Journal of the Japan Petroleum Institute
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55 巻, 5 号
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総合論文
  • 今 喜裕, 千代 健文, 内田 博, 佐藤 一彦, 島田 広道
    原稿種別: 総合論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 277-286
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    我々の豊かな生活を支える石油化学製品の製造に不可欠な高選択酸化反応において,過酸化水素を酸化剤に用いることで環境低負荷に行うプロセスを開発した。具体的には,香料や医薬品製造の原料となるα,β-不飽和カルボニル化合物やα,β-不飽和カルボン酸を高選択的に合成する白金やパラジウムの新規触媒を発見した。これら触媒を用いる過酸化水素酸化反応は,有機溶媒を一切使用せず副生物は水のみというクリーンな酸化反応である。また,電子材料の原料として重要なエポキシ化合物を製造するために,タングステン触媒,相間移動触媒,および添加剤からなる三元系触媒の知見を基に,目的とする物性に応じた特徴的な構造を有する個々のエポキシ化合物を高効率に合成する最適な触媒系を開発した。さらに,ファインケミカルズ製造に向け,年産トンスケール以上の過酸化水素酸化プロセスを開発した。
  • 白石 康浩, 平井 隆之
    原稿種別: 総合論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 287-298
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    二酸化チタン光触媒は,その強い酸化力ゆえ有機化合物の分解などの反応に広く用いられている。しかし,光触媒反応を有機変換に応用した場合には,目的化合物が選択的に生成しないことや,生成した目的化合物が分解されることも多く,反応の選択性は低い。そのため合成化学の有効な手段としての成果は限られていた。我々はこれまで,二酸化チタンならびにチタン酸化物を光触媒として選択的な有機変換を行う方法の開発に取り組んできた。本稿では,これらの成果について述べる。第一に,細孔を有する二酸化チタンにより基質や生成物の濃縮/排出を制御し,選択的に目的生成物を合成する方法を開発した。第二に,シリカ表面へ固定化した単核チタン酸化物種を利用する光触媒反応により,目的の反応を選択的に進行させる方法を開発した。第三に,二酸化チタン上への金属ナノ粒子の担持により,光触媒反応および触媒反応からなる連続反応を進行させる新たなワンポット有機合成プロセスを開発した。温和な条件下,有害な試薬を必要とせず進行させることのできる光触媒反応は,環境調和型の有機変換を実現する上で多くのメリットを有する。本稿で紹介したチタン酸化物を光触媒とする物質変換技術は環境にやさしい有機合成を実現する鍵となる可能性がある。
一般論文
  • 関根 泰, 市川 洋介, 田嶋 祐一, 中林 啓太, 松方 正彦, 菊地 英一
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 299-307
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    各種プロトン型ゼオライト(H-ZSM-5,H-L,H-Y,H-ベータ型ゼオライト)を用いたイソブタンの1-ブテンによるアルキル化について,回分式反応器および完全混合槽型連続式反応器(CSTR)を用いて比較検討した。H-ZSM-5とH-Lの二つのゼオライトは急速に劣化したが,3次元かつ大きめの細孔を有するH-YとH-ベータ型ゼオライトはCSTR中で高い活性を安定に示した。3種類の調製法によるH-ベータ型ゼオライトの比較の結果,DGC法で調製したゼオライトが最もすぐれた性能を示した。調製法の違いについてアンモニアTPDやピリジン吸着のFT-IR観測によるキャラクタリゼーションを行った結果,高い酸密度とブレンステッド酸比率がアルキレーションのために重要であることが分かった。
  • 関根 泰, 田嶋 祐一, 市川 洋介, 松方 正彦, 菊地 英一
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 308-318
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    これまでに我々は,CSTRを用いた1-ブテンによるイソブタンのアルキレーションにおいて,DGC法で調製したベータ型ゼオライトが他のゼオライトに比べて高い活性・安定性を示すことを見出した。そこでより高い活性安定性を発現させるため,DGC法で調製したベータ型ゼオライトを用いて,活性劣化の原因を探るとともに,最適な操作条件を探索した。その結果,活性劣化の原因となっているのはゼオライト表面に吸着した炭化水素ではなく,細孔内部に蓄積した炭化水素であり,これは多重アルキル化あるいはオレフィンの重合によって生成していることが分かった。よって,これら反応を抑制する条件を探索し最適化することで,高い活性と安定性を両立することができた。
  • 平松 義文, 會田 洋兵, 梅木 孝
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 319-325
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    流動接触分解触媒の有する分解活性点である酸性質が重質重油の分解へ与える影響を流動床タイプの反応器を用いて検討した。酸強度はアンモニアTPDのピーク位置から決定し,アンモニア吸着量から酸量を定義した。ゼオライト含有量が一定で,格子定数が異なる触媒を調製し,反応評価を行った。その結果,酸量が高くなるにつれ転化率も高くなったが,最も酸量が少ない触媒が最もガソリン収率が高かった。酸量の影響をより幅広く確かめるため,ゼオライト含有量,格子定数を変化させた触媒を調製し,評価した結果,ある特定の酸量においてガソリン収率は最大点を示すことが明らかとなった。減圧軽油留分を原料油と用いた場合と異なり,重質重油からガソリンを得るには最適な酸量を有していることが重要と考える。ガソリンは重質重油が分解し,ガスへと転換するところでの中間物質にあたるため,ガソリン収率向上のためには,適度な酸量に調整することに加え,重質重油に適した反応場を創出することが重要である。
  • 難波 哲哉, 益川 章一, 内澤 潤子, 小渕 存
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 326-331
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    Al2O3担持貴金属触媒による炭化水素燃焼反応におけるH2添加効果を検討した。Pt/Al2O3とIr/Al2O3では,オレフィン燃焼においてH2添加によってライトオフ温度付近のCO2生成が向上した。Pt/Al2O3上でのC2H4燃焼では,Pt粒子径の増加に伴って70 °CにおけるCO2生成ターンオーバー数が増加することが分かった。Pt/Al2O3上でのC2H4燃焼におけるH2添加の際の反応性に着目して反応機構の推定を行った。水素濃度依存性の結果から,CO2生成はH2/C2H4比に影響を受けることが分かった。また,DRIFT測定からC2H4水素化中間体としてエチリデンが生成し,酸素の添加によってエチリデンが反応することが分かった。これらの結果から,低温でのCO2生成の向上はC2H4水素化中間体としてエチリデンの酸化によるものと結論づけられた。
  • 渡部 光徳, 黒田 隆三, 牛尾 賢, 小笠原 正剛, 中田 真一, 春山 哲也
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 332-338
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    石油精製におけるゼオライト触媒において,反応物質の触媒活性サイトへのアクセスは非常に重要であり,より大きな分子が触媒活性サイトに容易に近づけるようになればゼオライト触媒の高機能化につながる。USYゼオライト粒子の外表面にメソポーラスシリカであるMCM-41を成長させたハイブリッド型の新規多孔性構造体を合成した。USYを出発原料として,MCM-41合成条件下で処理することにより,USYからMCM-41への転換,およびUSY二次粒子の表面および内部に析出したMCM-41の形成が確認された。この新規多孔性構造体の触媒の特徴として,USYおよびMCM-41細孔内に存在する活性サイトへの反応物質の拡散が促進することにより,水素化分解活性の向上が認められた。
  • 尾山 宏次
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 55 巻 5 号 p. 339-347
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    予混合圧縮着火(HCCI)燃焼ではエンジン側の制御条件と燃料の着火特性が着火時期に複雑に影響している。その現象の理解を促進するために,複数のArrhenius式を組み合わせた着火遅れに関する近似式をLivengood-Wu積分に適用することで比較的簡便にエンジンでの着火時期を推定する方法を考案し,文献値とかなり良く一致することを確認した。この方法を用いてHCCI燃焼の着火挙動に関してオクタン価の影響を含む解析,考察を行った。その結果,オクタン価が着火遅れ時間に及ぼす影響は低温酸化領域から負の温度係数(NTC: Negative Temperature Coefficient)領域に遷移する温度変化によるものであり,酸素濃度低下による着火遅れの遅延も同様な影響が含まれることが分かった。また,HCCI燃焼を広範囲で利用するためには圧縮比変更による制御が有効であることが示唆された。今回の推定方法がHCCI燃焼における燃料の影響を考察する上で有効な手法になりうることが分かった。
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