Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
53 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 杉 義弘
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 5 号 p. 263-275
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    ビフェニルおよびナフタレンのアルキル化におけるゼオライトの選択性を例に,形状選択性の発現機構を考察した。これらの反応では,最も小さい分子径を有し,形状選択性の指標である4,4'-ジアルキルビフェニル(4,4'-DABP)および2,6-ジアルキルナフタレン(2,6-DAN)の選択率は,ゼオライトの細孔構造およびアルキル化剤のかさ高さに支配される。ビフェニルのイソプロピル化では,一次元ストレート細孔を有する12員環ゼオライトMOR,AFIおよび14員環ゼオライトCFIのみが高い4,4'-ジイソプロピルビフェニル(4,4'-DIPB)選択率を与えるが,ケージ型細孔を有する12員環ゼオライトATS,IFR,14員環ゼオライトDON,SFH,および3次元ゼオライトFAU,BEA,CONの4,4'-DIPB選択率は低かった。これらの差は,細孔内においてかさ高い異性体を生成する遷移状態が規制されることに基づくと考えられる。すなわち,MOR等のゼオライトでは4,4'-DIPB以外の遷移状態が規制されるが,そのほかのゼオライトでは立体規制が十分行われないので,かさ高い異性体の生成が優先され,形状選択性は発現しにくい。この際,反応は,速度論的支配,または熱力学的支配を受ける。しかし,アルキル化剤を変え,かさ高い置換基を導入すると,MOR以外のゼオライトでも4,4'-ジアルキルビフェニルの選択率が向上した。このことは,置換基が大きくなると大きい細孔内でもかさ高い異性体の生成が抑制されると考えられる。
    ナフタレンのアルキル化においても,ゼオライト細孔およびアルキル化剤により形状選択性の指標であるα,β-および2,6-DAN選択率が変化した。イソプロピル化においてMORは高い選択率でβ,β-および2,6-DIPNを生成したが,他のゼオライトではβ,β-および2,6-DIPN選択率が低かった。一方,かさ高いアルキル化剤を使用するといずれのゼオライトでもα,β-選択率が低下し,β,β-および2,6-DAN選択率が高くなった。この際,細孔径が大きい3次元ゼオライトFAU,BEAおよびCONによるt-ブチル化では,β,β-ジ-t-ブチルビフェニル(β,β-DTBN)の選択率はほぼ100%であったが,2,6-DTBN選択率は50~60%程度であることから,2,6-/2,7-体の差を認識できないことが明らかになった。
    以上の結果は,ビフェニル,ナフタレンン等の多環芳香族炭化水素のアルキル化におけるゼオライトの形状選択性発現が,ゼオライト細孔内における立体規制に支配されることを示していると結論される。
一般論文
  • 中村 秀夫, 田中 奈穂子, 松橋 博美
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 5 号 p. 276-282
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    無水フタル酸によるアニソールのフリーデル・クラフツ型アシル化反応を,触媒学会提供のジルコニアゲル(JRC-ZRO-2,JRO-ZRO-3,JRC-ZRO-4,JRO-ZRO-5)を用いて,平衡吸着法と混練法で調製した硫酸化ジルコニアで行った。生成物は2カ所でアシル化が起こったC6H4[CO(C6H4OCH3)]2だけで,片方だけのアシル化で生成するC6H4[CO(C6H4OCH3)]COOHは見られなかった。溶媒に溶解したAlCl3では,片方だけのアシル化生成物が大量に得られた。フタル酸の一方だけにエステル化された生成物がエタノールによる後処理で生成した。反応温度や時間は,エステルの収量にあまり影響しなかった。2カ所でアシル化された生成物は,無水フタル酸の一方のカルボニル基への2個のアニソールの付加と,それに続く超強酸性により活性化されたもう一方のカルボニル基へのアニソールの転移反応により生成したと推定した。種々の固体超強酸での反応結果より,2カ所でのアシル化には表面の超強酸点が必要であることが示された。
  • 味村 健一, 吉田 直樹, 佐藤 剛史, 伊藤 直次
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 5 号 p. 283-291
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    水素社会の実現に向け,水素関連の様々な開発が行われている。その中で,シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなど有機ハイドライドが6 wt%を超える比較的大きな水素貯蔵量を有することから,それらを用いた水素の貯蔵・輸送システムが広く注目され研究が行われている。それらの脱水素には,固定層型平衡反応器に比較して高効率かつ高純度の水素回収が可能なパラジウムメンブレンリアクターの適用が有力な候補として挙げられており,実用的にはさらなるスケールアップが求められ,多管式メンブレンリアクターへの展開が期待される。本研究では,CFD(Computational Fluid Dynamics: 数値流体力学)の手法に触媒層や膜分離の熱物質移動を組み込んだ多管式メンブレンリアクターのシミュレーションモデルの開発を行った。それによるシクロヘキサンの脱水素シミュレーションを行い,実験結果と比較したところ両者は良好に一致し,モデルの妥当性が検証された。さらに,この多管式メンブレンリアクターの性能向上が膜管径の拡大によって可能なことをモデル計算から予測した。以上,本モデルは反応器内部で起こっている現象の可視化による理解や設計の最適化に対して有用であることを示した。
  • Nino Rinaldi, 吉岡 政裕, 久保田 岳志, 岡本 康昭
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 5 号 p. 292-302
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    クエン酸を同時含浸法あるいはポスト処理法により添加することにより,高モリブデン担持量Co–Mo/Al2O3触媒(20 wt%Mo)を調製した。触媒活性は,ジベンゾチオフェンの水素化脱硫反応(HDS)に対して評価した。触媒のキャラクタリゼーションはTEM,Co K-吸収端XANES,NO吸着量,表面積測定を用いて行った。また,触媒のキャラクタリゼーションのため,Co(CO)3NOを用いるCVD法でCo/MoS2およびCo/Co–MoS2触媒を調製した。ポスト処理法でクエン酸を(Co–)Mo/Al2O3焼成触媒に添加することにより,MoS2粒子の分散性,およびCo/Mo/Al2O3およびCo–Mo/Al2O3触媒の活性は著しく増加した。一方,同時含浸法によるクエン酸添加では分散性の変化は見られなかった。ポスト処理触媒では,最大活性はクエン酸/Moモル比1.5~2で得られた。ポスト処理法は劣化触媒の再生に利用できることを示唆した。
ノート
  • 小俣 光司, 山崎 裕一郎, 小林 靖和, 山田 宗慶
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 5 号 p. 303-307
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    シンプレックス格子実験計画法によりAl–W–SiおよびSi–W–Nbの3成分系酸化物の組成を決定し,試験管を用いるクエン酸法によりそれらの酸化物を並列に迅速調製した。ハイスループットスクリーニングとして,Friedel-Crafts反応(アニソールのベンジルアルコールによるベンジル化反応)を試験管中で150℃にて並列に実施した。さらに,サポートベクターマシーンを用いることで,触媒組成と活性の非線形な関係を解析して活性の応答曲面を描くことに成功した。この手法をSi–W–Nb–Alの4成分系酸化物にも適用し,これら成分間の相互作用を明らかにするとともに高活性な触媒を見出した。Si62Al31W7酸化物はH型モルデナイト触媒と同等の活性を示した。
  • 京極 啓介, 山田 智恵子, 鈴木 康敏, 西山 志漢, 福元 圭輔, 山本 英男, 印藤 信哉, 佐野 誠, 三宅 孝典
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 5 号 p. 308-312
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    ビピリジンジカルボン酸とニッケル塩からニッケル錯体を調製し,次にオートクレーブ中でDMFを溶媒としアルミニウム塩と反応させ,ニッケル錯体を含有するMOF化合物を調製した。IR分析からカルボン酸による吸収が消失していること,また窒素吸着等温線の解析からミクロ孔を有していることが分かった。得られたMOF化合物を触媒とし,ジエチルアルミニウムクロライド存在下でエチレンのオリゴマー化を検討した。ジエチルアルミニウムクロライドのみ,あるいはMOF化合物のみでは反応は進行しなかったが,ジエチルアルミニウムクロライド存在下でニッケル錯体を含有するMOF化合物が高い直鎖状ブテン選択性を示すオリゴマー化触媒となることが初めて見出された。
技術報告
  • 倉田 正治, 相澤 直之
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 53 巻 5 号 p. 313-318
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では犯罪立証のために揮発性石油類の保持力に関する吸着材の調査を行った。まかれた油類の採取用としてメーカーから提供された7種類の市販油吸着材の石油保持力をヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析法(HSGCMS)により比較した。不織ポリプロピレン繊維でできた合成吸着材シート(試料番号6のテラ)が他の吸着材より保持力がかなり強かった。0.1 ml の自動車ガソリンまたは工業ガソリンをそれぞれふたのないシャーレ上の試料番号6の吸着材に滴下後,大気暴露状態でそれぞれ数日経過しても,それら石油類はHSGCMSにより同定できた。これらの実験結果から,放火等の事件でまかれた揮発性石油類の採取には,試料番号6の吸着材が最も適していることが分かった。
feedback
Top