Journal of the Japan Petroleum Institute
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47 巻, 1 号
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総合論文
  • 奥原 敏夫
    2004 年 47 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    種々の固体酸およびそれらを貴金属で修飾した二元機能固体酸を触媒とするヘプタンの骨格異性化によるクリーンガソリンの合成の報告をまとめた。前半ではブタンとペンタンの異性化を例に触媒の特性を述べた。アルカンの活性化のステップや選択性支配因子について触れ,同位体法による骨格異性化の反応機構を解説した。固体酸では二分子反応が主であるが,二元機能触媒上では単分子機構で反応が進行する。後半ではヘプタン異性化経路とヘプタン異性化の特異性を指摘した後,最近のこの反応についての報告をまとめた。Pt-Cs2.5H0.5PW12O40/SiO2とPd-H4SiW12O40/SiO2はPt-H-βと選択性は類似していたが,後者のヘテロポリ触媒は活性に優れていた。
一般論文
  • 平野 正樹, 今井 哲也, 安武 聡信, 黒田 健之助
    2004 年 47 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    CO2とH2からのメタノール合成触媒CuO·ZnO·Al2O3·Ga2O3·MgOとメタノール脱水によるDME合成触媒として選定したγ-Al2O3またはZrO2·Al2O3を組み合わせた複合触媒を用いて,CO2とH2からのDME直接合成試験を実施し,組合せ条件のメタノール+DME収率およびDME選択率ならびに触媒の耐久性に与える影響を調べた。
    複合触媒におけるメタノール合成触媒とメタノール脱水触媒の組合せ条件では,混合比率は50 : 50 wt% 程度が最適であること,CO2とH2からのDME直接合成反応においては,メタノール+DME収率およびDME選択率ともに反応温度が高くなるほど上昇するが,メタノール収率が平衡に達すると温度上昇とともにメタノール+DME収率は低下することが明らかとなった。メタノール脱水触媒の種類はγ-Al2O3よりもZrO2·Al2O3の方が高いDME合成活性を示すこと,反応器での複合触媒の構成に関しては,上層部にメタノール合成触媒を充填し,下層部にメタノール合成触媒とメタノール脱水触媒を混合して充填する方法が効果的であることが明らかとなった。さらに,このような組合せ条件を持つ複合触媒は耐久性においても他の条件の触媒よりすぐれていることが検証された。
  • 笠井 尚哉, 関根 和喜, 丸山 裕章
    2004 年 47 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    石油タンク底板の保守検査に適用できる技術として漏えい磁束探傷法がある。石油タンク底板はSS400鋼板であり,湿潤環境下にさらされる時は腐食が生じる。石油タンク底板の環境下で生じる腐食生成物の代表的な成分として,酸化鉄(II, III)(Fe3O4)と酸化鉄(III)(Fe2O3)の2種類がある。酸化鉄(III)は非磁性のため,漏えい磁束探傷法のきず信号に影響を与えないが,酸化鉄(II, III)は強磁性のためきず信号に影響を与えることが考えられる。したがって,それらの割合を変化させ,溝状きずの中に充填した際の漏えい磁界を測定した。
    次に,内部に強磁性体の腐食生成物が存在するきずに対する解析モデルを考え,行った実験に対して3次元線形有限要素法を用いて解析した。この実験結果と解析結果から,強磁性体の腐食生成物が漏えい磁束探傷法のきず信号に与える影響について検討した。
  • 宮谷 理恵, 天尾 豊
    2004 年 47 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    ギ酸脱水素酵素による炭酸水素イオンのギ酸への変換反応と水溶性亜鉛ポルフィリンの光増感作用によるメチルビオローゲンの光還元反応とを組み合わせた可視光によるギ酸合成系を構築した。具体的には電子供与体であるトリエタノールアミン,亜鉛テトラキス(4-メチルピリジル)ポルフィリン,メチルビオローゲンおよびギ酸脱水素酵素からなる系である。この反応系に炭酸水素ナトリウムを添加し,200 Wタングステンランプを用い可視光を照射すると光照射時間とともに定常的にギ酸が生成した。また,ギ酸の生成とともに炭酸水素イオンの減少が観測された。ギ酸脱水素酵素の最適活性量は20 unitsであり,このとき光照射4時間後のギ酸生成量は50 μmol·dm-3であった。以上のことからギ酸脱水素酵素と亜鉛ポルフィリンを用いた可視光による炭酸水素イオンからのギ酸合成反応系の構築に成功した。
  • 張 岩, 鷹觜 利公, 佐藤 信也, 斎藤 郁夫, 田中 隆三
    2004 年 47 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    減圧残油等に含まれるアスファルテンは,石油精製過程やハンドリングにおいて会合し,それが沈殿を形成することによる閉そくなどのトラブルを引き起こすことが知られている。本研究では,その会合機構を明らかにする目的で,イラニアンライト由来減圧残油をヘプタンで溶剤分別して得られたアスファルテン(ヘプタン不溶分)とマルテン(ヘプタン可溶分)を試料として,種々の溶剤中での表面張力測定を行い,それらの会合挙動を調べた。その結果,アスファルテン(またはマルテン)試料はキノリンの表面張力を低下させる能力を有するが,1-メチルナフタレンおよびトルエン溶剤においては,表面活性を示さず,溶剤種に依存することが分かった。また,アスファルテン,マルテンともに,キノリン中では,濃度増加とともに表面張力値の変化において幾つかの不連続点が存在することを見い出した。これらの現象は,濃度増加とともにそれらの会合が段階的に進行している機構で説明された。
  • S. K. Saha, G. K. Biswas, C. R. Lahiri, D. Biswas
    2004 年 47 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    石油精製所で生産される重質残さ成分は,水素化分解を行うと中間留分を製造できるため,輸送燃料製造に有効利用可能な有用な炭化水素源である。本論文では,芳香族成分: 96.0 vol%,S: 4.63 wt%,N: 0.15 wt% を含み,流動点: +30℃ である潤滑油基油フルフラール抽出液を原料とし,高屈折率な重質油原料の触媒水素化熱分解試験を系統的に論じた。実験は反応温度,水素分圧,滞留時間,触媒量をパラメーターとして,主に原料供給量250 gに対し,ともにニッケルを担持したシリカ-アルミナと,モレキュラーシーブ13Xを20 : 80の割合で混合したハイブリッド触媒25 gを充填して行い,これらパラメーターの効果について考察した。なお,系内ではシリカ-アルミナ担体とゼオライト担体は分解活性を有し,担持金属ニッケルは水素化サイトとして働く。
    その結果,400℃,10 MPa,初期水素分圧9.0 MPa,滞留時間15分において,中間留分の収量が26.4 wt% で最大となった。
  • 倉田 正治, 相澤 直之, 平野 治夫, 高島 千尋, 永井 正敏
    2004 年 47 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    A重油を硫酸と混合して密造された不正軽油の簡易識別分析法の開発のため,A重油と硫酸で調製した油を分光蛍光光度法およびガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)で検討した。分光蛍光光度法による蛍光物質の分析の結果,A重油は硫酸処理されると蛍光極大ピークの励起波長も蛍光波長もいずれもブルーシフトして軽油と類似した蛍光極大ピークが得られた。しかしながら,3次元蛍光スペクトル,励起スペクトルおよび蛍光スペクトルの各帯形の比較により,軽油との識別が可能であった。GCMSによる油中の芳香族化合物成分を分析した結果,硫酸との混合時間が長くなるにつれて,A重油中の芳香族化合物成分は徐々に減少し飽和炭化水素成分の豊富な変性油(不正軽油)になる。この際,硫酸処理によりA重油中から除去される芳香族化合物成分のうちナフタレン,フェナントレン等の縮合多環芳香族化合物成分に比べてアルキルベンゼン,ビフェニル等の縮合多環を持たない芳香族化合物成分は除去されにくいことが判明した。そして混合処理時間3分程度(A重油と95% 硫酸を1 : 1の体積比で混合調製した場合)でA重油が軽油と類似した変性油になっても,1,2,4-トリメチルベンゼン/ペンタデカンの分子イオンピーク強度比の比較から変性油と軽油と識別可能であった。したがって,本法はA重油を硫酸処理して調製した不正軽油の簡易識別分析法として有効と考えられる。
技術報告
  • M. Jamshidnezhad, M. M. Montazer-Rahmati, V. A. Sajjadian
    2004 年 47 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    イラン国のAsmariコアにフラクチャーを人工的に造ってミシブル置換実験を行い,重力押し条件下での回収率に与える影響を検討した。実験はフラクチャーがあるコアとフラクチャーがないコアの二つに対して行い,直径0.0381 mのものを垂直に設置して行った。原油(被置換流体)として軽油を用い,置換流体としてはヘプタンを用いた。フラクチャーや置換速度,またマトリックスとフラクチャー間の物質移動などが油回収率に与える影響について検討した。実験の結果,置換速度が臨界速度以下の場合においては,置換流体のうちのかなりの部分がフラクチャーからマトリックス内に浸入し,またマトリックス内にある油のかなりの部分が,マトリックス内からフラクチャーへ浸出することを確認した。これらのことから,置換速度が臨界速度以下である場合,フラクチャーのある貯留岩に対してはミシブル攻法が非常に効果的であることがわかった。
  • M. Jamshidnezhad, M. M. Montazer-Rahmati, V. A. Sajjadian
    2004 年 47 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/25
    ジャーナル フリー
    イランにおける天然フラクチャー油層に対するミシブル攻法による油の回収量増加の可能性を実験により確認した。油層から得られた天然フラクチャーコアプラグを,油層を代表する岩質に合致するように組み合わせたコンポジットコアを使用し,油層条件下で,LPGによるミシブル置換実験を行った。
    同様の条件での水圧入の場合と比較すると,ミシブル置換ではブレークスルー時で3倍以上,最終的にも2倍以上の油が回収された。またミシブル置換においては,ブレークスルー後,さらにOOIP(原始埋蔵量)の20% の追加回収が得られ,天然フラクチャー型油層の特徴的な回収挙動が確認された。ミシブル置換による最終的な回収率は90% と,均一なコアで得られる回収率とほぼ同様な値となり,LPGを使ったミシブル攻法は油回収に最大の効果があることが確認された。
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