Journal of the Japan Petroleum Institute
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48 巻, 2 号
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総合論文
  • 藤田 進一郎, 荒井 正彦
    2005 年 48 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    近年,二酸化炭素(CO2)を有用物質に変換し炭素資源として利用することが注目されている。本稿ではCO2から環状カーボネート,炭酸ジメチル(DMC),環状ウレアおよび環状ウレタンを合成する反応について述べている。CO2とエポキシドからの環状カーボネート合成は既に工業的に行われているが,より高性能な触媒の開発が依然として続けられており,ルイス酸-ルイス塩基二元系触媒が高い活性を示すことが明らかにされている。オレフィンの酸化的カルボキシル化による環状カーボネート合成は原料が安くプロセスを簡略化できるという利点があるが,現時点ではまだ触媒の探査が必要な段階である。CO2とメタノールからのDMC直接合成の実用化は現状では困難である。効率よく水を反応系内から除去する手段とより高性能な触媒の開発が望まれる。CO2から工業的に製造されているエチレンカーボネートとメタノールのエステル交換が間接的にCO2をDMCに変換する反応として有望である。また,これとオレフィンのエポキシ化あるいは尿素とエチレングリコールの反応を組み合わせた合成プロセスも直接DMC合成の代替としての候補に挙げられる。環状ウレアおよび環状ウレタン合成を無触媒で高収率に行うことが可能であるが,基質によってはCO2の代わりに尿素を用いるべきである。
一般論文
  • 小松 隆之, 上薗 知之
    2005 年 48 巻 2 号 p. 76-83
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    メタンのCO2リフォーミングに対するNi系およびCo系金属間化合物の触媒特性について研究した。アーク溶融法により,混合時の組成に対応した単一相の金属間化合物を調製した。粉末状に粉砕した金属間化合物を触媒として,1073 KにおいてメタンのCO2リフォーミング反応を行った。NiおよびCo粉末より高い初期活性を示したのはTa,HfおよびScとの化合物であった。これらの触媒の安定性を明らかにするため,コーク生成が起こりやすい低温(923 K)で反応を行った。Ni系化合物においては,Ni7Hf2,NiHfおよびNiHf2が高いCO2転化率を維持した。しかし,これらNi-Hf系化合物上にはかなり多量のコークが蓄積していること,およびその一部はフィラメント状のコークであることが明らかとなった。また,エチレンの水素化に対する活性がNiと同程度であることから,Ni-Hf系化合物では化合物表面がNi微粒子とHf種に相分離していることが示唆された。Co系金属間化合物の中では,Co2ScとCoHf2が安定した転化率を示した。エチレン水素化活性が低いことから表面での相分離はなく,化合物相が保たれていると考えられる。コーク生成量がより少ないCoHf2は100時間の反応においても高い転化率を維持した。CoHf2はメタンのCO2リフォーミングに対し,コーク生成が少ない安定な触媒であると結論した。
  • 萩原 和彦, 海老原 猛, 浦里 延明, 藤川 貴志
    2005 年 48 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    脱硫触媒上の活性サイトを分析する新たな手法を開発するため,ゼオライト細孔構造の有力な解析法である129Xe NMR(nuclear magnetic resonance)のMo/Al2O3触媒への適用を検討した。Mo/Al2O3触媒の129Xe NMRスペクトルを測定したところ,Al2O3表面上に若干存在するミクロ孔内を運動するXeのピークが1種類観測された。このピークの化学シフトδをNMR測定時のXe吸着量N に対してプロットした結果,硫化されたMo/Al2O3触媒ではδの非直線的な変化が現れた。この結果は,Xeが表面上のMo種と電子的に強く相互作用していることを示している。さらに,Xeと触媒表面との衝突に主に依存する項δ0を,プロットの理論式へのフィッティングにより算出した。その結果,Mo量の増加に伴いδ0は大きくなった。この結果は,Xeの運動が表面上のMo種によって阻害されていることを示している。硫化温度が上昇した場合でも,同様にδ0は大きくなり,XPSによるMoの硫化の進行度とほぼ一致した。このことは,δ0が表面上でのMoS2微結晶の形成状態に敏感であることを示している。すなわち,129Xe NMRがMo/Al2O3触媒上のMoS2微結晶の形成状態を分析しうる有力な手段であることが示唆された。
  • 水嶋 生智, 西田 憲二, 大北 博宣, 角田 範義
    2005 年 48 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    調製条件の異なるNi-シリカゾルを噴霧熱分解して種々のNi/SiO2触媒を作製し,その細孔特性やNi分散状態を減圧乾燥法と比較しながら評価した。ゾル-ゲル法でNi-O-Si結合を形成しながら合成したNiドープシリカ重合体を噴霧熱分解すると,ミクロ孔のみを有する高分散触媒が生成した。Ni-O-Si結合が形成されていない純シリカ重合体とNiイオンの混合溶液を用いても,同様な物性の触媒が得られた。しかし,前者の場合,原料溶液の粘度は細孔構造にほとんど影響を及ぼさないのに対し,後者では粘度とともに細孔容積が増加した。一方,同じ原料溶液を減圧乾燥して得られた触媒にはメソ孔が生成し,溶液粘度の細孔特性への影響も噴霧熱分解法と異なっていた。また,Niは比較的大きな粒子を形成していることも確認された。細孔構造の相違は,乾燥過程における前駆体粒子の成長の有無に起因すると推察される。
  • 金 英傑, 浅岡 佐知夫, 黎 暁紅, 朝見 賢二, 藤元 薫
    2005 年 48 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    天然ガスからの燃料合成の潜在的ルートであるメタノールおよび/あるいはジメチルエーテル(DME)の液化石油ガス(LPG)への転化について,H-ZSM-5およびH-FeAlMFI-シリケート触媒上で,高転化率でLPG成分への高選択性が得られる条件,生成エチレンのリサイクル,触媒の活性低下と再生を検討した。
    LPG選択性は,触媒性能,反応温度,原料分圧および接触時間に依存した。原料分圧が高くなるほど,炭化水素生成物分布が広幅になった。エチレンは,H-ZSM-5触媒上ではメタノールおよび/ないしDMEとの組合せ反応によって,LPGに選択的に転化できた。LPGのプロセス選択性は,生成したC2成分を可能なリサイクル比で反応器に循環すれば,大幅に向上できることが明らかとなった。ただし,ワンスルーで良好なH-FeAlMFI-シリケート触媒はリサイクルモードでは能力が発揮できないことが判明した。活性の低下した両触媒とも適度の炭素燃焼処理によって,成分選択性を含めてうまく再生することができた。H-FeAlMFI-シリケート触媒は,H-ZSM-5に比べてわずかな活性低下におさまっており,またFeを骨格に導入することにより再生と反応の繰返しによる活性を抑えることができた。この触媒について観察される再生に伴う安定性の改善は強酸点の消失に起因すると推定した。
    以上,エチレンリサイクルモードでの使用を除くと,H-ZSM-5触媒よりもH-FeAlMFI-シリケート触媒がよい触媒であることが分かった。
  • 藤川 貴志, 加藤 勝博, 木村 洋, 桐山 和幸, 橋本 稔, 中嶋 伸昌
    2005 年 48 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,CoおよびMoの含浸溶液にリンとクエン酸を添加した溶液と,HY-Al2O3担体を用いてCoMo/HY-Al2O3触媒を調製し,その触媒の脱硫活性を調べた。通常の軽油脱硫条件下で活性評価を行った結果,従来の軽油深度脱硫触媒(CoMoP/Al2O3触媒: 500 ppm対応触媒相当品)と比較し,約3倍の脱硫活性を示した。また,パイロットプラントにて長期寿命試験(10 ppm一定運転)を行った結果,経時に伴う劣化は小さく,初期の高活性が安定的に維持されることが確認された。本触媒を商業装置(既存の軽油深度脱硫装置)に全量充填し,実証化試験を行った結果,通常の軽油脱硫運転の条件下でサルファーフリー軽油(10 ppm以下)を生産できることが確認された。触媒の脱硫性能を定量的に評価するために,商業装置にて反応速度論的検討を行った結果,サルファーフリー領域における反応次数は1.2次,活性化エネルギーは100 kJ/molと算出された。
  • 藤川 貴志, 加藤 勝博, 海老原 猛, 萩原 和彦, 久保田 岳志, 岡本 康昭
    2005 年 48 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/01
    ジャーナル フリー
    第1報で,リンとクエン酸を添加したCoMo/HY-Al2O3触媒は従来のCoMoP/Al2O3触媒に比較し格段に脱硫活性の高いことが確認された。本報では,この触媒の高活性の原因を究明するため,硫化後の触媒について,Mo K-edge EXAFS,透過型電子顕微鏡,NO吸着赤外分光測定を行い,活性点の特徴について調べた。その結果,触媒上でMoS2は積層化し,そのエッジ部のほぼ全体が活性点であるCo-Mo-S相で占められていると推測された。さらに,硫化過程での活性点の形成のメカニズムをX線光電子分光,ならびに赤外分光で調べた結果,高活性の原因は,Moが先に硫化された後に,クエン酸とキレート化したCoが徐々に分解され,効果的にMoS2のエッジ部に活性点(Co-Mo-S Type II)が形成されるためと推察された。
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