炭素数分布の異なる数種のフィッシャー・トロプシュ合成ワックス,および長鎖の
α-オレフィンを水素化分解・異性化することにより潤滑油基油を調製し,反応条件,基油の粘度特性,そして潤滑油基油の平均分子構造の間の関係について検討した。
調製された潤滑油基油の粘度指数は,最も高いもので159と非常に高い値を示す一方で,反応条件や用いた原料により大きく異なった。調製された基油の粘度指数は分解・異性化反応のシビアリティー,すなわち分解率と良く相関し,分解率が低いほど高い粘度指数を示した。得られた基油が主として非環状パラフィンから構成されることから,基油の「平均炭素数」と
13C-NMR分析から決定されるCH
3炭素またはCH炭素の比率より「平均分岐数」を導出した。いずれの原料油を用いた場合でも,分解率の上昇とともに基油の軽質化および分岐の生成が進行する状況が定量的に観察された。分解率が10% 以下でも2分岐/分子程度の分岐が生成しており,またそれ以上の分岐の生成速度は低いことがわかった。
また,平均炭素数,平均分岐数は,動粘度,粘度指数といった基油性状とも良い相関を示し,粘度指数は,平均炭素数が大きいほど,また平均分岐数が小さいほど高い値を示した。
「粘度指数と平均炭素数」,「粘度指数と平均分岐数」の関係は用いた原料により異なるものであったが,(平均炭素数)
2 × (平均分岐数)
-1式をパラフィンの構造パラメーターとして用いることにより,粘度指数との関係を原料油によらず統一的に扱うことができた。
同様の構造パラメーター,(平均炭素数)
a × (平均分岐数)
b 式を動粘度にも適用した結果,40℃ および100℃ の動粘度は,それぞれ(
a,
b)=(3.5,0.9),(3.0,0.5)の時に構造パラメーターと良い相関を示すことがわかった。
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