リン酸-酸化タングステン-酸化ニオブからなる酸化物触媒を,リン酸,シュウ酸ニオブ,タングステン酸アンモニウム水溶液を混合し,蒸発乾固体・焼成することによって調製した(
Cat-A)。
Cat-Aはフリーデル・クラフツ反応に高活性を示した。その触媒活性および再利用性は焼成温度に強く依存し,773 Kで焼成した場合に最も優れた触媒性能を示すことが分かった。構造と酸性質に関する種々の検討により,触媒調製時にニオブ原子を含んだケギン型ヘテロポリ酸(H
4PNbW
11O
40)が生成し,これが773 Kで部分的に熱分解することにより高活性な触媒が形成されることが分かった。NH
3-TPDにより酸性質を調べたところ,
Cat-Aでは比較的強い新たな酸点が形成し,この酸点の量は触媒活性とよく対応した。H
4PNbW
11O
40をあらかじめ合成し,これとNb
2O
5-WO
3と混合し,773 Kで焼成した触媒はさらに高い活性を示した(
Cat-B)。
Cat-Bはさまざまなカルボン酸を使ったフリーデル・クラフツアシル化反応にも活性を示し,一週間にわたる流通式の連続反応も可能であった。ニオブを含むドーソン型ヘテロポリ酸(H
9P
2Nb
3W
15O
62)を原料とし,これをシリカに担持した触媒(
D-WNb/SiO2)では,活性および耐熱性がさらに向上することを見出した。特に,743 Kで焼成した試料では温水に対しても耐溶解性を示すことが分かった。IR,EXAFS,
31P NMRの検討により,ヘテロポリ酸を担持した際にNb原子がドーソン型構造から外れ,欠損したヘテロポリ酸がシリカ上で形成しているものと考えられた。以上のようにニオブ原子を含むヘテロポリ酸を前駆体として使用することで,熱分解過程においてフリーデル・クラフツ反応に活性な触媒が形成されることが分かった。
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