) に関して, まず吸着過程と脱着過程の結晶内拡散係数を測定した。両過程の拡散係数を比較したところ, 拡散分子と細孔内および細孔入口部との立体障害によって拡散が支配されており, その寄与が吸着と脱着過程で異なることが分かった。また, 金属格子内の拡散現象を基に, 結晶内拡散係数を推算するモデル式を導出した。 (3) に関しては, 低温領域では拡散分子の酸点上での滞留が拡散を支配することが分かった。また, 酸点および金属カチオンを含むMFI型ゼオライトへの低級パラフィンやオレフィンの拡散でも, 同様に吸着阻害の拡散現象が観察された。 (4) に関しては, 二成分のうち拡散が速い成分だけが共存分子の影響を受け, 拡散係数は単成分系での値よりも著しく減少した。また, 二成分系と単成分系の結晶内拡散係数の比をRandom walk simulationで予測するとともに, 計算する実験式を提案した。さらに, 吸着等温線から求めた分配係数を結晶内拡散係数に乗ずることで有効拡散係数を求めた。その値は異なる結晶サイズのゼオライトを用いた反応実験で推算した値と良好に一致した。また, 分配係数の値より, ゼオライト中の分子の濃度は気相の100倍以上となっており, 濃縮効果を見い出した。
一般論文
  • 丸山 守人, 中田 竜司, 山口 学
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 295-300
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    原油の静電脱塩装置内の水滴挙動を対象に, 特に, 球形の液滴が電場方向と並行に運動する液滴周りの流動シミュレーションを行った。液滴内外の流れを支配する因子として, レイノルズ数, 粘性比以外に電場および重力場の効果を含む無次元パラメーターが重要であることを示した。また, 両相の電気物性値の適切な設定は静電脱塩に有効な液滴表面近傍の流れの創出を示した。
  • 劉 醇一, 秋鹿 研一
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 301-307
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    323~473 Kにおける1 atm以下のアンモニアの分離貯蔵を目的として, 7種類のイオン交換Yゼオライト (Na, H, Co, Cu, K, Rb, Cs型) のアンモニア吸着挙動の検討を行った。
    Na型Yゼオライトを遷移金属でイオン交換することによりアンモニア吸着量は増大したが, アルカリ金属でイオン交換することによって吸着量は減少した。アンモニアの不可逆吸着状態を赤外分光法·昇温脱離法によって分析し, 3種類[M(OH)+ (M: 2価陽イオン) , H+, M+ (M: アルカリ金属イオン) ]のアンモニア吸着サイトを同定し, それぞれアンミン錯体形成, アンモニウムイオン形成, 静電引力によるアンモニア吸着の寄与によるものと考察した。
    温度スイング法 (323~473 K, 40 kPa) によるアンモニア分離容量は, Cu型Yゼオライトが最高性能 (4.92 mmol·g-1) を示した。
  • 光来 要三, 石橋 真, 山本 健児, 持田 勲, 樋口 和夫
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 308-314
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    エチレンジクロリド (EDC) を塩化ビニルモノマーに熱分解する商業プロセスの熱交換器に析出する炭素質物質の析出機構, ならびに影響する因子を実験室レベルのオートクレーブを使用して220~250℃ で調べた。オートクレーブ中において商業プロセスで析出するものと同じ炭素質ナノ球粒子が集合した析出物が確認できた。試薬の純EDCおよび商業プロセスで使用される純度の低いEDCを使用して, 温度, 圧力の影響を調べた。純EDCでは時間の経過とともに析出量は増加し, 48 hで0.73 wt% になり, 析出した炭素質球粒子の直径の増大が認められた。高温では収率, 粒子径が増大した。商用EDCにはクロロオレフィンやジエンが含まれ, 純EDCよりかなり収率が高くなった。溶媒や管壁の材質の影響も調べた。250℃ で1% のベンゼンを添加すると, 球粒子の収率, 直径が減少した。ビフェニルやテトラリンを溶媒として添加しても収率が減少した。何度も使用したステンレス反応器や表面が酸化鉄 (Fe2O3) の鉄棒を添加すると炭素質物質の収率は著しく増大したが, ガラス容器中では収率は減少した。生成した塩酸が反応器内を腐食し収率を増加させたものと考えられる。炭素質析出物の形態, 収率から生成機構, 析出抑制の方法を議論した。
  • 伊藤 耕輝, 佐藤 香織, 富能 忠寛, 三宅 昌夫, 大嶋 正明, 黒川 秀樹, 杉山 和夫, 三浦 弘
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    TiO2およびAl2O3担持バイメタリックPt-Pd触媒によるナフタレン水素化反応を, ジメチルジスルフィド (DMDS) を添加した場合および添加しない場合において, 0.95~2.45 MPa, 473 Kで行った。さらに, 吸着したCOの赤外吸収スペクトルにより調製した触媒の物性評価を行った。担持Pt触媒と比較すると, 担持Pd触媒は硫黄化合物が存在する条件下で高い触媒活性を示した。硫黄化合物が存在しない場合には, Pt触媒はPd触媒よりも高活性であることから, Pd触媒はより高い耐硫黄性を有していることを示していた。
    PtとPdを共存させると, 硫黄化合物存在下での触媒活性が大幅に向上し, 明らかな複合効果を示した。しかしながら, 硫黄化合物が存在しない場合, 顕著な複合効果は発現しなかった。さらに, Pd/(Pt + Pd) モル比は, それぞれAl2O3担持触媒0.8, TiO2担持触媒で0.5であった。これらの最適値の違いは, 金属粒子径の影響に帰属された。バイメタリック触媒に吸着したCOの赤外吸収スペクトルはPt-Pdバイメタリック粒子の形成を示した。しかしながら, PtとPd間での電子的な相互作用は見られなかった。よって, PtとPdの複合効果は幾何学的効果に帰属された。
  • 冨重 圭一, 宮澤 朋久, アサドゥラ モハマド, 伊藤 伸一, 国森 公夫
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 322-327
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    バイオマスから水素や合成ガスを製造するガス化プロセスは, 従来非常に高温 (1073~1673 K) を必要としてきた。最近, Rh/CeO2/SiO2触媒が, 空気を用いた実バイオマスのガス化反応に対して, 従来と比較して極めて低温 (873~973 K) でも非常に有効であることを見い出してきた。ここでは, 実バイオマスである杉の粉末の熱分解ガス化, 水蒸気改質反応や炭酸ガス改質反応におけるRh/CeO2/SiO2の触媒性能を市販の水蒸気改質用ニッケル触媒と比較して評価した。873~1023 Kでの熱分解ガス化においては, ニッケル触媒ではタールはガス化できるものの, コークはほとんどガス化できなかった。これに対して, Rh/CeO2/SiO2を用いた場合, タールばかりでなくコークをもガス化できることがわかった。また, 水蒸気改質と炭酸ガス改質の結果を比較した結果, 低温では水蒸気改質反応が有利に進行することがわかった。
  • 小俣 光司, 渡辺 裕輔, 梅垣 哲士, 橋本 正彦, 山田 宗慶
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 328-334
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    均一系, 不均一系を問わず, 触媒の探索·最適化にコンビナトリアルアプローチが有効なことが示されており, 「組合せ」を利用することで多数の物質群を一度に合成するコンビナトリアルケミストリーと, 自動化装置・ロボットなどを利用して迅速な物性評価を行うハイスループットスクリーニング (HTS) が報告されている。本研究ではHTS用に96ウェルマイクロプレートを用いた96ラインの高圧HTS反応装置を作製し, メタノール合成用Cu-Zn系触媒の高活性化に用いた。このHTS反応装置により評価した活性を用いてニューラルネットワークを構成し, 遺伝的アルゴリズムと組み合わせて組成の最適化を進めた。これらのコンビナトリアルツールにより, CO2濃度の高い合成ガスからのメタノール合成に高い活性を示すCu-Zn系触媒を見い出した。
ノート
  • 張 〓, 米山 嘉治, 椿 範立
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 335-338
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    バイモダル細孔構造を有するシリカ触媒担体の簡単な調製法を開発した。あらかじめ細孔径が決まった大きなポアを有するシリカゲルにシリカゾルを直接導入する方法である。得られた担体はバイモダルな細孔径分布を示した。さらに元のシリカゲルと比べ, バイモダル細孔担体の比表面積が増加し, 細孔容積が減少した。これらの結果から, シリカゾルのナノ粒子からシリカゲルの大きなポアの内壁にメゾポアが形成され, バイモダル細孔構造が形成されたと考えられる。大きなポアのサイズは元のシリカゲルの細孔径とほぼ等しく, メゾポアの細孔径は, 含浸させたゾルの濃度, 担持量とは関係なく, シリカゾルの粒子径と同じであることが分かった。
  • 魏 明灯, 岡部 清美, 荒川 裕則
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 5 号 p. 339-342
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    種々の金属 (M; M = K, Al, Cr, La, Ce, およびMn) 酸化物を含むMOx-20 wt% Co-0.5 wt% Ir-SiO2触媒をアルコキシド法で調製し, これを用いてスラリー相でのFischer-Tropsch合成を試み, 金属酸化物添加がCO転化率や生成物への選択率に及ぼす影響について検討した。Kを添加した触媒では活性が低下した。AlまたはCrを添加した触媒では, CO転化率は未添加触媒とほとんど変わらなかったが, CH4選択率がやや増加した。LaまたはCeを添加した触媒では, C5+炭化水素選択率が低下した。これに対し, Mnを添加した触媒では, CO転化率やC5+炭化水素選択率が増加することが認められた。10 wt% Mnを含む触媒では57% の転化率と高いα値 (反応中間体CHxの連鎖成長確率) が得られたが, それ以上添加した触媒では, 活性劣化が著しかった。選択率と添加物特性との関係を調べたところ, 選択率と添加した金属酸化物 (MOx) の標準生成熱 (-ΔHf0) との間には直線関係が見い出された。すなわち, 標準生成熱の増大とともにCH4への選択率が単調に増加した。
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