Journal of the Japan Petroleum Institute
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51 巻, 5 号
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総合論文
  • 田畠 健治, 大倉 一郎
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 255-263
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    大気中における二酸化炭素やメタンの増加に伴う地球温暖化が懸念されており,二酸化炭素やメタンを固定化する技術の開発が求められている。その一つとして,生物工学的手法を利用して生産した水素を用いた二酸化炭素およびメタンからのメタノール生産プロセスがある。このプロセスは太陽エネルギーを用いる水の分解,水素を還元剤とする二酸化炭素からのメタン生産,メタンの部分酸化によるメタノールの生産からなる。このうち,本稿では,太陽エネルギーを用いる水の分解,およびメタンの部分酸化によるメタノールの生産プロセスの研究について述べる。太陽エネルギーを用いた水の分解では,光合成反応中心とヒドロゲナーゼを用いて水素と酸素を生産するシステムと,光増感剤とヒドロゲナーゼを用いた光水素発生反応と植物のグラナを利用した還元剤のリサイクルを組み合わせたシステムの二つについて検討した。また,メタンの部分酸化によるメタノール生産では,酵素メタンモノオキシゲナーゼを有するメタン資化細菌を利用したメタノール生産法について検討した。メタノール酸化酵素をシクロプロパノールにより不可逆的に阻害することにより,メタン資化細菌を用いてメタノールを蓄積することが可能となった。さらに,メタノール生産の条件や半回分法によるメタノール合成を行った。
  • 藤本 真司, 井上 宏之, 矢野 伸一, 坂木 剛, 美濃輪 智朗, 遠藤 貴士, 澤山 茂樹, 坂西 欣也
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 264-273
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    昨今,バイオエタノールへの関心が高まっている。現在のバイオエタノールは糖やデンプンを原料にしていることから食料との競合が懸念されており,リグノセルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産の実用化が喫緊の課題である。リグノセルロース系バイオマスからのバイオエタノール製造では硫酸を使う方法が一般的ではあるが,より環境に優しい方法として,我々は硫酸を使わない方法の開発に取り組んできた。具体的には微粉砕と酵素糖化を組み合わせた糖化方法である。プロセス工学の観点から課題を抽出して,低エネルギーでの微粉砕処理,低コストでの糖化処理を研究開発した。これらの技術を組み合わせてプロセスを構築することで,プロセスの実用化に目処がついた。
  • 野村 淳子, 嶋 寿
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 274-286
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    カルボカチオン種はゼオライト上での炭化水素の反応中間体としてしばしば提唱されており,その生成機構や反応性に関しては主にIRやNMRと言った手法が用いられてきた。本稿ではまず,これらの手法を用いてこれまでに明らかにされてきた結果を要約し,次にIRを用いた測定手法の詳細について紹介した。IRを用いた最近の研究例として,ゼオライト上への環状アルケンの吸着によるアルケニルカチオン種の生成について記した。
    環状アルケンがシリカアルミナ,HY,モルデナイト,H-ZSM-5,H-ベータに吸着すると,酸性水酸基との反応によってアルケニルカチオン種を生成した。これは,IRスペクトルでは1490~1530 cm-1に,紫外可視吸収スペクトルでは290~330 nmに特徴的な吸収バンドを有することで確認された。さらに,他のゼオライトと比較して細孔径の小さいH-ZSM-5や酸強度の弱いH-ベータでは,アルケニルカチオン種に加えてアルコキシド種も生成することが分かった。
一般論文
  • Samaneh Razzaghi, Riyaz Kharrat, Shapour Vossoughi, Davood Rashtchian
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 287-297
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    始めに,火攻法における酸化・燃焼反応に基づく油の置換が油層内でどのように起こるかについて原理を説明している。次に,イランの重質油(KEM油田)と貯留岩コア(炭酸塩岩)を使った火攻法のラボ実験について説明している。
    実験では,まず原油に対して酸化反応に関するパラメーター(反応速度定数,自由化エネルギー,反応次数,エンタルピーなど)を求めるために,熱重量/微分熱重量分析と示差走査熱量測定を行った。その上で,原油と貯留岩コアを用いて,火攻法を模擬する燃焼管実験を行った。さらに,市販のシミュレーターを用いて燃焼管実験結果(温度分布など)をマッチングして,燃焼管内で起こっている反応,油の流動メカニズムなどを解析した。
    燃焼管実験では特に自然着火させることを主眼にした。まず,空気自体の圧入から始め,次に酸素濃度を増していった。また,自然着火させる工夫として,酸素60%で,あまに油,過安息香酸-t-ブチル,オクチル酸コバルトの添加が効果的であることを提案している。
  • 大勝 靖一, 佐藤 琢磨
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 298-308
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    カルコンはフラボノイドの出発物質である。フラボノイドは多くが単離され,それらがフェノール性水酸基を持つために強力な酸化防止剤であることが知られている。しかし,カルコンについてそのような活性はほとんど研究されていない。本研究では,天然物類似の多くのカルコン誘導体を合成し,そのA環およびB環に存在する水酸基の役割,ならびにそれらの環を連結するC3鎖の役割を検討した。B環の水酸基はC3鎖の2-,4-位にある場合にカルコンの前駆物質のp-クマル酸の性質を受け継いで強い酸化防止活性を示した。p-クマル酸に付与されたA環の水酸基はそのo-位のカルボニル基と一緒になって紫外線吸収能(光酸化防止能)を示した。C3連結鎖の炭素─炭素二重結合はA環とB環を共役系で連結し,酸化防止能および光酸化防止能の向上に寄与することが分かった。これらの情報に基づき,新しい高活性なポリマー添加剤を分子設計した。
  • 小久保 慎介, 西田 浩二, 林 明典, 高橋 宏和, 横田 修, 稲毛 真一
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 5 号 p. 309-314
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,コーク抑制状態で重油から重質分と重金属分を含まない軽質油製造を可能にするため,超臨界水を利用した改質方法を開発した。ガス,マルテン,アスファルテン,コークの経時変化と重金属分バナジウム存在状態に関する知見を得るため,重油を単体および超臨界水を連続供給した状態で加熱する実験を実施した。実験は耐圧性の加熱容器を用い,25 MPaにおいて400℃から470℃の改質条件で実施した。その結果,ガスおよびマルテンを主成分とする改質油は超臨界水によって選択的に抽出され,ガスおよび改質油生成速度とコーク生成速度は温度に比例して増大した。コークの抑制には,コーク誘導期間内での重油加熱が有効であることが分かった。バナジウムは,その濃度が残留油中のアスファルテン濃度と比例関係を示したことから,重質分に濃縮されていると考えられる。これらの結果を基にガスおよび改質油生成速度を損なうことなくコーク抑制可能な改質方法を考案した。本改質方法では,450℃において重油をコーク誘導期間内で加熱後,400℃で超臨界水によってガスおよび改質油を抽出した。その結果,450℃と同等のガスおよび改質油生成速度でコーク生成量を450℃に比して70分の1以下に抑制可能であることを確認した。
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