Journal of the Japan Petroleum Institute
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52 巻, 5 号
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総合論文
  • 奥村 和
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 219-230
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    リン酸-酸化タングステン-酸化ニオブからなる酸化物触媒を,リン酸,シュウ酸ニオブ,タングステン酸アンモニウム水溶液を混合し,蒸発乾固体・焼成することによって調製した(Cat-A)。Cat-Aはフリーデル・クラフツ反応に高活性を示した。その触媒活性および再利用性は焼成温度に強く依存し,773 Kで焼成した場合に最も優れた触媒性能を示すことが分かった。構造と酸性質に関する種々の検討により,触媒調製時にニオブ原子を含んだケギン型ヘテロポリ酸(H4PNbW11O40)が生成し,これが773 Kで部分的に熱分解することにより高活性な触媒が形成されることが分かった。NH3-TPDにより酸性質を調べたところ,Cat-Aでは比較的強い新たな酸点が形成し,この酸点の量は触媒活性とよく対応した。H4PNbW11O40をあらかじめ合成し,これとNb2O5-WO3と混合し,773 Kで焼成した触媒はさらに高い活性を示した(Cat-B)。Cat-Bはさまざまなカルボン酸を使ったフリーデル・クラフツアシル化反応にも活性を示し,一週間にわたる流通式の連続反応も可能であった。ニオブを含むドーソン型ヘテロポリ酸(H9P2Nb3W15O62)を原料とし,これをシリカに担持した触媒(D-WNb/SiO2)では,活性および耐熱性がさらに向上することを見出した。特に,743 Kで焼成した試料では温水に対しても耐溶解性を示すことが分かった。IR,EXAFS,31P NMRの検討により,ヘテロポリ酸を担持した際にNb原子がドーソン型構造から外れ,欠損したヘテロポリ酸がシリカ上で形成しているものと考えられた。以上のようにニオブ原子を含むヘテロポリ酸を前駆体として使用することで,熱分解過程においてフリーデル・クラフツ反応に活性な触媒が形成されることが分かった。
一般論文
  • Shu-Tao Liao, Cheng-Lin Tsai
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 231-238
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    傾斜した坑壁を取り囲む岩石の弾塑性応答を解析する特殊な有限要素法による手法を提案する。特殊な三次元問題を二次元有限要素法で解く手法である。このモデルの唯一の仮定条件は,解析する領域に対して,岩石特性および遠く離れた地点の応力は坑井軸に沿って顕著に変化しない,というものである。この手法によって,三次元領域で傾斜井の解析をするとき,一般性を失うことなく,計算時間を大幅に減らすことができた。次に,完全塑性物質のDrucker-Prager降伏限界を有限要素法プログラムコードに組み入れて,加圧された坑壁周辺の塑性領域の伸展を模擬できるようにした。掘削泥水によってさまざまな段階の圧力を受ける垂直井,傾斜井,水平井の坑壁の降伏領域の広がりが調べられるようになり,坑壁を取り巻く岩石破壊の伸展と範囲について検討を行った。
  • 山崎 達也, 菊池 尚子, 加藤 雅裕, 岡田 佳枝, 吉川 卓志, 和田 守
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 239-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    Ni-MFIゼオライトを用いて,高い空間速度下でのエタノール転化反応に及ぼすNi添加効果を検討した。さらに,トウモロコシから生成された実バイオエタノールに対する反応性や失活に及ぼす水や微量不純物の影響を考察した。MFIへのNiの添加は芳香族化合物生成を強く抑制する効果を示し,純エタノールの反応ではC3およびC4オレフィンの生成選択性を大幅に向上させた。一方,バイオエタノールを反応物とすると,C3およびC4オレフィンの生成選択率は減少し,Niサイトの芳香族生成抑制効果がやや低下した。また,Ni添加の有無にかかわらずC3~C4オレフィン生成量が経時的に減少した。673 Kにおける反応では炭化水素以外の炭素種の表面堆積が認められ,バイオエタノール中の不純物の堆積が示された。Niの電子状態は純エタノールの反応後と異なっており,ニッケル硫酸塩あるいはNi2O3種の生成が触媒劣化にかかわっていることが示唆された。773 Kでの反応では,触媒表面に大量のフィラメント状の炭素が析出した。これらの要素が実バイオエタノールの反応におけるC3,C4オレフィン生成反応の特異的な失活を導いている可能性がある。
  • 合田 隆, 佐藤 光三
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 248-256
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    関数変換を用いたアンサンブルカルマンフィルターの適用手法を開発する。物理的制約条件を持つパラメーターがモデル変数に含まれている場合,フィルタリングの過程で条件を外れた値として評価されることがある。本研究では,0から1までの値域を持つ水/油の相対浸透率をモデル変数とし,シミュレーターで再現された1次元コア試験結果の同化により推定を試みる。従来の適用手法では,数回のフィルタリング後,負の相対浸透率値が求まり,次タイムステップの計算が行われなかった。効率的な解決策として,相対浸透率を関数変換した値でフィルタリングを行う手法を開発した。これにより,必ず正の値を求められただけでなく,精度よい推定が可能となった。また,推定する相対浸透率の不確実性は,飽和率によって時間に対する挙動が異なる点が認められたが,ブレークスルー時刻の前後において特に改善が進む傾向は全ての飽和率で見られた。観測回数を変化させた場合,アンサンブル平均に大きな相違は見られないが,分散は観測回数と反比例の関係を示すことが分かった。さらに,推定する変数の個数を変化させても,アンサンブルの平均値はほぼ一致し,類似した不確実性の改善挙動が見られた。
  • 合田 隆, 佐藤 光三
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 257-264
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    Constrained Interpolation Profile(CIP)法を適用した多孔質媒体内2相流動シミュレーション手法を開発する。有限差分法および格子差分と組み合わせたストリームライン法の2手法に対し,いずれも流動方程式の変形により,飽和率に関する双曲型方程式が導出され,IMPES法に組み込むことでCIP法が適用できる。適用に際しては,離散化された各点上に飽和率の値のみでならず,その空間勾配をモデル変数として加味する。空間勾配は飽和率方程式を空間微分することで得られる。これらの方程式は連立され,時間分離解法に基づき移流項と非移流項に分けられ計算される。それぞれCIPスキーム,有限差分法を用いて順に計算が実行される。数値実験の結果から,当該計算手法は一般に用いられる従来の解法に比べ,ショックフロント付近での数値拡散を抑えた高精度な解法であることが確認された。
  • Mohammed Matouq, 香田 忍, Toma Maricela, Alayed Omar, 田川 智彦
    原稿種別: 一般論文
    2009 年 52 巻 5 号 p. 265-269
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    ヨルダンのEl-Lajjunオイルシェールを溶剤抽出することを目的とし,20 kHzホーン型超音波発生装置を使用した場合と従来からの撹拌法の場合について,抽出効率を比較した。超音波の照射パラメーター(超音波の照射時間と出力)と,抽出操作のパラメーター(溶剤の種類とオイルシェールの粒径)が,オイルシェールから有機物(ビチューメン)を抽出する際に及ぼす影響について,それぞれ調べた。溶剤は7種類(テトラヒドロフラン,ベンゼン,四塩化炭素,クロロホルム,灯油,トルエン,アセトン,メタノール/アセトン/クロロホルム混合物)を使用した。溶剤としてテトラヒドロフランを用い,出力33 Wの超音波を10分間照射すると,90%のビチューメンを抽出することができた。抽出効率に大きな影響を与える要素は,溶剤の種類,超音波出力,超音波照射時間の3項目であり,粒子サイズの影響は小さい。テトラヒドロフランを用いた現在の実験条件下では,マグネチックスターラーを用いた従来の抽出方法と比べ,抽出時間は1/4に,抽出物回収率は3倍になった。
ノート
  • Alireza Bahadori, Hari B. Vuthaluru, Saeid Mokhatab
    原稿種別: ノート
    2009 年 52 巻 5 号 p. 270-274
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    生産および処理を通じて貯留層から天然ガスに水は密接に結びついており,輸送時における重大な関心事である。高硫黄分を含む天然ガス(サワーガス)の水分含有量も,天然ガスの生産,輸送,処理のための設備設計において重要なパラメーターである。本研究の目的は,40%程度の酸性ガス(CO2とH2S)を含むサワーガスの水分量の評価に対し,多数のパラメーターやより複雑で長い計算を含む現状のモデルより簡単で使い勝手の良い方法を開発することにある。新規に開発した方法は,1000~15,000 kPaの圧力範囲や15~120℃の温度に対して使用できる。あらゆる温度や圧力においても実験による測定をすることなく,サワーガス中の水含有量を迅速に調べるのに取扱いが容易な手法は,技術者や科学者にとっては計りしれない実用的な価値がある。特にガス処理技術者は,明解な計算で複雑な数式を全く含まない提案された手法がユーザーにとって親切であることに気付くであろう。計算結果を報告値と比較したところ,予想値と測定値では優れた一致を得ることができた。報告値からの標準偏差は3.5%であることが分かった。
  • 合田 隆, 佐藤 光三
    原稿種別: ノート
    2009 年 52 巻 5 号 p. 275-282
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    逐次型データ同化手法の一つであるアンサンブルカルマンフィルターの貯留層特性解析への適用可能性を議論する。既往研究において,坑井で観測される含水率データがモデル変数の修正に反映されない点が指摘されており,本研究では簡便な問題設定上で解決策を開発・提唱する。十分な開口幅の単一フラクチャーを含む均質な多孔質媒体を仮定,複素変数境界要素法でトレーサー試験を再現する。得られた結果を観測データとみなし,アンサンブルカルマンフィルターを用いた最適化分析によってフラクチャーの同定を行う。従来の適用手法では観測変数として流出するトレーサー濃度を用いるのが一般的であるが,初期アンサンブルによってトレーサー流出後のデータがフラクチャー位置の修正に反映されない区間が存在し,正確な同定が行われなかった。また,当該区間の存在しない初期アンサンブルの場合でも,観測データの対応性が悪く,正確な同定が行われないことがあった。そこで,累積トレーサー流出量に対応する時刻を観測変数とすることで,トレーサー流出後の全観測データを的確に同化させるとともに,観測データの対応性を改善し,初期アンサンブルに依存せず正確な同定を可能にした。
  • Siavash Ashoori, Ali Abedini, Hadi Saboorian, Khadijeh Qorbani Nashegh ...
    原稿種別: ノート
    2009 年 52 巻 5 号 p. 283-287
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    コロイド状アスファルテン粒子のトルエン─ヘプタン混合溶媒中での凝集速度の性質を適切な倍率の偏光顕微鏡を用い調べた。トルエン─ヘプタン混合溶媒中のアスファルテン濃度は1 g/l ~8 g/l とした。アスファルテンの凝集過程には二つの機構,拡散律速(DLA)と反応律速(RLA)が関与していた。これらの過程はアスファルテンの一定の濃度範囲で固有の特性と挙動を示した。アスファルテン濃度が限界ミセル濃度(CMC)より低い場合はDLA機構が優勢であったが,CMCより高い場合は初期の凝集段階ではRLA機構が観測され,その後,遷移状態を経てDLA機構に移った。アスファルテンのCMCは約3 g/l であった。
技術報告
  • 神應寺 厚志, 橋本 圭司, 古南 博, 寺田 幸夫, 伊藤 征司郎
    原稿種別: 技術報告
    2009 年 52 巻 5 号 p. 288-294
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    これまで研究を行ってきた管状反応器(TR)のせっけん製造への適用性を明確にするために,実際のせっけん製造に採用されている基本的条件(原料およびその配合比率)において,バッチ型反応器(BR)およびTRを用いてせっけんを作製した。また,一般に広く用いられている動物性油脂(牛脂)に代えて,植物性油脂(パーム油および米ぬか油)を使用したときの影響についても検討した。牛脂-ヤシ油,パーム油-ヤシ油,米ぬか油-ヤシ油のいずれの場合も,TRを用いることによりケン化反応速度が大きくなり,ケン化反応が終了する時間はBRを用いたときの1/4に短縮された。TRを使用して得られた各種せっけんについて主要7項目の評価を行い,市販品と比較した。TRを用いて作製したせっけんは,主要7項目の全ての規格に合格し,市販品と同等であることが分かった。以上のことから,実用に供されている複数の油脂およびエタノールが共存するせっけん製造条件においてもTRが大変有効であることが明らかになった。
レター
  • 佐藤 勝俊, 永岡 勝俊, 西口 宏泰, 瀧田 祐作
    原稿種別: レター
    2009 年 52 巻 5 号 p. 295-296
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/01
    ジャーナル フリー
    ブタンの酸化的改質反応を常温で駆動することができる新しい触媒の開発を行った。Niを担持した希土類酸化物触媒について検討したところ,873 Kで還元処理したNi/PrO1.83のみが反応を常温で駆動可能であった。昇温還元法(TPR)とXRDによる分析から,Ni/ PrO1.83はH2還元によって担体がPrO1.54まで還元される一方,常温で容易にPrO1.83へと酸化されることが分かった。また,還元処理後のNi/PrO1.83にO2/Arの混合ガスを供給し触媒層の温度変化を測定したところ,供給開始と同時に触媒層が急激に発熱し,酸化的改質反応の反応開始温度まで到達していることが明らかとなった。以上の結果よりNi/PrO1.83では,還元状態の触媒の急激な酸化とそれに伴う発熱が駆動力となることで,常温であっても酸化的改質反応を駆動することを可能にしていると結論した。
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