本研究では,
129Xe NMR法をCo-Mo/Al
2O
3水素化脱硫触媒の解析に応用する検討を行った。この応用に際しては,ゼオライト細孔解析に用いられている従来の
129Xe NMR法の解釈を再考した。硫化Mo/Al
2O
3触媒では,観測された
129Xe NMRピークの化学シフトδがXe吸着量
N に対して非直線的に変化した。対照的に,乾燥処理した触媒では,δは
N に対してほぼ一定であった。この結果は,δの
N に対する非直線的な変化がXeとMoS
2結晶のエッジに存在する配位不飽和サイトとの電子的な相互作用に主に起因していることを示唆している。さらに,
129Xe NMRスペクトルにより算出したXeの拡散状態に起因する項δ
0は,硫化温度に伴って徐々に増加し,673 K以上で最大値に近づいた。この結果は,δ
0が表面上におけるMoS
2結晶の形成と密接に関連していることを示している。また,硫化Co-Mo/Al
2O
3触媒では,δ
0がCo担持量に伴って徐々に大きくなり,5.7 mass%で最大値に達した。これに対して,硫化Co/Al
2O
3触媒では,δ
0は0 mass%から2.4 mass%で増加し,2.4 mass%以上ではほぼ一定となった。この結果は,主に硫化後におけるCo-Mo/Al
2O
3触媒とCo/Al
2O
3触媒での磁化率の差異に起因している。すなわち,反強磁性的なCo-Mo-S相の形成が,δ
0に大きな影響を及ぼす磁化率の増大を引き起こしている。また,硫化Co-Mo/Al
2O
3触媒における7.3 mass%でのδ
0のわずかな減少は,Co-Mo-S相よりもCo
9S
8が選択的に形成されることと密接に関連している。これらの検討結果は,
129Xe NMR法より得られるδ
0がCo-Mo-S相の量に敏感なパラメーターであることを強く示唆している。さらに,種々のCo-Mo/Al
2O
3触媒の相対脱硫活性がδ
0とおおむね相関した。この結果もまた,
129Xe NMR法がCo-Mo/Al
2O
3水素化脱硫触媒上のCo-Mo-S相の解析に有用であることを示している。
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