水酸化テトラエチルアンモニムを構造誘起剤として用いるドライゲル変換法によりベータゼオライト(BEA)を合成し,ヘキサンの異性化-クラッキング触媒機能をモルデナイト(MOR),ZSM-5(MFI)およびZSM-22(MWW)と比較した。異性化生成物である分岐アルカン(
b-C6: 2-および3-メチルペンタン,2,2-および2,3-ジメチルブタン,
b-C5: 2-および3-メチルブタン,2,2-ジメチルプロパン,
b-C4: 2-メチルプロパン)の選択率(炭素基準)は,ゼオライト構造に依存し,BEA>MWW>MFIの順に減少した。これらのゼオライトのうち,BEAが最も高い異性化活性と選択率を示し,またMFIが最も高いクラッキング活性と選択率を示した。これらの差はゼオライトの空孔構造,酸的性質および反応パラメーターに起因すると考えられる。ヘキサンの異性化に与えるBEAのSiO
2/Al
2O
3比の影響を検討したところ,分岐アルカン選択率は,比によらずほぼ一定であったが,比を大きくすると
b-C5および
b-C4の選択率が低下した。これらの結果は,異性化は酸量に依存しないが,クラッキングは酸量に依存することを示している。また,触媒中の酸量を一定にした場合,反応活性および分岐アルカン選択率はほぼ一定であったが,
b-C5および
b-C4の選択率が低下したことから
b-C4および
b-C5の生成は酸密度に依存することが分かった。本研究の結果は,ベータゼオライトの酸点はSiO
2/Al
2O
3比に関わらず,異性化に対し均一の活性を有すると結論される。
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