Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
49 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総合論文
  • 羽田 政明, 藤谷 忠博, 浜田 秀昭
    2006 年 49 巻 5 号 p. 219-230
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    H2やCOを還元剤とするNO選択還元反応における担持貴金属触媒の活性を比較した。これまでSO2は触媒活性を低下させる触媒毒と考えられてきたが,著者らは,Rh/SiO2触媒ではH2を還元剤とした場合に,またIr/SiO2触媒ではH2とCOのいずれも還元剤とした場合に,過剰酸素の存在下,SO2の共存によりNO選択還元反応が大きく促進されることを明らかにした。Ir(111)単結晶上でのSO2の反応特性およびIr/SiO2触媒上での吸着COのFT-IR測定から,高濃度の酸素が共存する反応条件下で,共存SO2の不均化反応により生成した原子状Sがイリジウム表面の酸素と反応し,SO2として脱離することにより,反応活性なイリジウム金属の状態で安定化されることが分かった。これがSO2による活性向上効果と結論した。また,触媒に対する第2成分の添加物効果を検討した結果,Ir/SiO2にLiやBa,Rh/SiO2にZnを添加することで,触媒活性が大きく向上する反応促進効果を見出した。添加した第2成分の主な役割は,反応条件下でのイリジウムやロジウムの酸化抑制であることが分かった。
一般論文
  • 加納 陽輔, 秋葉 正一, 栗谷川 裕造
    2006 年 49 巻 5 号 p. 231-239
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    アスファルト舗装発生材の再資源化率は,2002年度で約99%と産業廃棄物の中でも極めて高く,道路舗装分野のゼロエミッションや再生利用に対する積極的な取り組みが窺える。しかしながら,今後も資源・資材の有効利用を推進してゆくうえでは,全工程における環境配慮型プロセスはもとより,需要増加が見込まれる改質系の発生材や再生材等,多種多様な発生材に対応する舗装循環再生システムの確立が必須となる。
    本研究では,舗装循環再生技術の具現化に向けた一つの提案として,高温・高圧水による発生材の分離再資源化を検討し,バインダーの劣化性状が高温・高圧水の除去性能に与える影響について評価した。また,分離再資源化の実用性に対する基礎検討として,回収骨材の性状および品質に関する評価試験を実施し,舗装用骨材としての適性と高温・高圧水の骨材回収性能を評価した。
    この結果,劣化バインダーや改質バインダーに対する高温・高圧水の優れた除去性能が認められ,環境配慮型循環再生技術としての高温・高圧水の有為性と,回収骨材の循環利用の可能性を示唆する成果が得られたのでこれを報告する。
  • 村田 聡, 幡中 伸行, 貴傳名 甲, 野村 正勝
    2006 年 49 巻 5 号 p. 240-245
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    メタンの二酸化炭素改質反応は重要な反応であるが,実用化に際して反応中の触媒活性劣化が激しいことが問題となっている。著者らは,触媒の寿命安定化を目的として研究を行った。著者らが以前の研究で使用したH-モルデナイト担持ニッケル触媒は1023~1123 K付近の反応温度で改質反応を行うと比較的高い活性を示すが,973 K以下の反応温度では炭素質析出による活性劣化が,1173 Kでは担体の破壊によると思われる活性劣化がそれぞれ観測された。これらの活性劣化を抑制するため,二種類の触媒の修飾法について検討を行った。高温での担体破壊については,H-モルデナイトのアルミナまたはチタニアによる修飾を行い,安定性の高い担体を得ることに成功した。一方,低温度域での炭素質析出については,種々の第二成分の添加効果について検討を行ったところ,ニッケルのほかにコバルトとカリウムを共担持することで,炭素質析出による活性劣化の少ない触媒を調製することができた。最後に両者を併せた触媒を調製し(Ni-Co-K/HM-Al2O3),973 Kで改質反応を行ったところ,この触媒は300時間以上使用可能であることを見出した。
  • 山崎 達也, 松木 和也
    2006 年 49 巻 5 号 p. 246-255
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    バイオマスガス化プロセス開発の一環として,ゾルゲル法およびゾルゲル法と鋳型法の併用により調製されたメソポーラスジルコニアに担持されたルテニウム触媒を用いて,バイオマスを熱分解して得られるバイオオイル中の主要成分の一つである酢酸の水蒸気改質反応を試験した。ゾルゲル法で調製された触媒は,10~20 nmのジルコニア結晶子から構成されており,その粒界が10 nm程度の細孔を形成していることが示された。それらの触媒の比表面積は,触媒学会参照触媒(JRC-ZRO-2)から調製したもの(Ru/JRC-ZrO2)よりも高くなったが,鋳型法を用いることにより表面積はさらに拡大した。酢酸/水モル比=3の溶液を用いて流通法で触媒活性を試験した。硫黄を含む鋳型剤を用いた場合を除いて,調製した触媒は673 Kで酢酸水蒸気改質反応活性を示したが,鋳型剤を用いずにゾルゲル法で調製したRu/ZrO2-W触媒が最も高い水素生成活性と安定性を示した。本研究で用いたすべての触媒系において,水素生成量/二酸化炭素生成率の比は酢酸水蒸気改質反応の化学量論である2よりも小さくなっていた。これは酢酸の直接分解反応が水蒸気改質反応に併発していることを示唆している。
  • 松本 道明, 三上 正和, 近藤 和生
    2006 年 49 巻 5 号 p. 256-261
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    石油の水素化脱硫において,有機窒素化合物は反応の阻害物質として知られており除去しなければならないが,有機窒素化合物の水素化反応は条件が厳しいため代替法が求められていた。本研究では,イオン液体を含浸させた高分子膜を用いて,脂肪族炭化水素からの有機窒素化合物の除去を検討した。具体的にはイミダゾリウム塩型および4級アンモニウム塩型のイオン液体含浸液膜を用いて有機窒素化合物(キノリン,イソキノリン,ピリジン)とヘプタンの分離を行った。これらの有機窒素化合物はヘプタンに対して選択的に膜を透過した。ピリジンの透過性および選択性に及ぼすイオン液体の種類,ピリジン濃度および温度の影響を検討した。イオン液体の種類はピリジンの透過速度にほとんど影響を及ぼさなかったが,選択性はより親水的なイオン液体を用いることで増加した。ピリジン濃度および温度の減少は選択性の増加をもたらした。以上の点から,イオン液体含浸膜は有機窒素化合物の分離手段として有効であることが分かった。
  • 高橋 純平, 森 聰明
    2006 年 49 巻 5 号 p. 262-267
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    バイオマスからの水素製造システムを確立するために,Ni系水蒸気改質触媒を用いた流動床反応装置によりりんご搾りかすの高温水蒸気改質を行った。Ni系触媒はりんご搾りかすと水との反応を促進して水素を生成した。反応物と生成ガスの物質収支および原料の熱分析結果より,高温水蒸気改質反応において,Ni触媒ではりんご搾りかすの分解が先行し,その後分解生成した析出炭素が水と反応すると考えられた。析出炭素と水蒸気との反応を促進すると考えられるカリウムやカルシウム化合物をNi触媒に添加すると,りんご搾りかすの水蒸気改質におけるガス化率は顕著に向上するが,このような事実は上の考えと合致する。バイオマス水蒸気改質による高性能水素製造システムの開発にとって,析出炭素と水蒸気との反応を促進することが有効な方策になり得る。
  • 南 一郎, 村上 浩之, 七尾 英孝, 森 誠之
    2006 年 49 巻 5 号 p. 268-273
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    低粘度基油による省エネルギーを実現するために添加剤による摩耗防止を考慮する必要がある。本研究では低粘度基油に適する含リン添加剤の耐摩耗性を境界潤滑条件下で評価した。鉱油ではジアルキルホスホン酸エステルがよい耐摩耗性を示すが,トリアルキルおよびトリアリールエステルの耐摩耗性は劣っている。添加剤の適合性は鉱油の精製プロセスにも依存する。溶剤精製油に対する添加剤効果は予測できないことがある。同じ摩擦条件では水素化精製油に対してよい添加剤効果が観察される。摩擦試験結果と,表面分析で得た摩擦面上のリン含有量にはよい相関が見られ,鉱油に対してリン濃度0.062重量%(620 ppm)以上の添加剤が必要である。合成エステル油は鉱油よりもよい潤滑性を示すが,既存の添加剤が必ずしも適応できない。これは低粘度エステル油に対して顕著であり,新たな添加剤であるヒドロキシアルキルリン酸エステルを評価した。これはリン濃度0.016重量%(160 ppm)でよい耐摩耗性を示す。この添加剤は速やかに境界膜を生成し,その結果としてよい耐摩耗性を示す。動的条件では境界膜の修復能が耐摩耗性に重要であることを示した。
ノート
  • El-Sayed Mohamed Abd-Alla, 森吉 昭博, Manfred N. Partl, 高橋 健二, 近藤 崇, 東本 崇
    2006 年 49 巻 5 号 p. 274-279
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究はスイスの国道でわだち掘れのひどい区間(G区間)とこれに隣接した縦き裂のひどい区間(H区間)の各4層系のアスファルト混合物の内部の骨材の動きが解析できる新しいホイールトラッキング試験機について述べている。この試験装置は北海道大学で開発されたものであり,これは現場の舗装内部の温度分布と同様な状態で実験できる。この装置は4層系の混合物の内部の骨材の2次元的な動きやひずみが車輪と直角方向の写真撮影により解析可能である。本装置は混合物の断面(幅20~24 cm)を鉛直方向に五つに分割し,載荷荷重の中心線上での表面や境界層での最大変形量や,表面の横方向の変形量,垂直方向に五つに分割された部分の面積の変化や骨材間の混合物の内部のひずみ分布が測定できる。
    実験結果より荷重付近での混合物表面での流動や混合物の圧密現象がこの装置で観察された。また,実験中に混合物内部の2 mm以上のすべての骨材が垂直方向に移動していること,高温で600回の車両通過だけで表層内部に局部的に40%以上の大きなひずみが生じることを明らかにした。
feedback
Top