Journal of the Japan Petroleum Institute
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48 巻, 6 号
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総合論文
  • 在原 典男
    2005 年 48 巻 6 号 p. 325-335
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    本論文はストリームライン法油層シミュレーションの技術動向と,著者らが開発した同手法によるモデルについてまとめたものである。油層評価には信頼性の高い地質・油層モデルの構築が課題であるが,コンピューターの処理能力およびグラフィックス,データベース,地球統計学等の発展に伴い,異種データ(震探,地質解釈,検層,コア分析,流体分析,坑井テスト,生産挙動等)を一環・統合的に解釈し,詳細な地質モデルの構築が可能になった。油層シミュレーションは,油ガス田開発に必要な将来予測のために不可欠なだけでなく,坑井テスト,生産・圧力,4D震探等の動的データとのヒストリー・マッチングにより,地質モデルの不確定性を減少させる重要な手段である。
    ストリームライン法シミュレーションは,グリッド分割に対応した圧力式の差分解から流速を求めて,ストリームラインを追跡した後,各ストリームラインに沿って1次元の質量保存式から飽和率の変化を計算する手法である。圧力式の計算は1次元式よりも少ない頻度で済み,1次元式の解として解析解を適用できる。ストリームライン法の主要な利点として,(1)通常の差分法シミュレーションモデルよりも格段に計算速度が速い,(2)1次元式の計算にグリッド分割を用いないので,計算精度がよく,グリッド方向の影響を受けない,(3)流体挙動の可視化に有効であること等が挙げられる。
    著者らはストリームライン法モデルおよび応用システムの構築に取り組んでおり,特にグリッド数の大きい地質モデルを通常の差分法モデルに適用可能なグリッド数に変換するアップスケーリング,ヒストリー・マッチングの自動化,トレーサー流動解析,および2重孔げき型フラクチャーモデルについて記述した。
一般論文
  • 森吉 昭博, Junan Shen, 江沢 幸介, 東本 崇
    2005 年 48 巻 6 号 p. 336-343
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    この論文は低温で種々の劣化状態のアスファルトを用い,森吉ぜい化点(MBP)試験,フラースぜい化点(FBP)試験,SHRP(戦略的道路研究プログラム)が開発した試験との関係,およびこれらとアスファルト混合物の熱応力試験(TSRST)等との関係について述べている。加えて,高温長期耐久性試験(HTLTD)で劣化したアスファルトの森吉ぜい化点(MBP)と舗装のき裂との関係の現場調査も行っている。MBP,FBPおよびアスファルト混合物で実施した通常の試験の間に強い相関関係が得られた。ひずみ速度とアスファルトのぜい化点との関係も直線関係にあり,HTLTD後のMBP温度はアスファルト舗装の低温き裂現象を防ぐ一つの指標であることを明らかにした。
  • 小泉 直人, 村田 有加, 坂本 尚子, 伊藤 秀幸, 山田 宗慶
    2005 年 48 巻 6 号 p. 344-350
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    CoMo/Al2O3のオレフィン水素化活性の制御を目的として,含浸溶液にtrans-1,2-シクロヘキサンジアミン-N,N,N ',N '-四酢酸(CyDTA)を添加してCoMo/Al2O3を調製し(CyDTA-CoMo/Al2O3),CoMo/Al2O3の1-オクテン水素化活性および表面構造に及ぼすCyDTAの影響を検討した。453 K,1.3 MPaの反応条件において,広いCo/Moモル比で1-オクテン水素化活性(CoとMoの総モル数あたりのn -オクタン収率)がCyDTA-Mo/Al2O3=Mo/Al2O3 > CoMo/Al2O3 > CyDTA-CoMo/Al2O3 Co/Al2O3の序列となることを見出した。CyDTAの添加はCoMo/Al2O3の水素化活性を抑制するが,Mo/Al2O3の水素化活性に影響を及ぼさないことから,CyDTAはMo/Al2O3の水素化活性に対するCoの抑制作用を助長することが明らかとなった。CoMo/Al2O3の水素化脱硫活性に及ぼすCyDTAの効果に関する筆者らの既往の知見と併せて考えると,CyDTAはオレフィン共存下でのCoMo/Al2O3の水素化脱硫選択性を著しく向上させると期待される。さらに,一酸化窒素(NO)吸着量および吸着NOの拡散反射FTIR測定の結果から,含浸溶液にCyDTAを添加してCoMo/Al2O3を調製すると,Co/Moモル比が低い場合でも(0.32)CoがMoS2クラスターのエッジに効率良く配位するため,Coの抑制作用が助長されて,水素化脱硫選択性が著しく向上すると推定された。
  • 岩本 隆一郎, 各務 成存, 迫田 幸広, 飯野 明
    2005 年 48 巻 6 号 p. 351-357
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    ニッケル-モリブデン系脱硫触媒の脱硫性能を向上するために,水溶性有機高分子化合物の一種であるポリエチレングリコールの添加効果を検討した。XPS測定の結果から,ニッケル-モリブデン/アルミナ触媒およびニッケル-モリブデン-リン/アルミナ触媒の調製において,ポリエチレングリコールを含浸液に添加すると,活性金属であるニッケルおよびモリブデンの分散性を向上できることが分かった。また,ポリエチレングリコールを添加することで,ジベンゾチオフェンおよび重油の脱硫活性が著しく向上した。特に,活性金属が凝集しやすいと考えられる低比表面積および高リン添加量領域において効果が著しかった。沸点の高いポリエチレングリコールは,乾燥工程において水が除去された後も残存することで,活性金属の凝集を物理的にブロックし,活性点を増大していると考えられる。
  • 加納 陽輔, 秋葉 正一, 栗谷川 裕造, 河合 糺茲
    2005 年 48 巻 6 号 p. 358-364
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,持続可能な舗装循環システムの構築を目的として,アスファルト舗装発生材から骨材とバインダーを分離・回収する新たな再資源化技術を提案し,具現化に向けた基礎的検討を試みた。試験は,簡便性および経済性,環境や人体に対する安全性等を考慮して溶媒に水を用い,高温・高圧水のアスファルト混合物に対するバインダー除去性能と骨材回収能力を評価した。
    この結果,高温・高圧水のバインダー除去性能は,特に超臨界領域において顕著であり,ストレートアスファルトをはじめ改質II型アスファルトに対しても高度なバインダー除去性能と骨材回収の可能性が確認された。また,一度の反応で十分な効果が得られなかった亜臨界領域においては,反応試験を繰り返し行うことで残存バインダーの追補除去が認められ,実用化を視野とした低温・低圧レベルにおける連続式反応方式の有効性を示唆した。
    以上から,高温・高圧水のアスファルト抽出試験への応用をはじめ,アスファルト舗装発生材から貴重な天然骨材および石油資源を回収・再資源化する分離再生技術確立への基礎資料となる成果が得られた。
  • 小林 学, 斉藤 政行, 石田 勝昭, 谷地 弘志
    2005 年 48 巻 6 号 p. 365-372
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    炭素数分布の異なる数種のフィッシャー・トロプシュ合成ワックス,および長鎖のα-オレフィンを水素化分解・異性化することにより潤滑油基油を調製し,反応条件,基油の粘度特性,そして潤滑油基油の平均分子構造の間の関係について検討した。
    調製された潤滑油基油の粘度指数は,最も高いもので159と非常に高い値を示す一方で,反応条件や用いた原料により大きく異なった。調製された基油の粘度指数は分解・異性化反応のシビアリティー,すなわち分解率と良く相関し,分解率が低いほど高い粘度指数を示した。得られた基油が主として非環状パラフィンから構成されることから,基油の「平均炭素数」と13C-NMR分析から決定されるCH3炭素またはCH炭素の比率より「平均分岐数」を導出した。いずれの原料油を用いた場合でも,分解率の上昇とともに基油の軽質化および分岐の生成が進行する状況が定量的に観察された。分解率が10% 以下でも2分岐/分子程度の分岐が生成しており,またそれ以上の分岐の生成速度は低いことがわかった。
    また,平均炭素数,平均分岐数は,動粘度,粘度指数といった基油性状とも良い相関を示し,粘度指数は,平均炭素数が大きいほど,また平均分岐数が小さいほど高い値を示した。
    「粘度指数と平均炭素数」,「粘度指数と平均分岐数」の関係は用いた原料により異なるものであったが,(平均炭素数)2 × (平均分岐数)-1式をパラフィンの構造パラメーターとして用いることにより,粘度指数との関係を原料油によらず統一的に扱うことができた。
    同様の構造パラメーター,(平均炭素数)a × (平均分岐数)b 式を動粘度にも適用した結果,40℃ および100℃ の動粘度は,それぞれ(ab)=(3.5,0.9),(3.0,0.5)の時に構造パラメーターと良い相関を示すことがわかった。
ノート
  • 山口 勝之, 佐々木 厳, 西崎 到, 明嵐 政司, 森吉 昭博
    2005 年 48 巻 6 号 p. 373-379
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    ゴム材料の補強用充填材として知られるカーボンブラックを取り上げ,舗装用アスファルトへの利用の可能性について検討を行った。20 wt%(外割,pha = parts per hundred asphalt)までの範囲でカーボンブラックを添加したストレートアスファルトの性状を調べた。
    常温域から高温側において,カーボンブラックの添加はアスファルト単体の弾性率を増大させ粘性傾向を低下させた。これにより,SHRP(Strategic highway research program)規格のパフォーマンスグレードの分類上,供用可能な温度範囲が高温側に拡大することが確認された。一方,低温域ではカーボンブラックの添加は破壊時のひずみを大きくすることが判明した。さらに,カーボンブラック添加は,アスファルトの熱膨張係数を小さくし,骨材のそれに近づける効果も生み出した。アスファルト混合物では,温度の低下に伴いアスファルトと骨材の熱膨張係数の差に起因してその界面に応力が発生することが知られているが,カーボンブラックの添加はこの応力の軽減にも貢献することが期待される。
    アスファルトへのカーボンブラックの添加は,経験的に相反する性状とされている高温域における変形に対する抵抗性と低温域におけるひび割れに対する抵抗性を両立して改善できる可能性があり,アスファルト舗装の耐久性を向上する一つの有効な策と考えられる。
  • Tao Jin, Peiwen Que, Tianlu Chen, Qi Zhang
    2005 年 48 巻 6 号 p. 380-385
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/01
    ジャーナル フリー
    油,ガス輸送に利用されている海洋パイプラインにおいて,何らかの原因により生じた機械的損傷あるいは腐食はできうる限り速やかに検知する必要がある。本報告においては,磁束漏えい法に基づいたパイプラインの損傷を高速かつ精度良く検知するシステムにつき紹介している。その主要なシステムはデータ取得,フィルタリング,データ処理,データ蓄積,および伝送を制御するための適切なハードウエアとソフトウエアからなり,これらの最適な組合せを選択した上で,取得された磁束信号の前処理,リアルタイムのデータ取得,ノイズ除去とデータの圧縮を実現させる機能を有している。ここでは同システムに関わるその特徴,設計における留意点,データフィルタリング,圧縮の意味とともに実験結果につき示した。
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