Journal of the Japan Petroleum Institute
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54 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 宍戸 哲也
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 4 号 p. 225-236
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    ピコリン類の気相接触酸化に有効な触媒系の探索とその活性サイトの解明を目的として,ソフトケミストリー的手法により各種バナジウム系複合酸化物触媒を調製した。ピコリン類の気相酸化反応には単斜晶のCrVO4-I触媒が高い活性を示した。また,CrVO4-I構造のCrの一部分をAlで置換したCr0.5Al0.5VO4,およびVの一部分をPで置換したCrV0.95P0.05O4がさらに高い活性を示すことを見出した。さらに,触媒の結晶構造,触媒表面の性質と触媒活性の関係,AlおよびPの添加効果,反応系への水蒸気の添加効果および反応機構について検討を行った。AlやPの置換により表面酸量が増加すること,AlおよびPが置換されたサイトに隣接した格子酸素の反応性が向上することを明らかにした。触媒の表面格子酸素が酸化反応に関与するMars and van Krevelen機構により反応が進行していると推定した。
  • 藤原 直子, 山崎 眞一, 安田 和明
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 4 号 p. 237-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池に液体燃料を供給して直接発電するダイレクト燃料電池は,モバイル電子機器や移動体用の電源として興味が持たれている。産業技術総合研究所では,種々の燃料を用いたダイレクト発電の可能性について検討している。その一例がL-アスコルビン酸,エタノール,D-グルコースなどのバイオマス燃料の利用である。アスコルビン酸燃料電池は,アノードに触媒を使用せずカーボン電極で発電できることが特徴的である。エタノールやD-グルコースを燃料とする場合には,従来のカチオン交換膜に代わりアニオン交換膜を電解質に用いることにより,発電性能が大幅に向上した。また,カーボンフリーの燃料としてヒドラジンやボロハイドライドの可能性を検討した。ヒドラジンを燃料とすると,ダイレクトメタノール燃料電池を超えるセル電圧が得られたが,高電流密度下ではヒドラジニウムイオンの膜透過の影響でセル電圧が不安定であった。この膜透過の影響を抑えるため,アニオン交換膜形燃料電池とすることにより高い発電性能を得ることに成功した。ボロハイドライド燃料電池のアノード触媒として,ロジウムポルフィリン錯体触媒を開発した。このロジウムポルフィリン錯体は,白金触媒上で問題となっているボロハイドライドの加水分解による水素発生を抑え,高い酸化活性を有することが分かった。
一般論文
  • 坂下 幸司, 西村 勲, 木村 俊之, 浅岡 佐知夫
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 4 号 p. 248-257
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    原油の重質化に伴い流動接触分解(FCC)触媒に要求されるコーク生成および金属分堆積による劣化に対する耐性に関して,USYゼオライトとナノポーラスなアルミナ複合触媒を用いて,モデル化合物ヘキサデカン(n-C16H34)の接触分解反応性とコーキングを検討した。バインダーおよびマトリックスとしてナノ多孔性が制御されたアルミナを用いた。単独では小細孔(7 nm)と大細孔(35 nm)を有し,混合後は中細孔(約14 nm)を示す2種類のナノポーラスアルミナを組み合わせた触媒は,単独で中細孔(約14 nm)を有するナノポーラスアルミナを用いた触媒と同様に高い分解活性と低いコーク劣化を示した。USYゼオライトと複合化後の高温スチーム模擬再生テストにおいて,小細孔ナノポーラスアルミナを含んだ触媒は中細孔あるいは大細孔ナノポーラスアルミナを単独で用いた触媒や小細孔ナノポーラスシリカを単独で用いた触媒よりも耐性に優れた。また,小細孔ナノポーラスアルミナを含んだ触媒のもつ優れた耐性は模擬的なバナジウム堆積後でもほぼ維持された。この小細孔ナノポーラスアルミナの役割は,小さなナノポーラスアルミナがゼオライト表面と結合するとともにバナジウムをトラップすることによって,高温スチームとシリカの上では再生時に移動するバナジウムに対してゼオライトおよびその活性を保護していると考えられた。さらに,組み合わせる大細孔ナノポーラスアルミナがニッケルの堆積トラップサイトとなることによって,堆積ニッケル上での脱水素によるコーキングを抑えるとともにゼオライトの活性点を守る働きをすることが分かった。
  • 荒川 誠治, 手嶋 勝英, 渡部 光徳
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 4 号 p. 258-265
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    FCC原料油中の鉄化合物がFCC触媒に堆積することによる影響として,かさ密度の低下および分解活性の低下がこれまでに報告されている。本研究ではこの二つの現象について,FCC装置から採取された平衡触媒を用いて調べた。本研究の結果,鉄化合物堆積量増加に伴って,平衡触媒表面に突起物生成が顕著になり,またかさ密度が低下したが,粒子表面に突起物が見られない平衡触媒でもかさ密度の低下が認められた。平衡触媒での磁化率は鉄化合物堆積量と良く相関し,鉄化合物堆積によってかさ密度が低下するメカニズムの一つとして鉄含有化合物による触媒粒子の磁化による影響が考えられた。平衡触媒粒子表面突起物中の鉄化合物はFe3O4,Fe2O3あるいはNiFe2O4の形態で存在していることが分かり,平衡触媒の磁化率増加は強磁性であるFe3O4に起因していることが推測された。また,鉄化合物が堆積した表面を削り取るとFCC触媒活性が回復したことから,鉄化合物堆積により触媒内部への原料油の拡散が阻害されて活性低下をきたしているものと考えられた。
  • Hendrex W. Kazembe-Phiri, 松村 幸彦, 美濃輪 智明
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    マラウィのような発展途上国でバイオディーゼルを生産するのに適している植物油のエタノリシスにおいて,グリセリン前処理が反応速度向上に有効であることが知られている。しかしながら,この前処理装置設計に必要なグリセリン前処理の反応速度は報告されていない。本研究では,落花生油とグリセリン,水酸化カルシウムを300 mLフラスコに仕込んで,温度を変えて反応させ,反応特性を確認した。トリグリセリドからジグリセリドが生成し,さらにモノグリセリドが生成する反応を1次反応モデルで表し,反応パラメーターを決定,さらに熱力学的な反応特性を決定した。反応熱は小さく,高温ほどモノグリセリドを生成するのに有利な結果を得,本反応の装置設計に重要な知見を得た。
ノート
  • 松橋 博美, 田畑 諒
    原稿種別: ノート
    2011 年 54 巻 4 号 p. 272-274
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    ZrアルコキシドをCaO上に析出させ,高温で焼成することにより,新規な固体酸であるCaO担持ZrO2(ZrO2/CaO)を合成した。二度の析出で調製した触媒(ZrO2/ZrO2/CaO)についても実験を行った。調製した触媒を,プロピオン酸エチルとメタノールのエステル交換反応,およびエタノールの分解反応に適用した。ZrO2/CaOのエステル交換反応の活性はプロトン型ゼオライトに比較できるものであった。エタノール分解活性はシリカ-アルミナと同程度であった。ZrO2/CaOでは,ジエチルエーテルの生成は見られず,エチレン生成に高選択性であった。ZrO2/ZrO2/CaOは1373 Kで焼成しても,エタノールの分解反応に活性を示した。一般的な含浸法で調製したZrO2/CaOや共沈法で調製したZrO2–CaOはこの反応にほとんど不活性であった。以上より,酸点の形成は一層あるいは二層のZrO2で被覆したCaOに特異であることが分かった。
レター
  • 馬渕 公太, 宮本 学, 近江 靖則, 上宮 成之
    原稿種別: レター
    2011 年 54 巻 4 号 p. 275-276
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    ガリウムとアルミニウムを含有したMFI型ゼオライト(GaAlMFI)外表面を純シリカMFI型ゼオライトsilicalite-1で被覆し,プロパンの芳香族化における触媒性能を評価した。プロパン転化率20%程度において,silicalite-1被覆により生成キシレン中のパラキシレン比率(パラキシレン選択性)が80%まで向上することを確認した。生成物分布より,silicalite-1被覆後はMFI型ゼオライトの細孔径よりも分子径の大きな分子の生成が減少していることから,silicalite-1被覆層によるGaAlMFI外表面酸点の不活性化の寄与が大きいと考えられる。また,プロパン転化率を向上させたところ,パラキシレン選択性は低下するものの,いずれの転化率においても,silicalite-1被覆前よりも高いパラキシレン選択性を示すことを確認した。
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