1次エネルギーの多様化およびCO
2排出量削減の観点から,バイオマス燃料の利用は有効な選択肢の一つである。代表的なディーゼル車用バイオマス燃料として,動植物油脂を原料とする燃料が挙げられる。本研究では石油精製用触媒を用いてパーム油を水素化処理した場合の反応性について検討した。また,パーム油の水素化処理によって得られた生成油の燃料としての性状について評価し,自動車用燃料としての適合性について検討を行った。その結果,動植物油脂を水素化処理することによって,低分子量化および不飽和結合の飽和化が達成され,安定性に優れた高セタン価の軽油相当燃料(Bio hydro-fined diesel: BHD)が得られることが分かった。このとき,生成する軽油留分は直鎖の飽和炭化水素である。この水素化処理の主反応である水素化脱酸素反応では,酸素分が水として脱離する水素化(脱水)反応と,二酸化炭素として脱離する脱炭酸反応があり,その反応選択性は触媒の種類(NiMo,CoMo)や反応条件によって影響されることが分かった。一般軽油にBHDを10 %混合した燃料による自動車燃料としての適合性検討では炭化水素,CO,PM(Particulate matter)といった排ガス性状を評価し,一般軽油とほぼ同等の性能を有することが示された。CO
2排出量のインベントリー分析やエネルギー効率計算によって,BHDのWell-to-WheelでのCO
2排出量は既存の軽油の約3分の1と推算され,CO
2排出量削減に大きな貢献が期待できる。また,BHDがFAMEとほぼ同等のCO
2排出量ならびにエネルギー効率で製造可能であることが明らかとなった。
抄録全体を表示