Journal of the Japan Petroleum Institute
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46 巻, 6 号
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総合論文
  • 岡本 康昭
    原稿種別: 総合論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 343-358
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    高活性水素化脱硫 (HDS) 触媒の開発は石油工業における喫緊の課題の一つである。高活性HDS触媒の合理的開発のためには, 分子レベルでのHDS触媒の本質に関するより深いキャラクタリゼーションと理解が重要である。その目的のための我々の手法は, 実用触媒につきものの不均一性に基づく困難を克服するため, 金属カルボニルを用いてモデル触媒を構築することにある。新しい手法の一つは, ゼオライト細孔内に構造の規定された均一なMo, Co, Co-Mo硫化物クラスターの合成である。ゼオライト細孔内Mo硫化物ダイマークラスターMo2S4が生成し, その局所構造はホストゼオライトの組成に依存する。チオフェンのHDS反応に対しCo-Mo間に複合効果の発現を示す, 熱的に安定なCo2Mo2S6二元系硫化物クラスターはキュバン型構造を持つ。Co硫化物クラスターの比活性はゼオライトに依存する。Mo2S4やMoS2クラスター上でのセレノフェンの脱セレン反応は, EXAFSの結果と合わせ, HDS反応の微視的反応機構を示唆する。実用HDS触媒の本質を理解するため, Co-Mo硫化物触媒のさらに実際的なモデル化, すなわち酸化物上にCoMoS相の選択的な調製法を確立した。Al2O3, TiO2, ZrO2担持のCoMoS相間には担体の効果は見られないが, SiO2担持のCoMoS相は高い比活性を示す。モデル触媒でのCoMoS相の量から, NOを吸着するCoMoS相の割合を決定し, CoMoS相の新しい構造モデルを提案した。Co(Ni)-Mo(W) 触媒の最大潜在HDS活性についてCo(CO)3NOをプローブ分子として評価した。モデル触媒は, 触媒調製や添加物効果, 触媒構造, および微視的反応機構や構造と活性の関係のようなHDS触媒の基礎的側面について重要な情報を与える。
一般論文
  • 中嶋 淳一, 谷崎 青磁, 富岡 秀雄
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 359-367
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    スチレン製造プロセスではジニトロフェノール類が重合抑制剤として使用されているが, 毒性および自己反応性が高いという問題点を有している。取扱性改善, 環境負荷低減の観点からジニトロフェノール類に替わる重合抑制剤の開発が望まれている。重合抑制剤の開発を目的として検討を実施する中で, ドデシルベンゼンスルホン酸 (DBS) がスチレンの熱的ラジカル重合の抑制剤として作用することを見い出した。本研究では, DBSの重合抑制機構に関する知見を得るため, DBS存在下でスチレンのラジカル重合を実施し, 発生するポリマー重量の時間変化, 平均分子量の測定を行った。その結果, DBS存在下で生成するポリマーの平均分子量はDBS無添加時に生成するポリマーと比較してわずかに大きくなることが明らかとなった。また, DBS存在下ではポリマーの生成が抑制されるのに伴って1-フェニルテトラリン (1) が生成することが分かった。これらの現象から, DBSは開始ラジカルの前駆体であるDiels-Alder付加体 (4) に触媒的に作用して1への異性化を促進し, 結果として開始ラジカルの発生量を減少させ, 重合を抑制することが示唆された。DBS単独での重合抑制効果はジニトロフェノール類に比べて貧弱であるが, 両者を組み合わせることにより, 優れた相乗効果を示すことが明らかになり, 毒性の高いジニトロフェノール類の使用量を減少できることを見い出した。
  • 島田 孝司, 葭村 雄二
    原稿種別: 一般論文
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 368-374
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    イットリウムで修飾したUSYを担体として用いたパラジウム-白金触媒は, 軽油の超深度脱硫および芳香族水素化反応において非常に安定かつ高い活性を示すことを見い出した。モデル化合物を用いて活性評価を行った結果, イットリウムの添加により脱硫活性が5.3倍, 芳香族水素化活性が1.9倍となった。また生成物の分析から, イットリウムの添加により4,6-DMDBTの水素化が促進され, その後に続く脱硫反応が進みやすいこと, およびテトラリンの吸着阻害が弱まることが明らかになった。さらに, 脱硫軽油を用いた評価によって, 本触媒がP = 4.9 MPa,WHSV = 4 h-1,T = 280℃ という比較的低温の条件下でも生成油中の硫黄分を28 wtppmまで減らすことができ, 4,6-DMDBTおよび他の難脱硫性硫黄化合物を効率的に除去できることが明らかになった。これらは, イットリウムの添加によってUSY上の強酸点量が減少し, 分解活性の抑制すなわちコーキングの抑制, さらには窒素被毒の抑制によって高活性および高安定性が発揮できたためである。また, 使用済み触媒のSTEM分析によって, イットリウム添加がPd-Pt粒子の凝集を抑制する効果があることが確認された。本触媒は超深度脱硫と脱芳香族を2段反応によって行う際の2段目の触媒として非常に優れていることを確認した。
ノート
  • 佐藤 信也, 松村 明光
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 375-378
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    水中の極性有機物を効率的に回収し, 化学原料として供給する方法を開発するため, 液化ジメチルエーテル (DME) による水中のフェノールの抽出を検討した。
    水相の1.5倍容量の液化DMEによる水中のフェノール抽出では, フェノール濃度5.45 wt% の水溶液の抽出率は79%, 0.11 wt% の水溶液の抽出率は67% であった。原料の初期濃度が1.09 wt% 以上の場合は, DME相を常圧にすることにより, 1段でフェノールを単離することができた。これらの結果より, DMEリサイクル系における圧力スイング法フェノール回収プロセスの概念を考案した。
  • 矢津 一正, 古屋 武, 三木 啓司
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 379-382
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    アセトニトリル (MeCN) 中, 陰イオン交換樹脂上に固定化した12-タングストリン酸触媒 (TPA/AER) を用いたH2O2によるジベンゾチオフェンおよび4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの酸化反応について検討した。主酸化生成物は, ともに相当するスルホンであった。酸化速度はH2O2およびTPA/AERの添加量の増加に伴い増大した。TPA/AERは, 5回目の使用においても触媒活性が低下しなかったことから, 再使用可能であった。TPA/AERは, オクタン/MeCN二相系中においても, ジベンゾチオフェン類の酸化触媒として作用した。主酸化生成物は, 同様に, それらのスルホンであり, それらのほとんどはMeCN相中に分配した。TPA/AERを用いた硫黄分330 ppmの軽油の酸化脱硫においては, AER単位重量あたりのTPA固定化量の増加に伴い硫黄分の減少量が増大し, 硫黄分を50 ppm以下に削減することができた。硫黄分はMeCNでの溶媒抽出によりさらに削減可能であった。
  • 小俣 光司, 橋本 正彦, 渡辺 裕輔, 梅垣 哲士, 山田 宗慶
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 383-386
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    材料の開発に有効なコンビナトリアルアプローチが固体触媒の探索·最適化においても有効なことが示されており, 著者らは96ウェルマイクロプレートを用いる高圧ハイスループットスクリーニング反応装置による活性測定, ニューラルネットワークによる活性のマッピング, 遺伝的アルゴリズムによる探索を組み合わせた触媒開発ツールを作製し, メタノール合成用Cu系酸化物触媒の高活性化に用いている。遺伝的アルゴリズムによる探索は, 極大値が多数ある対象でも局所的な最適解にとらわれにくい, などの利点がある一方, 探索の効率が必ずしも高くない, などの欠点もある。そこで本研究ではより直截 (ちょくせつ) 的な手法を検討した。23万にのぼる組成の全ての組合せについてニューラルネットワークにより活性を評価した上で, Cu, Zn濃度などの二つのパラメーターに対してマッピングし視覚的に最高点を探索する手法について検討した。
  • 小俣 光司, 渡辺 裕輔, 橋本 正彦, 梅垣 哲士, 山田 宗慶
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 387-391
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    ニューラルネットワーク (NN) による活性のマッピングを用いてメタノール合成用Cu-Zn酸化物触媒の高活性化を試みた。従来, NNの学習用データは, ランダムに決定した触媒組成を用いて96ウェルマイクロプレートを用いる高圧ハイスループットスクリーニング (HTS) 反応装置にて測定していた。しかし, パラメーターが増えると95組のデータでも最適値周辺のデータはまばらであり, 高精度な予想には必ずしも十分ではない。本研究では実験計画法を用いて学習用データの組成を決定し, HTSによる測定結果と合わせて種々のNNを構築した。その後, 活性包絡曲面法により最高点を求め, それらの優劣を決定した。ランダムに組成を決定した場合に比べ少ない実験数で同等の最適化が可能であり, 実験計画法とNNの組合せが有効なことが示された。
  • 片田 直伸, 井伊 祐介, 中村 宗和, 丹羽 幹
    原稿種別: ノート
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 392-395
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    二酸化硫黄は水の共存下, 活性炭触媒上で硫酸へ酸化することで排気中から除去できる。一方, 著者らは比較的低温で木材を水蒸気処理することによる活性炭の製造方法を開発した。本研究では, 木材から製造した活性炭の二酸化硫黄酸化活性を市販の活性炭の活性と比較した。木材から製造した活性炭は高い活性を示した。活性は活性炭素繊維のような非常に優れた触媒のものよりは低かったが, 廃木材の環境触媒としての利用可能性が示された。
技術報告
  • M. JAMSHIDNEZHAD, M. M. MONTAZER-RAHMATI, V. A. SAJJADIAN
    原稿種別: 技術報告
    専門分野: その他
    2003 年 46 巻 6 号 p. 396-400
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/26
    ジャーナル フリー
    フラクチャー孔げき岩体内でのミシブル置換を表現する数学モデルを構築した。このモデルはフラクチャーとマトリックス間における物質交換に関して, 移流, 重力, それにクロスフローのメカニズムを考慮に入れている。モデルはプロセスを特徴づける無次元パラメーターによってノーマライズされており, 結果としての数式システムの解析解は特性曲線法を応用することで得ることができた。構築したモデルは実験値と比較され, またフラクチャーとマトリックス間のクロスフローのみを考慮した以前のモデルとも比較された。そして実験値とモデル予測値との間には良好な一致のあることが確認できた。
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