Journal of the Japan Petroleum Institute
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51 巻, 1 号
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総合論文
  • Sok Yui
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    カナダのオイルサンドビチューメンは,約44%のガスオイルと56%の減圧ボトム,および硫黄,窒素,芳香族,金属,アスファルテン,残留炭素を比較的多く含むため,それをアップグレーディングするために用いられてきた技術は,数々の特徴を有している。得られる合成原油は,従来の原油に比べて,少量のナフサと多量の中間留分およびガスオイル分を含み,重質なボトムは含まれない。また,硫黄分は極微量まで除かれるものの,芳香族分は比較的多いため,セタン価が低く,ジェット燃料の煙点も低い。そのため,高品質な合成原油の技術開発が継続的な挑戦であった。この論文では,ビチューメンの性状,そのアップグレーディング技術,得られる合成原油の品質,および従来の製油所において合成原油を処理するために考慮すべき点等を紹介する。
  • 銭 衛華
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 14-31
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    クリーン燃料油製造のため新規非水素化脱硫プロセス,特に酸化脱硫プロセスの開発について解説した。軽油やガソリン等の軽質燃料油中の硫黄含有量に対する規制が年々厳しくなり,2005年から燃料油中の硫黄含有量が既に10 ppm以下になっている。近い将来にはさらに低くなることが予想される。一方,硫黄含有量を5 ppmまで低減するには,従来の水素化脱硫プロセスでは限界ではないかと危惧されている。本論文では新規非水素化脱硫プロセスの一つである酸化脱硫について,我々の研究進捗状況を報告するとともに最新の研究の進展や未来への展望等を以下のように解説した。(1)燃料油中の硫黄化合物の酸化反応性,および様々な酸化剤-触媒系での酸化反応・反応機構の紹介。(2)種々の燃料油(灯軽油および減圧軽油)を用いた酸化反応試験結果,および酸化脱硫の有効性の検討。(3)酸化した燃料油からの硫黄酸化物の除去方法についての解説。
  • 萩原 和彦
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,129Xe NMR法をCo-Mo/Al2O3水素化脱硫触媒の解析に応用する検討を行った。この応用に際しては,ゼオライト細孔解析に用いられている従来の129Xe NMR法の解釈を再考した。硫化Mo/Al2O3触媒では,観測された129Xe NMRピークの化学シフトδがXe吸着量N に対して非直線的に変化した。対照的に,乾燥処理した触媒では,δはN に対してほぼ一定であった。この結果は,δのN に対する非直線的な変化がXeとMoS2結晶のエッジに存在する配位不飽和サイトとの電子的な相互作用に主に起因していることを示唆している。さらに,129Xe NMRスペクトルにより算出したXeの拡散状態に起因する項δ0は,硫化温度に伴って徐々に増加し,673 K以上で最大値に近づいた。この結果は,δ0が表面上におけるMoS2結晶の形成と密接に関連していることを示している。また,硫化Co-Mo/Al2O3触媒では,δ0がCo担持量に伴って徐々に大きくなり,5.7 mass%で最大値に達した。これに対して,硫化Co/Al2O3触媒では,δ0は0 mass%から2.4 mass%で増加し,2.4 mass%以上ではほぼ一定となった。この結果は,主に硫化後におけるCo-Mo/Al2O3触媒とCo/Al2O3触媒での磁化率の差異に起因している。すなわち,反強磁性的なCo-Mo-S相の形成が,δ0に大きな影響を及ぼす磁化率の増大を引き起こしている。また,硫化Co-Mo/Al2O3触媒における7.3 mass%でのδ0のわずかな減少は,Co-Mo-S相よりもCo9S8が選択的に形成されることと密接に関連している。これらの検討結果は,129Xe NMR法より得られるδ0がCo-Mo-S相の量に敏感なパラメーターであることを強く示唆している。さらに,種々のCo-Mo/Al2O3触媒の相対脱硫活性がδ0とおおむね相関した。この結果もまた,129Xe NMR法がCo-Mo/Al2O3水素化脱硫触媒上のCo-Mo-S相の解析に有用であることを示している。
一般論文
  • 浅井 宏太, 永易 圭行, 高根 孝仁, 岩本 伸司, 矢ケ崎 えり子, 石井 憲一, 井上 正志
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    球状アルミナに担持したNi触媒を用いるメタン分解により水素と多層カーボンナノチューブを合成する反応を熱重量分析装置を用いて検討した。炭素生成初速度は680℃以下では反応温度の増加とともに増加した。熱力学的な観点からはメタン分解反応は高温ほど有利であると考えられるが,680℃以上の温度領域では炭素生成初速度が反応温度の増加とともに減少し,反応はみかけ上,負の活性化エネルギーを持っていた。メタンに関する反応次数は反応温度に関わらず約1.4であり,水素に関する反応次数は反応温度が700℃以下から720℃以上へ増加するに従い,−1/2から0へと変化した。Langmuir-Hinshelwood機構に基づいた反応速度式の検討から,700℃以下での律速段階は表面水素による阻害を受けたメタンの吸着であり,720℃以上ではニッケル粒子のバルク内への炭素種の溶解であると結論した。みかけの負の活性化エネルギーはニッケル粒子のバルク内への炭素種の溶解度が高温領域では温度とともに減少することによると考えられる。
  • 杉山 茂, 逢坂 岳士, 上野 洋平, 外輪 健一郎
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    プロパンからプロピレンへの酸化脱水素反応がカルシウムおよびストロンチウムヒドロキシアパタイト担持バナデート触媒(VOx /CaHAp,VOx /SrHAp)を用いて検討された。バナデートを担持することによって活性が改善されたが,特にVOx /SrHApで顕著な活性改善が見られた。5%VOx /SrHAp触媒を用いた場合のプロピレン収率は,従来最高活性を与える触媒の一つと言われていたMg2V2O7に匹敵する収率を示した。ヒドロキシアパタイトの活性座であるOH基とバナデートの複合作用によって高活性が得られることが示された。さらに,バナデートのレドックスの性質が触媒活性に反映することも確認された。接触時間の反応挙動に対する効果から,プロパンが酸化脱水素され,まずプロピレンが形成され,さらにプロピレンの再酸化によってCOx が生成し,プロパンから直接COx が生成しないことが明らかになった。
  • 望月 剛久, 鳥羽 誠, 森田 芳弘, 葭村 雄二
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    イッテルビウム(Yb)で修飾したUSY型ゼオライトを担体として,パラジウム─白金(モル比Pd : Pt=4 : 1)触媒を調製し,触媒性能に及ぼすYb担持量(0~10.0 wt%)の影響について検討した。Yb添加量が少量(<5.0 wt%)の場合,Pd-Pt粒子の分散度が向上し,テトラリンの水素化活性および4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの脱硫活性も向上することが見出された。また,Ybの添加により,水素化脱硫よりもテトラリンの水素化が著しく促進されること,Yb無添加の触媒に比べテトラリン水素化活性がテトラリン濃度の影響を受けにくいことが分かった。一方,Pd-Pt/Yb-USYのアンモニア吸着熱測定により,Ybの添加に伴いUSY上の全体の酸量は変化しないが,強酸点量が減少し,中~弱酸点量が増加すること,またCO吸着法による分散度測定(吸着温度=50℃)から,Yb添加によりPd-Pt粒子表面が硫化されやすくなることが分かった。しかしながら,Ybの添加により200℃以上の還元雰囲気下ではPd-Pt相と硫黄の親和力が弱くなることがTPR測定から確認された。これらのことから,Pd-Pt/Yb-USY触媒は水素化反応条件下で高い耐硫黄性と芳香族水素化能を有し,芳香族分を多く含む原料油の水素化にも有効であることが分かった。
ノート
  • 飯島 孝幸, 高木 大介, 山口 達明
    原稿種別: ノート
    2008 年 51 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
    これまでの研究において,2-ナフトールのカルボキシル化をアニソール中で行うと,従来のKolbe-Schmitt反応では生成されにくい3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸や6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が得られることを見出してきた。ここでは,6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の合成を目的とし,ケロシンを用いて2-ナフトールのカルボキシル化を行い,反応温度,反応時間という反応条件およびアルカリ金属種が生成物選択性に及ぼす影響について検討した。
    原料のアルカリ金属種を変化させると,ナトリウム塩と比較してカリウム塩の方が収率は高い値を示した。また,6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の選択率に着目すると,ナトリウム塩ではわずかに生成したのみであったが,カリウム塩では高選択率を得ることができた。
    カリウム塩を原料とした場合,反応時間,反応温度ともに収率への影響はわずかであることが明らかとなった。一方,反応温度の上昇に伴い3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸選択率は減少し,6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸選択率は増加した。各生成物の熱転位反応および熱分解プロファイルより,生成物の熱安定性の違いが反応温度による生成物選択性の違いの主要な原因であると考えられる。
    これらより,ケロシン中で原料としてカリウム塩を用いることにより,6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を高選択的に合成できることが明らかとなった。
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