Journal of the Japan Petroleum Institute
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54 巻, 1 号
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総合論文
  • 森 浩亮, 山下 弘巳
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    金属ナノ粒子は,単核金属種とバルク金属との中間に位置し,量子サイズ効果や特異な表面構造に由来する独特な物理化学的特性を示すことから触媒材料として非常に注目されている。ここでは,高効率・高選択を実現し,かつ容易な分離回収と再利用を可能とする金属ナノ粒子触媒について述べる。第一に,シングルサイト光触媒と紫外光照射を組み合わせた金属ナノ粒子の担持法を開発した。本手法を用いるとPdAu合金なども合成可能であり,水素・酸素からの過酸化水素合成反応に,従来触媒をはるかに上回る活性を示す。また,pH応答性Agナノ粒子を利用し,担持金属ナノ粒子の粒子径を制御する新規手法を構築した。さらに,触媒活性,磁性,表面特性などそれぞれの機能を最大限に発揮できるよう巧みに集積することにより,他の触媒系ではなし得ない新機能を発現する金属ナノ粒子触媒を開発した。FePt磁性ナノ粒子を核とし,その表面をシングルサイト触媒含有シリカでコーティングしたコア-シェル型ナノ微粒子は,液相での酸化反応に高い触媒活性を示す。FePt磁性ナノ粒子をγ-CD(γ-シクロデキストリン)で修飾すると親水化し,水溶媒中での水素化反応に高い活性を示す。FePd磁性ナノ粒子はキラルBINAPによる修飾で光学活性を示し,不斉Suzuki-Miyaura反応が可能となる。さらに,鋳型法により合成した400~500 nm程度の中空γ-Fe2O3は,高い活性選択性を兼ね備えた新規触媒となることを見出した。
一般論文
  • 大勝 靖一, 馬場 理恵, 渡辺 恵司
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,ジステアリルヒドロキシルアミンがポリマーの安定剤として提案されたが,その信頼性ある作用機構は未だ解明されていない。本研究はラジカル捕捉能の面から,より確かな作用機構を確立しようとするものである。ジステアリルヒドロキシルアミンは炭素中心ラジカルよりも酸素中心ラジカルをより良く捕捉した。ジステアリルヒドロキシルアミンのα,α-ジメチルベンジルオキシラジカル捕捉能(kinh = 5.8 × 104 dm3 · mol−1 · s−1)はBHT(kinh = 1.7 × 104 dm3 · mol−1 · s−1)またはHALS NOHのそれよりかなり高かったが,そのラジカル捕捉数(n)は過去に報告されているほど高くなかった。ジステアリルヒドロキシルアミンの得られた高いラジカル捕捉能は,HALS NOHのそれと比較した場合,そのラジカルの水素引き抜きに由来するN,N-ジステアリルニトロキシドラジカルのC–N結合の切断のしやすさに基づくことも推定された。本研究では,ジステアリルヒドロキシルアミンの新しいラジカル捕捉機構を電子スピン共鳴スペクトルの結果を含めて提案する。
  • 大勝 靖一, 鈴木 史恵
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    2種類のフェノール系酸化防止剤を組み合わせた場合,それが相乗作用を示すか,拮抗作用を示すかについてフェノールのラジカル捕捉定数(kinh)およびラジカル捕捉数(n)の両面から詳細に検討した。二つのフェノールの相乗作用は,特にそれらの酸化電位が比較的低く,かつ近寄っている場合に見られた。kinhの解析から酸化電位の低いフェノールはもっぱらペルオキシラジカルの捕捉に関わり,一方,酸化電位の高いフェノールは生成したフェノキシラジカルへの水素供与体,すなわち還元剤として働き,低酸化電位フェノールの再生に寄与することが分かった。一方,n の相乗作用は特にp -メトキシ置換基を有するレスまたはノンヒンダードフェノールで見られ,もっぱらフェノールの周囲に存在する環境,たとえば溶媒に左右された。これは水素結合や疎水性相互作用によりフェノールの分子会合体が形成し,その結果,ラジカル捕捉によって生成するフェノキシラジカル同士のカップリングが妨害されるためである。以上より,疎水性の系,たとえばポリアルキレンや石油類の環境中では,BHTと2-t -ブチル-4-メトキシフェノールのモル比3 : 2での酸化防止剤の組合せがそれぞれのフェノールの活性の単純な和と比べて1.41倍の,またBHTとp -メトキシフェノールのモル比3 : 2での酸化防止剤の組合せが1.35倍の相乗作用を示すことが推定できた。これらの結果の活用は,フェノールの使用量の低減に伴うフェノールの使用経費の削減や環境汚染の減少に役立つものと思われる。
  • 小俣 光司, 長尾 大輔, 山田 宗慶
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    Friedel-Crafts反応は種々の中間体の合成や石油化学プロセスに欠かせない反応であるが,プロセスのグリーン化のために固体触媒の開発が求められている。ベンジルアルコールによるアニソールのベンジル化反応用の固体触媒を迅速に探索するためにこれまでハイスループットスクリーニング(HTS)反応器を用いているが,液相反応では液温の昇温に時間がかかるため,新たにマイクロ波加熱を用いるHTS反応器を作製した。反応時間3分で反応液温度は145℃に達するため,これ以下の反応時間内であれば安全に触媒活性を評価できる。これを用いて多数の触媒を評価したところ活性の序列がSn,Fe交換モンモリロナイト>モンモリロナイト>ナフィオン>>ゼオライト ≈ シリカアルミナ>チタニア>アルミナ,シリカ,マグネシアとなることを見出した。
  • Mohammad Nurunnabi, 村田 和久, 花岡 寿明, 宮澤 朋久, 平田 悟史, 坂西 欣也
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    Fischer-Tropsch合成反応において,含浸法により調製したRu/Mn/Al2O3触媒のマンガン塩種の影響を検討した。硝酸マンガン,酢酸マンガン,硫酸マンガンおよび塩化マンガンを前駆体として調製した触媒をそれぞれRu/Mn(N)/Al2O3,Ru/Mn(A)/Al2O3,Ru/Mn(S)/Al2O3,Ru/Mn(Cl)/Al2O3と表記する。スラリー床でのFischer-Tropsch反応において,Ru/Mn(N)/Al2O3が,他の触媒では活性劣化を示した反応条件下で,CO転化率および空時収率に関して高い触媒活性と安定性を示した。触媒活性の序列はRu/Mn(N)/Al2O3>>Ru/Mn(A)/Al2O3>Ru/Mn(Cl)/Al2O3 ≅ Ru/Mn(S)/Al2O3であった。触媒のキャラクタリゼーションとして,細孔径分布,CO吸着,XRD,TEM,TPRおよびXPS測定を行った結果,Ru/Mn(N)/Al2O3上でのRu粒子径および細孔径が8 nmと同程度であり,塩化マンガンの生成によって触媒表面上の活性Ru種を増加させるため,Fischer-Tropsch合成において高い触媒活性および安定性を与えることを見出した。
技術報告
  • 柳田 高志, 松村 幸彦
    原稿種別: 技術報告
    2011 年 54 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    バイオエタノールの製造では,発酵微生物の生産は不可欠な工程である。微生物の生産工程では,菌体増殖に必要な窒素,リン,カリウム等の栄養素が投入されるが,一般的には,これらの栄養素は回収されることなく,プロセス外に排出されている。発酵後の菌体と発酵前の菌体の組成は基本的に同じであり,循環利用は可能である。本研究では,湿式酸化によるN,P,K循環型バイオエタノール発酵システムに関するシステム検討を行った。湿式酸化によって,生産されるエタノールの発熱量の2.3%相当のプロセスエネルギーで十分にN,P,K分を回収できる。基質消費量の削減による経済性向上は大きく,高い経済効率を有する循環型エタノール生産プロセスが実現できるものと考えられる。
レター
  • 小森 信吾, 陳 愛華, 宮尾 敏広, 東山 和寿, 山下 壽生, 渡辺 政廣
    原稿種別: レター
    2011 年 54 巻 1 号 p. 50-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    高いCO選択メタン化活性を示す1 wt%Ru/Ni-Al複合酸化物触媒を家庭用PEFCシステムの燃料改質器に適用するため,外径100 mmφの実サイズ・メタルハニカム触媒を作製し,その性能を評価した。CO 0.2~0.8%を含む模擬ガスを用いた基礎試験では,いずれの入口CO濃度においても,実サイズ触媒は高いCO除去活性と選択性を示した。この触媒を1 kW燃料改質器の後段に接続し,CO濃度0.8%を含むシフト触媒出口ガスをGHSV = 2400 h−1で導入した結果,出口CO濃度8 ppm(CO除去率99.9%)を長時間安定に維持できることを確認した。
  • 小森 信吾, 木村 正枝, 渡辺 圭太, 高添 敏彦, 直井 登貴夫, 宮尾 敏広, 東山 和寿, 山下 壽生, 渡辺 政廣
    原稿種別: レター
    2011 年 54 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    1kW燃料改質器の水素製造・精製触媒を全てハニカム化することで,改質器容積と触媒使用量を大幅に低減した。非貴金属系触媒材料の採用とハニカム化による触媒量削減の効果により,貴金属量は改質器全体でPt 0.7 gまで低減できた。1 kW定格運転時の改質効率は82.3%(HHV)と十分高い値を示し,触媒層が全てハニカムになったことからその時の圧力損失は3.6 kPaと低い値であった。代表的な改質器出口ガスの組成としてH2 75.0 vol%,CO2 19.2 vol%,CH4 2.2 vol%,CO 20 ppmを得た。
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