メタンの高圧酸化的改質において,完全酸化で生じるCO
2を抑制して高いCO選択性を達成するためにK−Ni/
α-Al
2O
3触媒の調製条件を最適化した。調製条件のうち重要と考えられる
γ-Al
2O
3の焼成温度,NiO, Kの担持量を最適化操作の対象因子とした。各因子に3水準を割り当て,L
9直交表を用いる実験計画法により調製条件を決定した。触媒は含浸法でNiを先に担持し,逐次的にKを担持した。L
9触媒の活性は1 MPa,650℃で測定した。このL
9触媒の実験結果から得られる調製条件とCO選択率の関係をラジアル基底関数ネットワーク(RBFN)を用いて解析することで,触媒のCO選択率が触媒調製条件の関数として表現された。RBFN上で最高CO選択率を与える調製条件を,あらゆる調製条件の組合せを用いてグリッドサーチした結果,1195℃焼成後の
α-Al
2O
3に13 wt% K−14 wt% NiOを担持した触媒が最適と推定された。L
9触媒における表面NiOの分布状態を,EPMAで観察したNi分布のフラクタル次元を用いて定量化し,またXRDならびにBET表面積を測定した。CO選択率と同様に,フラクタル次元,NiO結晶パラメーター,表面積各々と触媒調製条件との間の関係をRBFNにより決定し,調製条件のグリッドに対する各々の値を推定した。これらのグリッドデータの間の関係を多変量解析で解析した結果,CO選択率はフラクタル次元とNiO結晶パラメーターの線形結合により表現できることが示された。さらに,多変量解析によりフラクタル次元がNiO結晶の回折角の一次式で表現されること,この回折角にはK担持量の影響が大きいことが示された。以上より,K添加がNiO結晶にゆがみを与え,これによってNiOの分布状態が変化し,最終的にCO選択率に影響している可能性が示唆された。
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