Journal of the Japan Petroleum Institute
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50 巻, 4 号
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総合論文
  • 畑中 重人, 守田 英太郎, 島田 孝司
    2007 年 50 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    FCCガソリン(CCG)の水素化脱硫をCo-Mo/γ-Al2O3触媒を使用して検討した。硫黄化合物は脱硫されたが,硫化水素とオレフィンの反応によりチオールが生成した。
    チオフェン,n-オレフィン,イソオレフィンを使用したモデル反応で,硫化水素とCoのこれら反応に与える影響を調べた。Coの添加により,脱硫反応は促進されたが,n-オレフィンの水素化反応は阻害され,イソオレフィンの水素化反応はほとんど影響を受けなかった。この実験に基づき,触媒上にチオフェンの脱硫活性点,n-オレフィンの水素化活性点,イソオレフィンの水素化活性点という三つの異なる活性点の存在を提案した。イソオレフィンの反応において,オリゴマーの生成を確認し,これを応用してコーキング処理による脱硫選択性(脱硫活性とオレフィン水素化活性の比)の向上を検討した。
    商業規模のCCG脱硫プロセスを設計し,反応シミュレーションモデルを検討した。脱硫されたCCG中のチオフェン,チオール,オレフィンの量を計算できる式を作成し,その精度を検証した。
    これら研究成果は,20,000 BPSDの商業規模実証化装置に結実し,2004年より硫黄分10 ppmのサルファーフリーガソリンの製造が開始された。
一般論文
  • 竹内 紳悟, 餅原 徹也, 高橋 武重, 甲斐 敬美, 森田 泰正, 米谷 盛壽郎
    2007 年 50 巻 4 号 p. 188-194
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    軽質オレフィンの有効利用を目的として,エチレン,プロピレン,1-ブテン,イソブテンのオリゴメリゼーションをメタンスルホン酸(MSA)を触媒として,高圧流通式反応器を用い,20℃から40℃の温度で250 min反応を行った。液状炭化水素を分離後,質量分析計のついたガスクロマトグラフで分析し,分子量分布からガソリン,灯油そして軽油に分類した。エチレンそしてプロピレンは,わずかにMSAに溶解したが,液状生成物は得られなかった。1-ブテンを原料にしたときの液状炭化水素の収量はイソブテンよりも少なくなった。また,生成した液状炭化水素は,ガソリンが少なく,中質油成分の選択率が大きくなった。
    触媒の活性劣化と再利用を行うため,使用済み触媒を10回繰り返して反応を継続したが,ほとんど劣化は観察されなかった。これに対して,同一条件で濃硫酸を触媒としたとき,3回の繰り返しで炭化水素層と硫酸層が分離できなくなった。また,不純物の影響を調べる目的で,少量の水をMSAに添加するとオリゴメリゼーション活性が著しく減少した。
    これらの結果より,MSAはブテン類を選択的に中質油に変化させる優れた触媒であることが分かった。
  • Hoang Duc Hanh, Nguyen The Dong, 興津 健二, 前田 泰昭, 西村 六郎
    2007 年 50 巻 4 号 p. 195-199
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    バイオディーゼル燃料を合成するためにトリオレインとエタノールのエステル交換反応に対する超音波照射効果について検討した。触媒には塩基触媒であるNaOHまたはKOHを用い,25℃で40 kHzの超音波照射を行った。超音波照射によって速やかにエステル交換反応が進行することが分かった。この時の最適条件は,エタノール/トリオレイン比が6/1,塩基触媒濃度が1 wt%,照射時間が20分以内であった。さらに,反応温度がエステル交換反応速度に与える影響について調べた。その結果,見積もられたみかけの活性化エネルギーは一般に撹拌法で報告されている値とほぼ同じオーダーであることが分かった。超音波照射によって誘起されるキャビテーション現象によってトリオレインとエタノールの乳化が効率良く起こり,その結果,エステル交換反応速度が促進されたものと示唆された。
  • 高津 幸三, 竹越 岳二, 勝野 尚, 河島 義実, 松本 寛人
    2007 年 50 巻 4 号 p. 200-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    LPGにはチオール類,スルフィド類,ジスルフィド類などの種々の硫黄化合物が5~10 volppm程度含有されており,LPGを燃料電池の水素源として利用するには硫黄含有量をppbレベルにまで除去する必要がある。2-メチル-2-プロパンチオール(TBM: t -Butyl Mercaptane),ジメチルスルフィド(DMS),ジメチルジスルフィド(DMDS),硫化カルボニル(COS)の4種類の硫黄化合物を添加したプロパンを用いて活性炭,CuO/ZnO/Al2O3,Ag交換βゼオライト,Ag/CeO2の4種の脱硫剤について常温での吸着脱硫特性を調べた。活性炭では硫黄化合物の除去が困難であった。CuO/ZnO/Al2O3ではTBMについては優れた脱硫特性を示したが,DMSは短時間で吸着破過した。Ag交換βゼオライトはTBM,DMS,DMDSについては優れた脱硫特性を示したが,COSの脱硫が困難であった。Ag/CeO2は全ての硫黄化合物を除去することができ,特に他の吸着剤に比べてCOSの脱硫特性に優れていた。また,CuO/ZnO/Al2O3と同様に反応性が高い硫黄化合物ほど吸着除去しやすい。Ag交換βゼオライトでは硫黄化合物は分子状吸着し,硫黄原子の負の電荷が大きいほどAgカチオンと硫黄原子が強い配位結合を示す。一方,Ag/CeO2では室温においても硫黄化合物が解離し,原子状硫黄となり吸着する。
  • Javier Vilcaez, 宮澤 三造, 須藤 孝一, 井上 千弘
    2007 年 50 巻 4 号 p. 208-217
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,原油二次回収用パイプラインシステムにおける硫酸還元細菌,基質および殺菌剤の相互関係を考慮した二次元数学モデルを作成し,その殺菌処理について数学的検討を行った。大口径パイプラインにおいて形成されるバイオフィルムの厚さは,殺菌処理によってバイオフィルムがはがされること,あるいはバイオフィルム中の硫酸還元細菌が死滅することによると推定した。硫酸還元細菌の死滅および増殖,さらにバルク中における殺菌剤の不活性化のほかに,本数学モデルでは,パイプライン中のバイオフィルムとバルク間において,物質移動,生物反応,バクテリアの脱着,および殺菌剤の不活性化を考慮し,それらの相互関係を極めて単純化した係数によって表現した。数値計算の結果,原油生産現場でのパイプライン水中における殺菌処理は,バルク中の殺菌速度係数,殺菌剤濃度および殺菌剤の減衰速度係数に敏感であるが,バイオフィルム表面における殺菌剤不活性化係数,あるいはバイオフィルム中のバクテリア濃度にはほとんど依存しないことが示された。本数学的検討は,殺菌処理における非常に極端な条件に対して適用され,数学的検討の感度だけではなく,効果的な最小殺菌剤濃度を決定できうることにつながることが示唆された。
  • 江頭 竜一, 斎藤 潤
    2007 年 50 巻 4 号 p. 218-226
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/01
    ジャーナル フリー
    メタノール水溶液を溶媒とした吸収油の液液抽出に対して,連続式向流接触スプレー塔型の抽出装置を適用した。スプレー塔は構造が簡素であることから,塔内の物質移動現象を検討するのに適している。まず,物質移動係数の算出に必要となる吸収油─メタノール水溶液間の液液平衡を実測し既往の結果と比較した。本報で得られた液液平衡関係と既往の結果とは良好に一致し結果の再現性,信頼性を確認した。ついで,スプレー塔による液液抽出における操作性ならびに分離性について検討した。連続(抽出)相に比較して分散(抽残)相の密度は十分大きく良好な向流接触操作が可能であり,本報の範囲においては分散相の飛まつ同伴やフラッディングは観察されなかった。0.5 mほどの研究室規模のスプレー塔により十分な物質移動が検出され,塔内の物質移動現象の検討が可能であった。同素環化合物など吸収油中の他の成分に比較して含窒素複素環式化合物が選択的に抽出され,これらの成分の分離が可能であった。また,この分離は平衡関係に基く分離であった。本スプレー塔において,含窒素複素環式化合物の収率および分離の選択性は,最高でそれぞれ0.4および30程度であった。連続(抽出)相流量の増加とともに,総括物質移動係数は増加し,連続相側に物質移動抵抗が存在した。
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