Journal of the Japan Petroleum Institute
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53 巻, 3 号
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総合論文
  • 中山 康, 川合 浩二, 藤田 照典
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 111-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    FI触媒として知られる,オレフィン重合用前周期遷移金属ビス(フェノキシイミン)およびビス(フェノキシケチミン)錯体について紹介する。FI触媒は非対称,電子吸引かつ反応性の[O,N]キレート配位子(FI配位子)を持つため,ユニークな触媒性能を示す。さらに,FI配位子は構造設計の自由度が高い。したがって,FI触媒は適切な助触媒の選択によって,多種多様なオレフィン系材料(FIポリマー)が創製可能である。特徴あるFIポリマーの例として,片末端不飽和ポリエチレン,直鎖状超高分子量ポリエチレン,多峰性分子量分布制御ポリエチレン,エチレン/極性モノマー共重合体,高融点シンジオタクチック/アイソタクチックポリプロピレン,末端官能基化オレフィンポリマー,エチレン/プロピレン/高級α-オレフィン系ブロック共重合体,非凝集 · 超微粒ポリエチレンなどが挙げられる。これらのFIポリマーのいくつかは,その材料特性を生かし,工業化のステージに入りつつある。
一般論文
  • 岡崎 慎司, 笠井 尚哉, 山下 彩
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 130-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    化学プラントの水素を使用する設備や燃料電池のような水素利用機器等の水素漏えい位置を可視化検知する技術として,水素ガスと常温で反応して色が半透明状態から青色状態に変化する白金担持酸化タングステン薄膜(Pt/WO3)を利用した手法に着目し,その基礎特性を調べた。ガラス基板上にゾルゲル法によって形成させたPt/WO3薄膜に様々なリーク流量で水素ガスを吹き付け,画像処理によって呈色した部分を抽出したところ,リーク流量の増大に応じて呈色面積が増加した。また,呈色面積の時間変化すなわち応答速度は良好で,約30秒後には定常状態に達した。ただし,呈色面積とリーク流量との関係および応答性は基板の配置および水素ガスを吹き付ける方向に大きく依存した。
  • はばき 広顕, 田端 修, 川崎 順二郎, 江頭 竜一
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 135-143
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    発酵溶液からのバイオエタノールの分離 · 濃縮を目的とし,選定した溶媒を用いてエタノールの液液分配平衡を測定した。まず,製品がバイオ燃料であることを考慮し溶媒選択の方針を示した。m-キシレンを主溶媒とし,補溶媒をこれに混合することによりエタノールの溶解度を向上させることとした。カプリン酸,1-ヘキサノール,2-エチルヘキサノールを補溶媒として4成分系液液平衡を測定し,エタノールの抽出性能を評価した。主溶媒のm-キシレンのみを用いた3成分系液液平衡の場合,エタノールの分配係数は小さく,水に対するエタノールの選択度は高かった。補溶媒を使用した場合全てにおいて分配係数は向上したが,カプリン酸を用いた場合は分離の選択度が非常に低下した。1-ヘキサノールおよび2-エチルヘキサノールを用いた場合の分離の選択度には大きな違いはなかったが,1-ヘキサノールを用いた場合の方が2-エチルヘキサノールを用いた場合に比べて2相領域が小さく,2-エチルヘキサノールがより適した補溶媒であった。次に,2-エチルヘキサノールの濃度によるエタノールの分配への影響を測定した。少量の2-エチルヘキサノールの添加により分配係数は向上し,かつ分離の選択度はm-キシレンの場合のものと同等であった。また,一般および改定UNIFAC法を用いて測定した液液平衡を推定した。両方法は十分に液液平衡を満足に予測することができたが,改定UNIFAC法がより良い予測をした。しかし,濃度の低い範囲における油相中の水濃度の推算は難しく,実測値より大きく推算した。
  • 今野 克哉, 小林 基樹, 尾上 薫, 山口 達明
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 144-151
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    誘電体バリア放電プラズマ法(DBD)によりメタンの転換反応を行い,先に報告したマイクロ波プラズマ法(MW)と比較した。印加電圧(Pw),ガス圧力(P0),ガス流量(F0)は電子と分子の衝突などに影響を及ぼすため,解離するラジカル種が変化すると予想される。Pwを変化させた結果,DBDでのメタン転化率(XCH4)は9.6%とMWでのXCH4(93.8%)に比べ低いことが明らかとなった。DBDでは増炭反応が進行し,生成物の6割がエタンであり,他にプロパン,メチルプロパン,ブタンが生成する。一方,MWでは脱水素反応が進行し,生成物の9割がアセチレンである。P0を変化させた結果,DBDでのXCH4はMWでのXCH4よりも低いことが分かった。DBDではプロパンが増大し,101.4 kPaでブタンが生成した。MWではほとんどがアセチレンであった。F0を変化させた結果,DBDのXCH4は減少した。MWのXCH4は0.80 mmol/minまで増加し,1.26 mmol/min以降で一定となった。しかしながらF0の変化は選択率にはほとんど影響しない。DBDでのメタン転換の特徴は大気圧のパルスプラズマに起因すると考えられる。DBDでのメタンの反応過程を推定するため,エタン,エチレン,エタン/水素混合ガスを原料に用いた。原料ガスによらずメタン,アセチレン,プロパン,ブタンが生成した。エタンを原料ガスとした場合,エチレンの生成が確認された。また,エチレンを原料ガスとした場合,エタンが確認された。メタンの反応過程は次のように考えられる。まず,メタンからエタンが生成し,次にエタンからプロパンを生成する。ブタンはプロパンから生成するC3H7とCH3のカップリングによるものとエタンから解離してできたC2H5どうしのカップリングによるものが考えられる。一方で,生成物の分解反応や脱水素反応も進行する。
  • 劉 彦勇, 村田 和久, 稲葉 仁, 高原 功, 岡部 清美
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アンモニア水共沈殿-沸騰分解法でCu/Ce1−xZrxO2を得て,含浸法でCsをCu/Ce1−xZrxO2に導入することによってCsCu/Ce1−xZrxO2触媒を調製した。調製したCsCu/Ce1−xZrxO2触媒(Cs: 1 wt%; Cu: 20 wt%)を用い,T = 573 K,P = 3 MPa,H2/CO = 2/1,GHSV = 2400 h−1の反応条件において,高圧固定床流通式反応系で合成ガスから混合アルコールの合成を行った。CeO2系化合物は還元性を有するため,CsCu/CeO2触媒は工業触媒CsCu/ZnOより高いCO転化率を示した。CeO2系化合物は酸素貯蔵能力を持つため,CsCu/CeO2はCsCu/ZnOに比べて高級アルコール(C2 +OH)を多く生成した。Zr4 +イオンをCeO2格子に導入することによって,セリア系化合物は還元性と酸素貯蔵能力が向上したため,CsCu/Ce0.8Zr0.2O2はCsCu/CeO2より高い高級アルコールのSTY(空時収率)を得た。CsCu/Ce0.8Zr0.2O2触媒を用いた反応において,反応温度の上昇に伴ってCO転化率は向上したが,メタノールへの選択率は低下した。一方,573 KにおいてCsCu/Ce0.8Zr0.2O2触媒は最も高い高級アルコールへの選択率を示した。さらに,CsCu/Ce0.8Zr0.2O2触媒は高い反応圧力において,CO転化率や高級アルコールへの選択率が向上したことも分かった。
  • Young-Son Choe, Sang-Wook Park, Dae-Won Park, Kwang-Joong Oh, Seong-So ...
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    テトラオルトシリケート,3-クロロプロピルトリエトキシシラン,セチルトリメチルアンモニウムブロマイドから得たCP-MS41にトリエチルアミンを固定化することでTEA-CP-MS41触媒を調製した。バッチ式反応器を用い,種々の溶媒中でのTEA-CP-MS41触媒による二酸化炭素とフェニルグリシジルエーテル(PGE)との反応について調べた。二酸化炭素とPGEとの反応は,(1)PGEがTEA-CP-MS41(QX)に吸着し,中間体種(C1)を形成する可逆ステップ,(2)C1と二酸化炭素がQX上で反応して5員環カーボネートを形成する非可逆ステップより進行するものと推定した。333~363 Kで2 kmol/m3のPGE溶液へ101.3 kPaの二酸化炭素の吸収速度を測定し,疑似的な一次反応式により反応速度論解析を行った。N,N,-ジメチルアセトアミド,N-メチル-2-ピロリジノン,ジメチルスルホキシド溶媒を用い,溶媒の極性と反応速度定数との相関について調べた。
  • Jong Beom Kim, Dong-Hwa Seol, Ho Kyong Shon, Geon-Joong Kim, Jong-Ho K ...
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    染料廃水処理汚泥の減量化と光触媒に高活性を示すチタニア粒子の調製を目的とし,塩化チタンと硫酸チタンにより染料廃水を処理して得られるチタン含有凝集汚泥からチタニアナノ粒子の調製について検討した。塩化チタンと硫酸チタンを共凝固剤として染料廃水を処理すると染料廃水から有機物77%,窒素76%,リン95%が凝集沈殿でき,現在使用している廃水処理剤代替法として有効であることが分かった。塩化チタンと硫酸チタンそれぞれ単独で染料廃水を処理し,600℃で焼成することで酸化チタン粒子(以下,DCT,DSTと示す)を得た。X線回折法と電子顕微鏡観察およびエネルギー分散型蛍光X線分析によりDCTとDSTはともに20 nmのアナターゼ構造を有する二酸化チタンで,不純物として炭素,シリコン,そしてナトリウムを含んでいることが分かった。また,窒素吸着法によりDCTとDSTはそれぞれ71および69 m2/gの表面積を有することが分かった。DCTとDSTはともにUV照射によりアセトアルデヒドを完全に除去できることを確認し,光触媒として有望であることが分かった。
  • Kye-Sung Cho, Hye-Ryun Seo, Sung-Ho Kim, Yong-Kul Lee
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    昇温還元法によりシリカおよびSBA-15に担持したリン化ニッケル触媒(Ni2P/SiO2およびNi2P/SBA-15)を調製し,触媒のキャラクタリゼーションと4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの脱硫活性について調べた。窒素吸着法により,Ni2P/SiO2およびNi2P/SBA-15の表面積はそれぞれ127および283 m2 · g−1であること,EXAFS法によりリン化ニッケルはNi2P相を形成していることが分かった。また,TEM分析によりNi2Pの平均粒子サイズはNi2P/SiO2およびNi2P/SBA-15でそれぞれ20および5 nmであること,Ni2P/SBA-15ではNi2P粒子がSBA-15のメソ細孔内と外表面に存在することを明らかにした。4,6-ジベンゾチオフェン(500 ppm),ジメチルジベンゾチオフェン(1000 ppm),キノリン(200 ppm),そしてテトラリン(1%)を含むトリデカン溶液を,三相固定床反応器により613 K,3.1 MPaでリン化ニッケル触媒の脱硫活性を調べた。Ni2P/SBA-15は99%の高い脱硫活性を示したが,Ni2P/SiO2の活性は54%であった。Ni2P/SBA-15では高表面積なSBA-15に担持された高分散Ni2P粒子が高い脱硫活性を示すものと考察した。
  • 吉川 琢也, Duangkamol Na-Ranong, 多湖 輝興, 増田 隆夫
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 178-183
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    酸化鉄複合触媒(ZrO2–Al2O3–FeOx触媒)を用いて,植物バイオマス由来芳香族を有用芳香族へ転換するためにその触媒活性について検討した。リグニン構成物質関連芳香族化合物として,2環芳香族化合物(ジフェニルエーテル,ジフェニルメタン,2-ベンジルオキシフェノール),および単環芳香族化合物(グアヤコール,アセトフェノン,1-フェニル-1-プロパノール)を原料にZrO2–Al2O3–FeOx触媒を用いて接触分解を行った。反応実験は常圧の固定床流通式反応器を用いて行い,反応温度773 Kとした。2環芳香族化合物を原料とした実験では,ジフェニルエーテルやジフェニルメタンは分解されず,2-ベンジルオキシフェノールは熱分解の後,ZrO2–Al2O3–FeOx触媒上での反応によりトルエンとフェノールが生成した。単環芳香族化合物を原料とした実験では,グアヤコールとアセトフェノンからフェノール(54 C-mol%)とベンゼン(29 C-mol%)がそれぞれ選択的に生成した。その際,メトキシ基とカルボニル基の酸化分解により主にCO2が生成したが,1-フェニル-1-プロパノールでは,主に脂肪族水酸基の脱水反応が起こり,1-フェニル-1-プロペンが生成した。したがって,本触媒は,芳香環どうしのアルキルエーテル結合,および芳香環に結合するメトキシ基とカルボニル基の分解に有効であることが分かった。
  • Dong-Keun Lee, Byeong-Kweon Song, Su-Eon Jeong, Dul-Sun Kim, Tae-Han K ...
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 184-190
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1 wt% Pt/Al2O3触媒を用い湿式酸化によるフェノール除去を行った。バッチ式反応器による処理では初期濃度1000 mg/lのフェノールを60分でほとんど全て二酸化炭素と水に酸化することができたが,Pt/Al2O3触媒の劣化が起こった。種々のキャラクタリゼーションにより,活性の劣化は触媒表面への炭素質の堆積が原因であることを示した。TEM観察では,劣化したPt/Al2O3触媒にはフィラメント状の堆積物が白金粒子と結合している像や,白金粒子が堆積物に完全に埋まっている像が示された。XPS分析では炭素質堆積物として,湿式酸化の進行に伴い増大するもの(C1),極大をもつもの(C2,C3),そしてC2とC3が極大値を示す時から観測されその後増加するもの(C4)などの4種類が存在すること,また反応中にC2とC3の炭素質堆積物がC4へと構造変化することが示された。TEM,EDX,XPSおよびTPO分析から,炭素質堆積は白金上に存在するものとアルミナ上の二種類存在し,白金粒子上の炭素質堆積物は担体上に移動することが示された。423 K,1.4 MPaで駆動するエアーリフト管を備えた連続流動床反応器による湿式酸化反応実験から,空気処理によりPt/Al2O3触媒上の炭素質堆積物が除かれ,活性が安定することが示された。
  • 小俣 光司, 小林 征志郎, 堀口 純平, 山崎 裕一郎, 板橋 大輔, 中西 貴之, 山田 宗慶
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    メタンの高圧酸化的改質において,完全酸化で生じるCO2を抑制して高いCO選択性を達成するためにK−Ni/α-Al2O3触媒の調製条件を最適化した。調製条件のうち重要と考えられるγ-Al2O3の焼成温度,NiO, Kの担持量を最適化操作の対象因子とした。各因子に3水準を割り当て,L9直交表を用いる実験計画法により調製条件を決定した。触媒は含浸法でNiを先に担持し,逐次的にKを担持した。L9触媒の活性は1 MPa,650℃で測定した。このL9触媒の実験結果から得られる調製条件とCO選択率の関係をラジアル基底関数ネットワーク(RBFN)を用いて解析することで,触媒のCO選択率が触媒調製条件の関数として表現された。RBFN上で最高CO選択率を与える調製条件を,あらゆる調製条件の組合せを用いてグリッドサーチした結果,1195℃焼成後のα-Al2O3に13 wt% K−14 wt% NiOを担持した触媒が最適と推定された。L9触媒における表面NiOの分布状態を,EPMAで観察したNi分布のフラクタル次元を用いて定量化し,またXRDならびにBET表面積を測定した。CO選択率と同様に,フラクタル次元,NiO結晶パラメーター,表面積各々と触媒調製条件との間の関係をRBFNにより決定し,調製条件のグリッドに対する各々の値を推定した。これらのグリッドデータの間の関係を多変量解析で解析した結果,CO選択率はフラクタル次元とNiO結晶パラメーターの線形結合により表現できることが示された。さらに,多変量解析によりフラクタル次元がNiO結晶の回折角の一次式で表現されること,この回折角にはK担持量の影響が大きいことが示された。以上より,K添加がNiO結晶にゆがみを与え,これによってNiOの分布状態が変化し,最終的にCO選択率に影響している可能性が示唆された。
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