流通式反応装置を用い,440~520 ℃,N
2 0.2~0.8 MPaの反応条件下でパラフィン系常圧残油の熱分解反応を行い,生成物分布に及ぼす反応温度と圧力の影響を調べた。減圧残油分は480 ℃まで徐々に減少し,それ以上の温度ではほとんど消失した。それに伴い,全留出油とコークの収率は増加し,480 ℃以上ではほぼ一定となった。重質留出油の収率は480 ℃以上で増加したことから,軽質留出油の収率は480 ℃で最高となり,それ以上の温度では減少した。反応圧力が高いほど,重質留出油の収率が減少するとともに,軽質な留出油およびコークが増加した。二種類のパラフィン系常圧残油と二種類の中東産常圧残油を,480 ℃,N
2 0.4 MPa,0.5 hの条件下で熱分解し,得られた生成物の組成や性状を互いに比較した。パラフィン系常圧残油の留出油(C
4~500 ℃)収率は約90 %と高かったが,中東系常圧残油では70~80 %と低かった。パラフィン系常圧残油から得られた留出油生成物の硫黄含量は,中東系に比べて非常に低かったが,窒素含量は両者で同程度であった。中質および重質留出油の水素化処理を行い,脱硫反応性,脱窒素反応性を調べたところ,パラフィン系では中東系に比べて脱硫速度が4~6倍大きかった。一方,脱窒素速度は,中質留出油では大きな差が見られなかったが,重質留出油ではパラフィン系原料油の方が小さかった。
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