Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
56 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総合論文
  • 岩本 隆一郎
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 3 号 p. 109-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    残油水素化脱硫触媒は,年間使用量も多いため,その再生利用は非常に重要であるが,再生条件が過酷であることと,触媒上に堆積したバナジウムの存在により,留出油水素化脱硫触媒と比較して再生は困難である。そこで残油水素化脱硫触媒の再生技術について,留出油水素化脱硫触媒再生との相違,再生メカニズム,商業再生プロセス,再生触媒の構造,物性,活性,バナジウムの影響,再生に好適な触媒改良の観点から概説した。バナジウムは,再生時の活性金属の凝集による活性回復度の低下と担体アルミナのAl2(SO4)への変質による触媒強度の低下を促進している。しかし,残油水素化脱硫触媒の再生においてバナジウムの除去は必須ではないと考えられる。バナジウムは酸化触媒として間接的に再生時のコーク燃焼促進による触媒温度の上昇や,SOxの硫酸への酸化に伴う担体変質を引き起こしている。このため,再生条件と使用済み触媒の物性を適切に管理することや,触媒改良により安定に再生できると考えられる。
  • 上田 渉
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 3 号 p. 122-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    ナノレベルで複数の触媒成分が3次元的に組織化した固体酸化物は,その複雑構造ゆえに特異な触媒反応場を提供することが可能になり,多くの難しい化学反応を触媒的に達成し,高い効率で反応を進める固体触媒になり得る。特に,有機物の選択酸化のように多段の反応からなり,それぞれを精緻に制御する必要のある反応では,このような複雑反応場の構築は大変重要である。そのような中,複雑構造物質の典型例としてMo3VOx触媒が登場した。酸素八面体が五角形に縮合したユニットを固体の形成単位とし,これが平面的にネットワーク化し固体を形成している。これはエタンの気相酸化脱水素によるエチレン合成やアクロレイン酸化によるアクリル酸合成に極めて高い活性を示し,結晶性Mo3VOx触媒が従来の固体触媒を超えた。ネットワーク構造形成の際,エタンなどの小分子を取り込むことのできる七員環のチャネル構造の形成とともに,ネットワーク構造内に酸素八面体クラスターを配備した複雑構造となることが,高い触媒活性発現の根本である。
一般論文
  • 小島 有喜, 小谷 慎吾, 佐野 誠, 鈴木 俊光, 三宅 孝典
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 3 号 p. 133-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    アジピン酸ジメチルの水素化による1,6-ヘキサンジオール合成を,圧力容器を用い300 °C,水素圧9.1 MPaで検討した。触媒には,含浸法で調製した貴金属-スズ二元系触媒を用いた。触媒はXRD,TPR,XPSで分析した。検討した触媒の中ではα-アルミナに担持したRh-Sn触媒が最も高い1,6-ヘキサンジオール収率を与えた。原料のアジピン酸ジメチルと目的生成物の1,6-ヘキサンジオールのエステル交換により生成する6-ヒドロキシヘキシルアジピン酸メチルを中間体とする新しい反応スキームを提案した。スズとロジウムのモル比が触媒性能に大きく影響した。活性点の構造やRh,Snの価数に関する考察を行った。Sn/Rh比が1.0のRh-Sn/α-Al2O3触媒は同一反応条件下では公知の触媒に比べ高い触媒性能を示すことが明らかとなった。
  • Mohsen Safian-Boldaji, Mojtaba Pordel Shahri, Mohammad Zargartalebi, M ...
    原稿種別: Regular Paper
    2013 年 56 巻 3 号 p. 142-149
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    A fundamental chemical enhanced oil recovery (EOR) process is surfactant flooding in which the key mechanism is to reduce interfacial tension between oil and the displacing fluid and hence mobilizing the trapped oil. Surfactant loss by adsorption is one of the most important criteria that governs the economics of the surfactant flooding methods. In addition to this, detrimental effects and high price of currently used surfactants cause EOR process so expensive and unfeasible. This study is aimed to introduce a novel kind of plant based surfactant which is extracted from Zizyphus Spina-Christi tree. In addition, equilibrium adsorption behavior of this novel biosurfactant in aqueous solution on crushed reservoir rocks is presented. A conductivity technique was used to assess the critical micelle concentration (CMC) value in the aqueous phase. Batch experiments were used to understand the effect of adsorbent dose on sorption efficiency as well. Four adsorption models were also employed to make a quantitative description of equilibrium adsorption behavior of surfactant solution. For evaluating the ability of this novel biosurfactant on the surface properties, IFT values of Saponin solution were compared to those of commonly used chemical surfactants in petroleum industry. It is shown that availability and the low cost of the Zizyphus Spina-Christi extract in comparison to common chemical surfactants in petroleum industry make it economically viable for surfactant flooding.
  • 滝村 修, 柳田 高志, 藤本 真司, 美濃輪 智朗
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 3 号 p. 150-155
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    稲わらを炭素源としたセルラーゼ酵素のオンサイト生産による稲わらからのバイオエタノール製造コストをプロセスシミュレーションに基づき算出した。その結果,酵素オンサイト生産によるバイオエタノール製造コストは177円/L-エタノールで,同じエタノール製造コストに相応する等価酵素価格は938円/106 FPUであった。そのバイオエタノール製造コストは,曝気量を1.0 VVMから 0.5 VVM に削減設定すると171円/L-エタノールに減額され,酵素生産量を10.5 FPU/100 mg-稲わらから21.0 FPU/100 mg-稲わらに増加設定すると147円/L-エタノールに減額された。稲わらからのバイオエタノール製造コストは,酵素オンサイト生産による酵素生産量に大きく影響されることが分かった。
  • 向井 大揮, 江田 登志成, 田中 啓介, 菊地 英一, 関根 泰
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 3 号 p. 156-164
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    メタンの接触部分酸化を低温で駆動するためのニッケル触媒を検討し,担体としてペロブスカイト型酸化物を用いた。LaAlO3ペロブスカイト型酸化物にNiを担持した触媒は,水素還元後にメタンの部分酸化を673 Kというこれまでに例を見ない低い温度で活性を示した。LaAlO3ペロブスカイト上に担持したニッケルは他の担体と比べ相互作用が弱く,より還元を受けやすいことが分かった。反応はメタンの燃焼とそれに伴う水蒸気改質などにより進行し,還元されたニッケルはこれら両方の活性点であった。パラジウムをさらに逐次含浸した触媒は,無還元でも反応が進行した。この際のニッケルとLaAlO3ペロブスカイトの相互作用,パラジウムの役割について各種キャラクタリゼーションにより詳細な検討を行った結果,パラジウムがメタン酸化を促進し,還元されやすいLaAlO3上のニッケルが活性点となり接触部分酸化が進行していることが分かった。
ノート
技術報告
  • 北牧 祐子, 朱 彦北, 稲垣 真輔, 松尾 真由美, 谷口 幸子, 沼田 雅彦, 加藤 健次
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 56 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ, AIST)では,バイオエタノールの成分分析における精度管理用認証標準物質,NMIJ CRM 8301-aを開発した。開発した認証標準物質のマトリクスはコメを原料として製造されたエタノールである。認証項目は,水,メタノール,硫黄,銅の4成分であり,本認証標準物質はエタノール燃料中の成分分析における機器校正用および精度管理用に使用することができる。本論文では,硫黄の認証について報告する。硫黄の認証値は,アンプルに小分けした候補標準物質を分析して決定した。測定方法には,燃焼-紫外蛍光法および燃焼-イオンクロマトグラフィーを適用した。硫黄の認証値は2.43 mg kg−1,拡張不確かさは0.23 mg kg−1k=2)である。
レター
  • 高橋 あゆみ
    原稿種別: レター
    2013 年 56 巻 3 号 p. 176-179
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    土壌調査および汚染土壌の対策に関わる費用削減のため,簡易分析法が現場で運用されるケースがある。油汚染土壌における対策においては,油汚染土壌に含まれる油分の濃度であるTPH(Total Petroleum Hydrocarbons)を把握することで汚染の状況を把握できる。このTPH濃度を測定する方法として各種簡易測定法がある。土壌汚染対策においては,現場での使用ができ,簡易,迅速かつ低コストの測定方法が求められている。この測定方法は調査期間,費用および処理費用の低減に大きく貢献できる可能性がある。筆者らは現場で簡単かつ安全にTPHを測定できるTPH分析計を開発したので,この性能評価結果について報告する。
訂正
feedback
Top