Journal of the Japan Petroleum Institute
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50 巻, 5 号
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総合論文
  • 松田 剛, 大野 智也, 坂上 寛敏, 高橋 信夫
    2007 年 50 巻 5 号 p. 229-239
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    Pt/MoO3の表面積は水素還元により増大し,最大で約250 m3/gの表面積となった。この表面積の増大は0.6~3 nmの細孔が生成するためであることが示された。Pt/MoO3のヘプタン異性化活性も還元温度とともに増加し,723 Kで12時間水素還元した触媒が最も高い異性化活性を示した。2-プロパノール脱水活性も異性化活性と同様な還元温度依存性を示した。Pt/MoO3にNaを担持しても水素還元により表面積は増大したが,ヘプタン異性化および2-プロパノール脱水活性は著しく低下した。これに対して,シクロヘキセン水素化活性はNa担持により増大した。NH3-TPD測定より,異性化および脱水活性の低下が酸量の低下に起因していることが示された。以上のことより,水素還元したPt/MoO3の異性化活性は固体酸触媒としての能力に依存していると結論した。MoO3を673 Kで水素還元しても表面積は増大しないが,モリブデン水素ブロンズH1.55MoO3の表面積はPt/MoO3と同様に増大した。また,水素還元したH1.55MoO3のペンタン異性化および2-プロパノール脱水活性は水素還元したMoO3のそれよりも著しく大で,水素還元したPt/MoO3の活性と同程度であった。XRDおよびTPR測定で,MoO3はMoO2に還元されるが,H1.55MoO3およびPt/MoO3はブロンズ相が分解後,オキシハイドライド相MoOxHyに還元されることが示された。以上のことより,ブロンズ相のMoOxHyへの還元が表面積の増大を伴い,このMoOxHyがアルカン異性化の活性相となっていると結論した。
  • 津田 健
    2007 年 50 巻 5 号 p. 240-248
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    FRPのマトリックスとして使われている熱硬化性樹脂およびFRPの液体環境における劣化挙動,機構について著者らの実験結果に基づき概説した。化学的劣化すなわち腐食について詳細な検討を行った結果,腐食形態は「表面反応型」,「腐食層形成型」および「全面浸入型」の三つに分類でき,各形態の腐食機構は樹脂の化学構造,樹脂と液の反応性,樹脂中への液の拡散浸入速度に依存することを示した。
    「表面反応型」および「腐食層形成型」に対して,腐食深さの経時変化を腐食速度と定義することにより,腐食後の非腐食部厚さの経時変化を数式化できた。これに基づき,曲げ強度保持率に対するマスターカーブを用いる寿命予測法を提案した。
    また,全面侵入型については,強度低下の開始を予測する因子として重量変化が重要であることを示した。
  • 藤川 貴志
    2007 年 50 巻 5 号 p. 249-261
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    軽油をサルファーフリー(硫黄分10 ppm以下)にすることで,ディーゼル排気ガス中の窒素酸化物や粒子状物質の低減やディーゼル乗用車の燃費向上による二酸化炭素排出量の削減が可能となる。
    筆者らは1999年より5年間,軽油超深度脱硫触媒の開発に取り組み,既存の500 ppm対応用軽油脱硫装置でサルファーフリーを達成できる高活性CoMo系脱硫触媒の開発に成功した。開発触媒(C-606A)は,Co,Moを含む水溶液に有機酸とリン酸を添加した含浸溶液を担体(HY-Al2O3)に担持した後,焼成をせずに乾燥で止めるという一連の新たな方法で調製された。この触媒の脱硫活性は従来の500 ppm対応触媒と比較して反応速度で約3倍である。同触媒の脱硫活性点構造を調べた結果,高活性な脱硫活性点(Co-Mo-S Type II)が高分散化していることが推測された。
    C-606Aはコスモ石油全製油所の軽油脱硫装置で使用され,大幅な設備を増強することなくサルファーフリー軽油の製造が可能となった。現在まで,いずれの装置でも順調にサルファーフリー軽油を生産している。
    今後,二酸化炭素排出量の抑制および設備投資ミニマム化の観点から,本開発触媒技術が広く展開されていくものと期待される。
一般論文
  • 望月 剛久, 小泉 直人, 濱邊 雄輔, 原 毅, 滝澤 博胤, 山田 宗慶
    2007 年 50 巻 5 号 p. 262-271
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    含浸用の硝酸Co水溶液にニトリロ三酢酸(NTA)あるいはシクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)を添加してCo/SiO2を調製すると,Fischer-Tropsch合成(FTS)活性が向上することを見出しているので,本研究ではこれらのキレート剤がFTS活性種の形成に及ぼす影響を各種分光法ならびに活性試験によって検討した。まず,拡散反射FTIR測定から硝酸Co水溶液へのキレート剤の添加によりCo2+との錯体が形成し,これらの錯体は含浸過程においてSiO2のOH基と結合して担持されることが示された。引き続く乾燥過程でNTA錯体とOH基との結合が切れ,錯体自身も一部分解するのに対して,CyDTA錯体はOH基との結合を保ったまま保持されていることが明らかとなった。さらに,焼成過程において硝酸Co種は416 Kで分解するのに対して,NTA-Co2+錯体とCyDTA-Co2+錯体はそれぞれ515 Kと573 Kで燃焼することも示された。これらの触媒の焼成後のCo K-edge EXAFSを参照物質(CoO,Co3O4,α-Co2SiO4)のものと比較したところ,硝酸Co水溶液にキレート剤を添加すると,高分散状態のCo3O4(NTA)あるいはα-Co2SiO4(CyDTA)類似のCo種が形成することが明らかとなった。NTAを用いて調製した触媒のFTS活性は触媒の焼成温度に強く依存し,NTA-Co2+錯体の燃焼温度より高い温度で焼成してはじめて高活性が得られることも明らかとなった。以上の結果から,触媒調製過程におけるキレート剤とCo2+およびSiO2表面との相互作用が活性向上のための重要な因子と言える。NTAは触媒調製過程においてCo2+およびSiO2表面と適度に相互作用するため,焼成後に分散性の高いCo3O4類似のCo酸化物種を形成し,活性向上をもたらすと推定された。
  • 天尾 豊, 石川 満枝
    2007 年 50 巻 5 号 p. 272-277
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    リンゴ酸酵素による炭酸水素イオンとピルビン酸からのリンゴ酸への変換反応と水溶性亜鉛クロリンe6(ZnChl-e6)の光増感作用によるNADP+の光還元反応とを組み合わせた光化学的リンゴ酸合成系を構築した。具体的には電子供与体であるNADH,ZnChl-e6,メチルビオローゲン(MV2+),フェレドキシン-NADP+還元酵素(FNR),NADP+およびリンゴ酸酵素(ME)からなる系である。この反応系に炭酸水素ナトリウムとピルビン酸を添加し,200 Wタングステンランプを用い可視光を照射すると光照射時間とともに定常的にリンゴ酸が生成した。また,リンゴ酸の生成とともにピルビン酸の減少が観測された。リンゴ酸合成系の反応条件を検討した結果,反応条件NADH(30 mmol·dm-3),ZnChl-e6(50 μmol·dm-3),MV2+(0.24 mmol·dm-3),FNR(4.0 units),ピルビン酸(10 mmol·dm-3),NaHCO3(10 mmol·dm-3),NADP+(0.01 mmol·dm-3)およびME(4.5 units)のときに,光照射3時間でリンゴ酸生成量は2.0 mmol·dm-3であり,ピルビン酸からリンゴ酸への変換率は20%であった。
  • 小林 学, 十河 清二, 谷地 弘志, 石田 勝昭
    2007 年 50 巻 5 号 p. 278-282
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    シリカアルミナを主成分とし,また少量のUSYゼオライトを含有する水素化分解触媒を異なる平均粒子径を有するシリカアルミナを用いて調製し,粒子径が触媒の細孔構造およびその水素化分解性能に及ぼす影響について検討した。
    調製した触媒のマクロポア構造は,用いたシリカアルミナ粉の平均粒子径に依存し,粒子径が大きいほど触媒の中央細孔径は大きくなった。
    調製された触媒の直留減圧軽油に対する水素化分解性能を評価した結果,300 nmまではマクロポアの細孔径が大きいほど高い水素化分解活性を示す一方で,中央細孔径が400 nm以上の触媒は逆に水素化分解活性は低下した。水素化分解活性に対し最適なマクロ細孔径,シリカアルミナ粒子径が存在することが示唆された。
    中間留分選択性に関しては,マクロポア径が小さいほど高く,粒子径の小さなシリカアルミナが好ましいことが分かった。この結果は,粒子径の小さなシリカアルミナを用いることにより,分解により生成した中間留分に相当する分子がシリカアルミナ粒子の外に拡散することが容易になり,二次分解が抑制されたためであると推察される。
    これらの結果から,水素化分解触媒の設計において,粒子径を最適化し高い拡散性を触媒に付与することが,中間留分選択性を損なうことなく触媒の活性を向上させることのできる有効な手段であると考えられる。
レター
  • 安 炳九, 貝田 佐知子, 三宅 亨, 谷 徹, 樫本 逸志, 古南 博
    2007 年 50 巻 5 号 p. 283-286
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/01
    ジャーナル フリー
    白金などの貴金属を使用しない,揮発性有機化合物除去のための燃焼触媒を探索した。一般的な金属酸化物(酸化チタン (IV) (TiO2),アルミナ,シリカ)を低濃度トルエンの分解触媒の候補として選んだ。トルエンの発火点は480℃であるにもかかわらず,500℃においてもトルエンは完全には転化しなかった。TiO2は代表的な金属酸化物のなかで最も高い燃焼活性を示した。500℃の適切な接触時間の条件下,トルエンはTiO2上でほぼ定量的に(収率99%以上)二酸化炭素へと変換された。
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