Journal of the Japan Petroleum Institute
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52 巻, 3 号
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総合論文
  • 小松 直樹
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 73-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノダイヤモンドはナノ炭素化合物と総称され,ナノテクノロジーの代表的な素材として注目されている。これら化合物の物性はその構造と密接な関係にあり,したがってその精緻(せいち)な応用には,単一構造体,あるいはごく限られた構造体の混合物であることが望まれる。しかしながら,ナノ炭素化合物は多くの構造体の混合物として合成されることから,その後工程として精製が必要となってくる。以上の背景から,筆者らのグループでは,ここ約10年間,ナノ炭素化合物の分離精製に取り組んできた。本稿では,フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノダイヤモンド,それぞれについて,筆者らのグループで開発された新規な分離手法を紹介する。フラーレンでは,薄い活性炭層を用いたろ過により,大量精製にも適用可能な実用的な手法を見い出した。カーボンナノチューブにおいては,超音波霧化と呼ばれる手法を用い,リング状のカーボンナノチューブを純度高く得ることに成功した。ナノダイヤモンドの分離では,高温高圧法により合成,分離された中心径30 nmのナノダイヤモンドから,遠心分離機を用いることで最小4 nm サイズのナノダイヤモンドを得ることに成功した。以上の分離法は,ろ過,超音波照射,遠心分離という,通常の実験室でよく用いられる基本的な実験手法を用いていることから,上記ナノ炭素化合物の工業生産にも適用可能であると考えられる。
  • 神谷 裕一, 今井 裕之, 奥原 敏夫
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 81-89
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    アルコール中でのVOPO4·2H2Oのインターカレーション-層剥離-還元を利用した高結晶性(VO)2P2O7触媒の新規合成法(剥離還元法)を提案する。VOPO4·2H2Oを2-ブタノール中で徐々に加熱すると,VOPO4の層剥離が進行した。アルコール中に分散したVOPO4シートの加熱処理により,微小な駆体VOHPO4·0.5H2O結晶(1 μm×150 nm)が生成した。剥離還元法で得た前駆体結晶は反応ガス雰囲気下で高結晶性(VO)2P2O7へと変換された。この触媒はn-ブタン選択酸化において,高い活性と無水マレイン酸(MA)選択率を示した。剥離還元法を2-ブタノール-エタノール混合アルコール中で行うと,2-ブタノール単独の場合よりも微小かつサイズが均一な前駆体結晶(300 nm×35 nm)が生成した。この微小サイズの前駆体結晶から得られた触媒は,n-ブタン選択酸化に対して極めて高いMA選択率(~84%)を示し,従来法触媒を大きく上回った。VOPO4·2H2Oのインターカレーション-層剥離-還元を利用した触媒調製法が高活性かつ高選択的な触媒を得る優れた手法であることが示された。
  • 高橋 直樹, 今川 晴雄
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 90-101
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    窒素酸化物(NOx)吸蔵還元型自動車排ガス浄化用触媒は,リーンバーンエンジンから排出される一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)へと酸化し,これをバリウムやカリウム化合物からなるNOx吸蔵材に硝酸イオンとして吸蔵する。この硝酸塩は,エンジン制御系によって作り出される還元雰囲気において,その排気ガス中に含まれる水素,一酸化炭素または炭化水素などの還元剤の反応により分解され,NOxを放出する。放出されたNOxはNOx吸蔵還元型触媒上でさらに窒素へと還元されて無害化される。世界的な自動車排ガス規制の強化に対応するためには,NOx吸蔵還元型触媒の高活性と長寿命を確保する必要がある。NOx吸蔵還元型触媒は熱劣化による貴金属の粒成長,担体比表面積の低下,およびNOx吸蔵材と担体との固相反応などによって活性点数が低下し,失活する。また,排ガス中に含まれる硫黄化合物がNOx吸蔵材に吸蔵され,これを硫酸塩へと変化させる。硫酸塩に変化したNOx吸蔵材はNOx吸蔵能を失う。本論文では,NOx吸蔵還元型触媒の耐久性改善という課題を解決するための要素技術をまとめた。また,NOx吸蔵還元機能を有する触媒とアンモニア生成吸蔵およびNOx選択還元機能を有する触媒とを融合した新しいNOx浄化システムに関しても記した。
一般論文
  • Mohammad M. Zerafat, Shahab Ayatollahi, Ali A. Roosta
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 102-107
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    連続ガスリフトは最も普通に使われている人工採油法の一つである。高圧ガスを連続注入することによって,チュービング内の油カラムを軽くし,油増産に寄与する。ガス量の制限あるいはコンプレッサー能力の制限によって,ネットワーク内にある全坑井からすべて最適レートで油を生産することはできない。そこで,最適なガス量配分が必要になる。ガス量配分最適化は,機械的な制限を受ける変数であるガス注入レートを調整することによって,最大化を図る非線形問題である。さまざまな最適化手法が今まで適用されてきた。そのうち,大きなネットワークに対しては,遺伝子アルゴリズムが最も効率がよいとされている。本論文では,遺伝子アルゴリズムと比較するために,いろいろな手法を試した。その中でも,石油開発業界では新しい手法であるACO(Ant Colony Optimization)手法を,水攻水・産出水配分ネットワークの最適化手法として既に能力が認められている遺伝子アルゴリズムに替わるものとして,適用してみた。文献によると,遺伝子アルゴリズムもACO手法もガスリフトの配分最適化問題では,小さなネットワークで有効とされている。本論文では,ガスリフトへの遺伝子アルゴリズムとACO手法による最適化は,大規模ネットワークでも適用性があることが示された。結果は,文献にある類似の最適化計算結果と比較して,よい一致をみた。
  • 村本 知哉, 成相 健太郎, 大原 宏明, 鎌田 博之
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 108-113
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    ドデカン水蒸気改質反応におけるRu/CeO2/γ-Al2O3触媒の安定性を,触媒層に沿って複数のガスサンプリングポートを備えた固定床流通型の管型反応器を用いて評価した。寿命試験前後の触媒は,BET比表面積,炭素析出量測定を用いて分析した。触媒の長期安定性を調べた結果,Ru/CeO2/γ-Al2O3触媒は5000時間にわたり安定した性能を示し,ドデカンをほぼ完全に水素リッチのガスに改質できることを確認した。管型反応器による寿命評価と分析の結果,触媒の性能低下は炭素析出量の多い触媒層上流側から進行することが分かった。炭素析出により,触媒の活性サイト数が経時的に減少すると仮定して,触媒の劣化を速度論的に解析した。この結果より,ドデカンの水蒸気改質反応は,触媒表面に吸着した炭化水素の活性化を経て進行することが推察された。反応温度が低いと吸着した炭化水素の反応性が低いため,触媒表面での炭素化が進み易い。反応温度が高くなると,吸着した炭化水素の水蒸気による改質反応が炭素化に比べて優先的に進行するものと考えられる。
  • Hao Feng, Lin Zhu, Shijiu Jin, Yan Zhou, Zhoumo Zeng, Jingchang Zhuge
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 114-119
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,パイプライン漏洩を分布測定型光ファイバーで検知し,場所を特定し,警告するシステムについての原理を提案する。場所を特定する過程でよく起こる全体誤差に対応するために,油ガスパイプライン光ファイバー警告システムの偏光モデルが確立された。それは,シングルモードの光ファイバー複屈折の等価Jones行列に基づいている。そのモデルによると,全体誤差の理由は二つの信号の不一致である。それは,同じ振動源から光検出器で受信した信号が相関していないことを意味する。理論的モデルによって,偏光の向きを変える外部偏光制御器を使って解決する方法を提案する。この方法による問題解決および場所特定精度の改善が実験によって証明された。さらに,システム改善の理論的ガイダンスと光学的構造の調整は理論的モデルをもとに与えられる。
  • 荒木 貞夫, 日野 なおえ, 森 匠磨, 清水 岳弘, 日数谷 進
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 120-127
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    環境負荷低減の観点から,廃棄物やバイオマスから発酵させて得られるバイオガスを原料として水素を製造する技術の発展は重要である。ハニカム触媒は既存のペレット型などの触媒と比較して,高い単位体積あたりの幾何学的表面積,低い圧力損失などのメリットを有するため,バイオガスなどを利用する比較的小規模のプラントに適していると考えられる。まず,ニッケル触媒のハニカム担体としてコーディエライトを種々の酸化物から選定した。調製したハニカム触媒を用いて,模擬バイオガスの水蒸気改質反応,部分酸化反応,自己熱改質反応を行い,メタン転化率とガス成分に及ぼす温度の影響について検討を行った。水蒸気改質反応では,出口温度から計算される平衡転化率に達しなかった。反応速度が遅いことや,吸熱反応によって触媒層温度が低下し,ハニカム担体の低い伝熱のために外部からの熱供給が追いつかなかったことが原因と考えられる。一方,発熱反応を伴う部分酸化反応と自己熱改質反応では,約1000 K以下の領域で平衡転化率を,見かけ上,上回る性能が得られた。この原因は,触媒層温度が測定された出口温度よりも高くなったためと考察される。また,自己熱改質反応において,Steam/CH4(S/C),O2/CH4(O2/C)の水素濃度やメタン転化率への影響について検討を行った。これにより,S/C=2以上,O2/C=0.5の条件で最も高い水素濃度が得られた。
  • 銭 衛華, 平林 一男, 平沢 佐都子, 山田 滋, 坂田 浩, 石原 篤
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 3 号 p. 128-138
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    イソブテン,硫化水素および硫黄からのジ-t-ブチルポリスルフィドの合成反応を,骨格にAl,Ga,またはBを含むMFI型ゼオライトの固体酸触媒上で行い,それらの性能を液体アミン触媒であるジシクロヘキシルアミンと比較した。触媒は,MFI型ゼオライトにベーマイトバインダーを加えて成型して焼成し,プロトン化処理をして調製した。得られた生成物を,元素分析,蛍光X線分析計,HPLC,GPC,1H-NMRを用いて分析した。骨格にAlまたはGaを含む触媒は高活性で,特にGaを含む触媒では液体アミン触媒と同等以上のポリスルフィド収量が得られた。生成ポリスルフィドは硫黄架橋数1~9,平均架橋数4.2~4.7で,液体アミン触媒の場合とほぼ同等であった。これらの結果を基に反応経路を推定した。一方,Bを含む触媒では,主としてオクテン,チオール,およびモノスルフィドが生成するが硫黄は未反応で残り,ポリスルフィドはごくわずかしか生成せず,原料硫黄は未反応で残った。触媒のアンモニア昇温脱離の結果から,このポリスルフィド合成反応には,AlまたはGaを含む触媒が持つ強い酸点が有効で,強い酸点を持たないBを含む触媒は単体硫黄の開環を促進できずポリスルフィドが生成しないものと推論した。
ノート
  • 岡部 清美, 村田 和久, Mohammad Nurunnabi, 劉 彦勇
    原稿種別: ノート
    2009 年 52 巻 3 号 p. 139-142
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
    アルコキシド法によるRu-Al2O3触媒の調製段階において,多量のブタノールで希釈した蒸留水の添加量を変化させることにより,触媒の均質な細孔径を3~7 nmの範囲で変化させた。このようにして調製した10 wt%Ru-Al2O3触媒を用い,T=503 K,P=1 MPa,H2/CO=2/1,W/F=5~10 g-catal.h/molの反応条件下において,スラリー相でのFischer-Tropsch合成を行った。触媒のX線回折のピーク半値幅から求めたRu結晶子径は細孔径とともに増大した。触媒の細孔径の増大に伴って,メタン選択率が減少し,高級炭化水素への選択率が増加することが認められた。これらの選択率の細孔径依存性は,細孔内におけるスラリー溶媒および反応生成物の拡散速度によって説明され,Ru粒子径よりも触媒細孔径の重要性が示唆された。
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