Journal of the Japan Petroleum Institute
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56 巻, 5 号
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総合論文 ―特集: 水素製造技術―
  • 李 達林, 王 磊, 小池 充, 冨重 圭一
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 253-266
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    バイオマス熱分解由来タールの水蒸気改質用触媒については,活性,安定性,炭素析出耐性といった観点において改良が必要とされている。ニッケルおよびコバルトは水蒸気改質反応における活性成分であることが知られている。そして,その触媒性能を向上させる有効な方法の一つが活性金属に対して,適切な異なる金属を合金化させることである。ここでは,Ni–Fe,Ni–Co,およびCo–Fe合金触媒の開発を行い,合金形成による促進効果と,合金粒子の構造との関係について紹介する。合金粒子の成分,組成,結晶構造および均一性などは合金粒子の触媒活性に大きな影響を与えることが明らかになった。特に,ハイドロタルサイト化合物を触媒前駆体とする調製法は,従来の含浸法と比べて,より均一な組成で,高活性を示す合金粒子を与え,高性能合金触媒の調製法として有効であることを示した。
  • 金井 保, 今中 忠行, 跡見 晴幸
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 267-279
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    生物学的水素生産は次世代の再生可能燃料の生産方法として,大きな注目を集めている。超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis KOD1は,嫌気性従属栄養微生物であり,その至適生育温度は85 °Cである。私たちは本菌の水素生産能力を評価するために,天然培地にピルビン酸もしくはデンプンが添加された培地を用いて培養実験を行った。ピルビン酸添加培地を用いた連続培養実験により,希釈率0.8 h−1の条件において,最大の連続的水素生産速度となる59.6 mmol g−1 h−1(乾燥菌体重量,単位時間あたり)を記録した。また本菌のゲノム上には3種類の[NiFe]型ヒドロゲナーゼの相同遺伝子(Hyh,Mbh,Mbx)が存在する。これらの[NiFe]型ヒドロゲナーゼの細胞内での機能を解析するために,これら相同遺伝子の遺伝子破壊株をそれぞれ作成した。その結果,Mbh破壊株においてのみ,水素発生代謝条件下での生育が観察されなくなった。さらに,Mbh破壊株では水素発生能力の欠損も観察されたことから,Mbhが本菌の水素発生に関わる最も主要な[NiFe]型ヒドロゲナーゼであることが判明した。一方で,Hyhは水素の吸収反応に関与することが明らかとなった。これらの結果より,Mbhの機能を強化し,Hyhの機能を欠損させることで,水素発生能力が向上した株が作成できることが期待される。
  • Su Su Khine Ma, 久富 隆史, 堂免 一成
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 280-287
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    光触媒を用いた太陽光照射下での水の分解反応は環境問題・エネルギー問題に重要な寄与が期待される夢の化学反応の一つである。太陽エネルギーを効率よく利用するためには可視光照射下で機能する水分解用光触媒の開発が必要である。二段階励起(Zスキーム型)水分解反応系は,水素生成用と酸素生成用の2種類の光触媒を可逆的なレドックス対の酸化還元反応または粒子間の電子移動を用いて直列に接続する方式である。この方式では,比較的バンドギャップエネルギーが小さく水素生成か酸素生成のいずれか片方にのみ活性な半導体光触媒でも水の分解反応に利用することができる。本稿ではZスキーム型水分解反応系に関連する事項を中心に可視光応答性光触媒の研究の進展について説明する。
  • 河村 義裕, 小椋 直嗣, 五十嵐 哲
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 288-297
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    小型電子機器のための新しい電源として期待されている小型の固体高分子形燃料電池(PEFC)のために,微小流路(マイクロチャンネル)上で反応が進行するマイクロリアクターを用いた水素製造触媒システムが注目されている。マイクロリアクターは,反応器の体積あたりの表面積が大きいために,伝熱効果が大きいことが特徴であるが,同時に放熱性も高くなることから,従来の反応器と比較して熱の有効利用が特に重要となる。このことから,300 ℃以下の低温で水素製造が可能なメタノールの水蒸気改質のために,最適化した条件で高性能なCu/ZnO/Al2O3触媒が調製された。つぎに,このCu/ZnO/Al2O3触媒をマイクロチャンネル壁面にプレート化したマイクロリアクターを設計するために,1次元モデルに基づいてチャンネル幅や深さを仮定した物質・熱収支式の解析結果からチャンネルの長さが決定された。そして,シリコンとガラス基板からなるマイクロリアクターが,マイクロ加工技術によって製作された。この高性能触媒を備えたマイクロリアクターを用いたメタノール改質によって,PEFCから1 Wの電力を得るために必要かつ十分な水素生成速度を達成した。さらに,マイクロリアクター型メタノール改質器に加えて,メタノール水溶液の蒸発部,改質ガス中のCOをPt系触媒上で選択酸化反応によって低濃度化するためのCO除去部,および熱源となる触媒燃焼部とそのための燃料の蒸発部を組み合わせて,集積化した。このマイクロリアクターシステムの利用によって,2.5 WクラスのPEFCを駆動するために十分な水素量が得られることを確認した。
総合論文
  • 坂本 宏, 関根 和喜, 前田 守彦, 鈴木 裕晶
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 298-303
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    AEを用いた診断は,これまで海外では屋外石油タンクの底部腐食損傷の状態を把握する手法として広く調査研究が行われてきているが,国内の製油所では,対象となるタンク底部の腐食損傷程度があまり大きくなかったこと(<0.1 mm/年),かつ消防法で求められるデータによる腐食管理が定着していたこと等の理由から,普及はあまり進んでいなかった。
    一方,近年ではUT(Ultrasonic Testing)と称する非破壊検査技術を用いた連続板厚計測手法が広く認知され,UTは定期修理工事中に開放タンクの底板の板厚の計測解析に用いられるようになり,タンク底板の腐食損傷状態をより正確に知ることができるようになった。それに加え,AE計測装置を使用した診断技術のノイズ除去精度が向上し,優位なAE信号を通じて腐食位置の標定精度に向上がみられてきた。連続板厚計測を行うことで,AEの精度確認ができ,定量評価がデータベースを作ることで可能になった。
    そこで,使用中の設備の故障状況を計測・評価するために,従来のAEを用いた診断方法を改良した技術を開発した。この改良AE法を用いることにより,タンク底板の腐食速度と改良AE方法で得られたデータとの間に良い相関性を得ることができた。これらの成果をまとめ,腐食損傷を診断するガイドラインを作成したので,報告する。
一般論文
  • 鎺 広顕, 春名 将資, 江頭 竜一
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 304-311
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    原料として分解灯油を,膜液としてポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80)水溶液を,溶媒としてヘキサンを使用した。邪魔板付き撹拌槽を透過装置として使用した。芳香族成分は乳化液膜を選択的に透過し,その収率は直鎖炭化水素に比較して非常に大きかった。芳香族成分の物質移動に関して膜破壊の影響は小さく,物質移動に対して乳化液膜透過が支配的であった。全芳香族の総括透過容量係数は直鎖炭化水素に対して10倍以上大きかった。撹拌速度および膜液中の界面活性剤濃度は総括透過容量係数に影響した。撹拌速度は抽出相中におけるエマルションの分散に影響し,撹拌速度の増加とともに比表面積が増加した。膜液中における界面活性剤の質量分率を適切に調整することにより総括透過係数を増大させることが可能であった。全直鎖炭化水素に対する全芳香族の分離の選択率は10以上となり,既往の研究結果であるスルホラン溶媒を用いた回分液液平衡抽出と同等であった。
  • 清水 太一, 大田 昌樹, 佐藤 善之, 猪股 宏, 中川 喜直, 難波 哲哉
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 312-316
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    酸素吸蔵能(OSC)を有し,自動車排ガス触媒として利用されているCeO2の使用量削減を可能とする新規触媒調製を目指し,超臨界CO2を溶媒としてCeO2に対してRhを担持することで,その高分散化によるOSC能の向上,および排ガス浄化活性の向上を検討した。その結果,調製した触媒は,EDX分析結果から前駆体仕込み量によってRh担持量が制御可能であることが分かった。また,XRDおよびTEM分析では,Rhに由来するピークおよび粒子が確認できず,Rhの高分散担持が示唆された。 OSC能に関しては,Rhを担持していないCeO2と比較して高いOSC能を示し,それに起因して排ガス浄化活性についても従来の触媒と比較して向上することが分かった。
  • 今井 涼一, 高塚 透, 前田 健太, 深澤 亮徳, 高橋 伸英, 福長 博
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 317-325
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    輸入原油の重質化や国内需要の白油化といった石油需給構造の変化に対応するために,RFCC(残油流動接触分解)における重質油分解能力の向上が望まれる。重質油分解を促進させる能力の高いFAU型(USY)ゼオライトを含むRFCC触媒は一般的に水素移行反応性が高く,オレフィンを水素化させるため,オクタン価損失が大きくなる。そこで本研究では,異性化活性を持つと見込まれるベータ型(BEA型)ゼオライトを用いて,オクタン価の低いパラフィン成分を多分枝異性化することによりガソリンのオクタン価を維持することを狙った。BEA型ゼオライトのみの反応では分解反応が先行しガソリン収率を低くするばかりではなく,その組成にはノルマルパラフィンが多くオクタン価の低いガソリンを生成するが,低酸密度のBEA型ゼオライトをRFCC触媒に混成した一体成型触媒では,RFCC触媒と同等のガソリン収率が得られ,パラフィンの多分枝化が進行した。FAU型ゼオライト細孔で生成したオレフィンをBEA型ゼオライト細孔に取り込み,水素移行反応および接触分解反応を抑制しながら異性化を進める。そして,ここで生成した多分枝オレフィンを再びFAU型ゼオライト細孔に拡散させ,水素移行反応を経ることで多分枝パラフィンとして安定化したと考えられる。異なるゼオライトが共存することによりそれぞれの反応特性に基づいた多元的反応が効果的に進行した結果であると総括できる。
  • 神名 麻智, 木村 直人, 山下 康貴, 柳田 高志, 松村 幸彦
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 326-330
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    草や木に代表されるリグノセルロース系バイオマスから効率よくエネルギーを生産することは,今後のエネルギー生産において非常に重要な課題である。リグノセルロース系バイオマスからエタノールを生産する過程の一つである水熱前処理はその処理過程で,後の処理段階である発酵を阻害する物質類を生成する。これらの発酵阻害物質は酵母の増殖,発酵に影響を及ぼすことが知られているが,定量的な整理は行われておらず,反応器の設計には困難が生じている。本研究では4種類の発酵阻害物質について酵母増殖に与える影響を実験的に確認,Monod式にフィッティングさせ,発酵阻害物質のMonod式のパラメーターに及ぼす影響を確認した。
  • Tau Len-Kelly Yong, 松村 幸彦
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 5 号 p. 331-343
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    フェノールとベンゼンの超臨界水中における分解に及ぼす温度(370~450 °C)と滞留時間(0.5~100 s)の影響を25 MPaで検討した。これらの分解速度は比較的低いが,滞留時間20 sではチャーとガスの生成が進行し,温度と滞留時間とともにこれらの収率は増加した。フェノールならびにベンゼンからのチャー生成はガス生成と競合していた。ベンゼンの分解速度はフェノールよりも遅く,共鳴により安定するフェノキシラジカルの生成が分解に重要な役割を果たしていると考えられる。フェノールの超臨界水ガス化では,熱分解による直接ガス生成が進行していると考えられるが,ベンゼンの超臨界水ガス化については,ガス化は二つの異なる経路で進行していると考えられる。直接的なガス生成は反応初期の数秒間で進行し,芳香族の開環がより長い滞留時間で進行,ギ酸や酢酸を経由してガス化が進行していると思われる。興味深いことには,ベンゼンからのフェノール生成はアレニウス挙動を示したが,フェノールからのベンゼン生成は高温ほど遅く,非アレニウス挙動を示した。これらに基づいて,超臨界水中におけるフェノールとベンゼンの分解経路を提案した。
ノート
  • 鎺 広顕, 林 知輝, Patima Sinthupinyo, 江頭 竜一
    原稿種別: ノート
    2013 年 56 巻 5 号 p. 344-348
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    バイオディーゼル製造において低価格原料油である粗パーム油(マレーシア産)および粗ジャトロファ油(タイ産)を使用した。遊離脂肪酸(FFA)除去のため,NaOHによる中和およびH2SO4を触媒としたメタノールによるエステル化の2種類の処理を検討した。両処理はFFAを低減させることができ,処理油を用いてエステル交換反応も可能であった。酸処理による脱酸よりも塩基を用いた場合の方が処理油の収率は小さかった。しかし,酸処理には長い反応時間が必要であった。FFAが0.03以下となっている処理油ではNaOHやCH3ONaを触媒としたエステル交換反応が可能であり,処理済み粗ジャトロファ油を原料としCH3ONaを用いた場合ではエステル交換反応における収率が0.99以上となった。粗ジャトロファ油に対して粗パーム油は短鎖脂肪酸による単純脂質が多く含まれ,けん化の影響が顕著であり,エステル交換反応において収率が低くなった。
技術報告
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