Journal of the Japan Petroleum Institute
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53 巻, 4 号
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総合論文
  • 辻村 拓
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 4 号 p. 199-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    ディーゼルエンジンにおいて,排気性状だけでなく燃料消費率の低減を果たすことは今後の研究開発において必須の課題である。特に,排気温度が低くNOx浄化触媒の活性が得られない低・中負荷運転域において燃費の悪化なくクリーンディーゼル燃焼を実現することは極めて重要である。本研究では,先進的エンジン要素技術である可変動弁システム,超高圧燃料噴射システム等を単気筒試験エンジンに搭載し,先進的技術を用いた新たな燃焼法の探求により燃焼改善を果たすとともに,先進的技術により改善された燃焼状態に対する燃料性状の影響を明確にすることで,燃焼技術と燃料技術の双方によるクリーン燃焼運転領域の拡大を目指した。ここではクリーン燃焼の閾値(いきち)をNOx<0.2 g/kWh,Soot<0.02 g/kWhと定めた結果,大量EGR適用下では低セタン価燃料では予混合期間を長期化してSootを低減し,また市販軽油(JIS2号)相当の着火性でも揮発性を高めることで燃料の蒸発・混合を促進してSootを低減することを見出した。また,可変動弁システムや超高圧噴射を適用した燃焼においても,燃料着火性(セタン価)および芳香族炭化水素が排気性状に及ぼす影響度が高く現れた。以上より本研究で検討した範囲内では,低セタン価・アロマフリーが次世代エンジンに求められる燃料性状であると結論づけられた。
一般論文
  • 大勝 靖一, 桜井 隆, 佐藤 琢磨
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 4 号 p. 213-221
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    高酸化防止性能および食品安全性を有するプラスチック食品包装材製造の可能性を探る目的で,フラボノイド類の酸化防止活性(光酸化防止活性を含む)を基礎的に,かつ動力学的に検討した。二つの芳香族環をもつカルコンは,その後続の代謝過程での閉環によりもう一つの環構造を得てフラボン(ナリンゲニン)に変化するが,このときその酸化防止活性は著しく低下する。しかし,さらなる代謝の進行につれて,ナリンゲニンは種々のフラボノイド類へ変化し,徐々にカルコンに匹敵し,最終的にはそれより高い酸化防止活性を獲得する。すなわち,植物は再び向上した酸化防止,特に光酸化防止活性を得ることができる。一般に,フラボノイドは植物中に1~10 mmol/dm3の濃度で存在する。代謝物の最も高い酸化防止活性を持つケルセチンは,0.5 mmol/dm3の濃度において有害なUVからほとんど完全に植物を保護することが分かった。チロシンまたはフェニルアラニンからフラボノイドへの複雑な代謝過程は,一部植物がUVの損傷を受けないで安全に光合成を行うために必要なのであろう。さらに,そのようなフラボノイドは,石油化学から作られる食品包装材における生体への安全性の安定化に有用であることが期待される。
  • Mohammad Nurunnabi, 村田 和久, 岡部 清美, 宮澤 朋久, 花岡 寿明, 坂西 欣也
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 4 号 p. 222-231
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    マンガンの濃度を変えて調製した一連のRu/Mn/Al2O3触媒のキャラクタリゼーションおよび流通式撹拌反応装置でのFischer-Tropsch反応試験を行った。Ru/Al2O3およびRu/MnOは493 K,2 MPaの条件下で低い活性しか示さず,顕著な活性劣化が確認された。一方,Ru/Mn/Al2O3において,マンガンの少量添加(Mn/Al=1/19)によるFischer-Tropsch合成活性の向上が見られた。反応圧を1から6 MPaまで変化させ,圧力依存性を調べたところ,Ru/Mn/Al2O3触媒は4および6 MPaにおいて高いCO転化率と活性の安定性を示し,CO転化率は約95%となった。BET比表面積,BJH細孔径分布,XRD,TPR,TEMおよびXPSによる触媒の各種キャラクタリゼーションを行った。キャラクタリゼーションの結果,Ru/Mn/Al2O3へのアルミニウムに適した比率でのマンガンの添加は金属ルテニウム活性種の濃度を向上させ,触媒表面上で生成した塩化マンガン に被覆されることが分かった。
  • Dung Van Vu, 廣田 雄一朗, 西山 憲和, 江頭 靖幸, 上山 惟一
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 4 号 p. 232-238
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    H-ZSM-5ゼオライトを種々の濃度のリン酸水溶液に浸漬し乾燥させたリン酸修飾H-ZSM-5(P-HZSM-5),およびこれを水で洗浄した触媒を調製した。生成物のP/SiおよびSi/AlをEDXにて測定した。水で洗浄したP-HZSM-5のSi/Al比は,リン酸水溶液の濃度の増加とともに増加したことから,リン酸処理による脱アルミが起こったものと考えられる。洗浄後もリン種はゼオライト内に残存し,P/Si比はリン酸水溶液の濃度の増加とともに増加した。リン酸種はZSM-5細孔表面に強い相互作用で結合しているものと思われる。本触媒をmethanol-to-olefin反応に用いたところ,メタノールの転化率100%の条件で,57%以上の高いプロピレン選択性を示した。同時に,触媒の安定性も向上した。アンモニアTPD測定により,H-ZSM-5の強酸点の酸量がリン酸処理によって減少することが分かった。その結果,芳香族炭化水素およびコークの生成が抑制され,高い低級オレフィン選択性および触媒の優れた安定性が得られたものと思われる。
  • 伊野 庸介, 江塚 幸司, 大嶋 正明, 黒川 秀樹, 三浦 弘
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 4 号 p. 239-245
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    COを含む低品位水素を利用した有機ハイドライド法の実現に向けて,触媒開発を試みた。水素源として低品位水素が使用可能であれば,水素の精製と貯蔵を同時に行うことができる。本研究では,CO混合水素を用いたナフタレン水素化反応における触媒担体の影響について調査を行った。触媒には担持Pd触媒を用い,担体にはゾル-ゲル法により調製したTiO2,Al2O3,およびTiO2含有率の異なるTiO2–Al2O3を使用した。純水素を用いたナフタレン水素化反応においてはTiO2含有率50~80 wt%のPd/TiO2–Al2O3が高活性を示した。CO混合水素を用いた場合ではTiO2含有率80 wt%のPd/TiO2–Al2O3が高活性を示し,純水素下よりもCO存在下で,担体の複合化による影響が顕著に現れた。COプローブFTIRによるIRスペクトルの波形分離,および昇温脱離測定結果から,配位不飽和度の高いエッジやコーナー,欠陥サイトに吸着したCOの面積割合がTiO2含有率の増加に伴い増加し,これらのサイトに吸着したCOは低温で脱離しやすいことが分かった。このことから,これらの配位不飽和度の高いサイトがCO存在下ナフタレン水素化反応で活性に寄与していると考察した。
ノート
  • 松井 寛人, 安藤 俊介, 倉田 武夫
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 4 号 p. 246-250
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    α,β-不飽和カルボニル化合物のエポキシ化は有機合成において重要な反応の一つである。我々は,代表的なアパタイトであるカルシウムヒドロキシアパタイト[HAp,(Ca10(PO4)6(OH)2)]のPO4部にVO4を導入したカルシウムバナジン酸アパタイト(VAp)を調製し,固体塩基触媒とした。本研究では,近年グリーンケミストリーの観点から注目されている過酸化水素を酸化剤とし,調製したカルシウムバナジン酸アパタイト(VAp)を用い,ヘキサンおよび水溶媒中でのα,β-不飽和カルボニル化合物のエポキシ化を検討し,収率良くエポキシドを得ることができた。本研究のエポキシ化は,ヘキサン溶媒中において最も収率が高かった。水溶媒中では水と基質との混合を促進する必要があり,界面活性剤の添加による影響,さらにVApの再生についても検討した。
  • 矢津 一正, 松村 明光, 佐藤 信也
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    ナフサ/酢酸二相系中での硫酸存在下におけるH2O2によるナフサの酸化脱硫について検討した。用いたすべての有機硫黄化合物は,酢酸中において硫酸存在下,酢酸とH2O2から効果的に生成する過酢酸により酸化された。酸化反応性の順序は,スルフィド類,ジスルフィド類>ベンゾチオフェン類>チオフェン類であった。有機二相系中において,オクタン中の有機硫黄化合物は,硫酸存在下,酢酸–H2O2により同様に酸化された。酸化反応は酢酸相中で進行し,酸化生成物のほとんどがそこに留まることにより,オクタン相からの硫黄化合物の連続的な除去が達成された。ナフサ中の硫黄分はこの酸化的処理により効果的に削減され,シリカゲル吸着処理後の硫黄分は0.5 mass ppm以下まで低減された。さらに,水素化脱硫はナフサの酸化脱硫の前処理として効果的であり,硫黄分は0.1 mass ppm以下まで低減された。
技術報告
  • 佐藤 信也, 松村 明光
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 53 巻 4 号 p. 256-259
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/01
    ジャーナル フリー
    重質油の溶剤脱れきでは,プロパンからヘプタンまでのアルカンが溶剤としての実績があり,これらの中ではマルテンの溶解力はプロパンが最も小さく,ヘプタンが最も大きい。アルカン以外ではエチルエーテルも有効な溶剤としての報告があり,溶解力はヘプタンよりやや大きい。近年,代替燃料として注目されているジメチルエーテル(DME)はエーテル類の1種であることから,ある程度の溶解力があると予想される。本報告ではDMEの脱れき効果を確認するため,アラビアンライト減圧残油成分(AL-VR)のDMEによる脱れきをDME/AL-VR=10~60の範囲で行い,ペンタンを用いた従来法による脱れきと比較した。その結果,DME/AL-VR重量比39以上ではマルテンとアスファルテンの回収率,および回収されたマルテン,アスファルテンのH/C原子比,水素分布,炭素芳香族性ともにほぼ等しくなった。
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