Journal of the Japan Petroleum Institute
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59 巻, 6 号
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総合論文
  • 熊谷 将吾, 吉岡 敏明
    原稿種別: 総合論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 243-253
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    環境負荷低減および将来的な国内資源確保の観点から,廃プラスチックのリサイクルの推進は必要不可欠である。国内における廃プラスチックの有効利用率は年々増加しており,2014年には83 %に達している。しかし,有効利用率に占めるマテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクルの割合はわずか26 %および4 %と低く,残りの70 %は熱回収に留まっている。つまり,マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルによる有効利用率を向上できるポテンシャルは極めて大きい。本稿では,ケミカルリサイクルの一つである廃プラスチックの熱分解法に着目する。熱分解法は,マテリアルリサイクルに適用困難な混合廃プラスチック等の油化およびガス化を可能とする。しかし,現実には,ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタレート(PET)が,熱分解により腐食性ガスや高沸点の昇華性物質を生成し,熱分解生成物品位の低下および処理設備の腐食・閉塞(そく)の原因となるため,これら樹脂の含有量の多い廃プラスチックは依然として処理が困難となっている。著者らは,これまで,これら問題点の打開を目指し,PVCの乾式法および湿式法による脱塩化水素および脱塩素プロセス,石灰を用いたPETの熱分解油化について検討を進めてきた。本稿では,まず主要な樹脂であるポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),およびポリスチレン(PS)に関する熱分解研究の現状について総括し,著者らの報告してきたPVCの脱塩化水素および脱塩素プロセス,さらに石灰を用いたPETの熱分解油化プロセスを中心にPVCやPETの熱分解研究について紹介する。

  • 後藤 元信
    原稿種別: 総合論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 254-258
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    超臨界流体は臨界温度と臨界圧力を超えた状態であり,反応や分離溶媒として注目されている。亜臨界・超臨界流体を用いた分解反応による廃プラスチックの化学リサイクル技術について基礎から商用プラントに至るまで総括する。従来プロセスに比べて超臨界流体中では分解反応が迅速かつ選択的に進行する。PETやナイロンなどの縮重合系プラスチックは超臨界水や超臨界アルコール中で比較的容易にモノマーに解重合される。架橋高分子は主鎖の過度の分解を伴わずに選択的脱架橋化反応によりリサイクルできる。繊維強化プラスチックは樹脂部分を解重合することにより繊維や化学原料として回収できる。廃プラスチックのリサイクルのために亜臨界・超臨界流体を用いたパイロット規模や商用規模のプラントが開発されている。

総合論文 ── 「多孔質膜の調製および分離への適用」特集 ──
  • 池田 歩, 野村 幹弘
    原稿種別: 総合論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 259-265
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    対向拡散CVD法によるシリカ複合膜は,シリカ源に導入する有機官能基の種類を変えることで細孔径をÅオーダーの制御が可能である。この細孔径制御技術を炭化水素分離膜の開発に応用した。本研究では,CH4/C2H6およびC3H6/C3H8系を検討した。シリカ源はエチルトリメトキシシラン(ETMOS)やプロピルトリメトキシシラン(PrTMOS),ヘキシルトリメトキシラン(HTMOS)を用いた。各シリカ源の加水分解粉末の熱分解挙動より,HTMOSは分解開始温度が400 ℃と高かった。また,3種のシリカ源をそれぞれ270 ℃で蒸着させた膜の細孔径を比較したところ,有機官能基のサイズによらず細孔径は約0.40 nmであった。これより,アルキル基はすべて焼失しているのではなく,オゾンにより部分的に分解していると考えられる。蒸着温度300 ℃のETMOS膜において,CH4透過率2.8 × 10−9 mol m−2 s−1 Pa−1のとき,CH4/C2H6透過率比38が得られた。また,HTMOS膜ではC3H6/C3H8透過率比414が得られた。この膜では,C3H8透過の活性化エネルギーが正であったことより,分子ふるい機構であると予想される。このようにアモルファスシリカ膜の蒸着条件を制御することで,各種炭化水素分離に適した膜の開発が可能であると言える。

  • 廣田 雄一朗, 西山 憲和
    原稿種別: 総合論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 266-275
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    ミクロ孔炭素膜の新規細孔径制御法の開発により,均一な細孔径(0.3~0.5 nm)を有する炭素膜の作製に成功し,様々な系における水素分離性能を評価した。開発した炭素膜はいずれも,水素/一酸化炭素,水素/二酸化炭素や有機ハイドライド脱水素膜反応器などの様々な水素分離系において優れた水素選択透過能を示した。以下に開発した三つの制御法について述べる。(1)フルフリルアルコールの蒸着条件と炭化条件の調整による膜厚と細孔径制御法。この方法により,従来報告されていなかった気相合成での0.3 nmの均一な細孔を有する膜の作製に成功した。(2)賦活処理による膜厚と細孔径制御法。様々なガスおよび水蒸気下で賦活処理することで,細孔径の拡大に成功した。処理後の炭素膜の細孔径や形状は賦活条件(賦活種および処理温度)により大きく変化し,水素雰囲気下700 ℃での処理では,細孔径は0.3から0.45 nmへと拡大した。(3)四級アンモニウム塩添加による0.4 nm以上の大きな細孔を有する炭素膜の直接合成法。異なる長さのアルキル側鎖をもつ四級アンモニウム塩を用いることで,0.4 nmおよび0.5 nmの均一な細孔を有する炭素膜の直接合成に成功した。

  • 谷原 望, 中西 俊介, 吉永 利宗
    原稿種別: 総合論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 276-282
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    有機系,無機系,金属系材料による分離膜技術が盛んに研究開発されてきており,いくつかの材料が実用化されてきている。幾種の酸無水物と多種のジアミンとの組合せから合成されるポリイミドは,系統的な分子設計を検討できる分離膜材料として興味深く検討されてきている。1980年代に石油産業の水素回収に適用されたポリイミド分離膜は,空気分離による窒素富化あるいは酸素富化,除湿,脱水,二酸化炭素分離などのガス分離,および蒸気分離においてその適用範囲をさらに拡大している。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなるポリイミドは,耐熱性,耐薬品性,機械的強度に優れるとともに,良好な曳糸(えいし)性を有し,非対称中空糸膜に成型され,膜分離プロセスとして利用されてきている。ここでは,ポリイミドの材料特性,ポリイミド中空糸膜の特性,ガスおよび蒸気分離の適用場面について紹介する。

一般論文
  • Shefa Ul KARIM, Md Shofiqul ISLAM, Mohammad Moinul HOSSAIN, Md Aminul ...
    原稿種別: Regular Paper
    2016 年 59 巻 6 号 p. 283-292
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー
  • 大塚 文人, 多田 昌平, 菊地 隆司
    原稿種別: 一般論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 293-298
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    ジメチルエーテル(DME)の水和反応の酸触媒として,担持遷移金属酸化物(X/YX=WO3,Nb2O5Y=Al2O3,TiO2,SiO2)を検討した。DME水蒸気改質反応に適した温度域で,Nb2O5/Al2O3触媒は検討した担持遷移金属酸化物触媒の中で最も高いDME水和反応活性を示した。このNb2O5/Al2O3触媒において,Nb2O5担持量や焼成温度を変えて触媒を調製し,水和反応活性の向上を検討した。焼成温度の影響として,800 °Cを超える温度で焼成すると新しい結晶相AlNbO4が現れた。また,BET表面積は焼成温度の上昇で単調に低下した。Nb2O5担持量の影響については,25 wt%までは担持量の増加とともに酸量が増加し,さらに担持量を増加しても酸量はほぼ一定であった。500 °Cで焼成した25 wt% Nb2O5/Al2O3触媒が最もDME水和反応活性が高く,この触媒をCu/ZnO/Al2O3触媒と混合してDME水蒸気改質反応に使用した。Cu/ZnO/Al2O3触媒のNb2O5/Al2O3触媒に対する混合比は,重量比で1が最適であることが分かり,酸触媒のγ-Al2O3と混合した場合よりもDME水蒸気改質反応活性が高いことが分かった。

  • 原谷 賢治, 吉宗 美紀
    原稿種別: 一般論文
    2016 年 59 巻 6 号 p. 299-306
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    メチルシクロヘキサン脱水素反応から燃料電池自動車用の水素を回収し精製するために,いくつかの形態の膜分離プロセスを設計し評価した。計算では以下の諸点を仮定した。(a)供給ガスはあらかじめ冷却工程を経た98 %水素–2 %トルエン混合ガスとし,(b)圧力は供給側が0.3,透過側が0.1 MPaで,(c)回収水素の目標として回収率90 %でトルエン残留濃度0.3 ppm以下に精製し,(d)それを圧力0.7 MPaで貯蔵し,(e)膜分離ステージは十字流プラグフローモデルに従う。1段プロセスは回収水素を貯蔵タンクに移送するための動力原単位0.12 kWh Nm−3-H2を必要とするだけであり,最も省エネルギー性に優れるが280,000以上の非常に高い理想分離係数を必要とした。2段カスケードプロセスでは1000から1500の中程度の理想分離係数で目標が達成でき,1段目透過流を再圧縮する分も含めて0.19 kWh Nm−3-H2の動力を必要とした。1段と2段カスケードをつないだ3段プロセスでは理想分離係数10,000前後で目標が達成でき,所要動力は0.19 kWh Nm−3-H2以下であった。これら膜分離プロセスはPSAプロセスと十分に競合できると考えられる。

技術報告
  • 佐藤 信也
    原稿種別: 技術報告
    2016 年 59 巻 6 号 p. 307-310
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    石油学会法(JPI-5S-22-83,以下JPI法と記す)におけるカラムクロマトグラフィーによる飽和分,芳香族分,レジン分の分離を市販のリービッヒコンデンサーをカラムとして約1/4スケールでJPI法と同等の結果を得る方法(DS法)を検討した。本法はJPI法の約1/4のスケールで分離を行う方法である。中東系重質残油およびCold Lake産オイルサンドビチューメンの常圧残油から回収したペンタン可溶分(ME,CL)をJPI法およびDS法で分画した結果,飽和分,芳香族分,レジン分の回収率の繰り返し誤差はおおむね2 wt%以内であり,JPI法とDS法の差は繰り返し誤差と同等であった。また,回収した分画の元素分析も良い一致を示した。これらの結果よりDS法はJPI法と同一の結果を示し,JPI法の代わりに使用できることが示された。

  • 佐藤 信也
    原稿種別: 技術報告
    2016 年 59 巻 6 号 p. 311-316
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    JPI法(JPI-5S-22-83)およびその約1/4スケールでのSARA分析法(DS法)を用いて中東系重質残油およびオイルサンドビチューメン常圧残油から回収したマルテン分(ペンタン可溶分,ME,CL)中の飽和分(ヘプタン流出分)を,アミノ修飾シリカゲルカラム,2波長紫外吸収(UV)検出器およびエバポレイト光散乱検出器(ELSD)を装備した高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いてヘキサン溶媒で分析した。飽和分はELSDでは二つのピークを示した。UV検出器による270 nmおよび320 nmでの測定より前のピークは非芳香族分,後のピークは単環芳香族分であり,二環以上の芳香族分は検出されなかった。また,DS法でヘプタンを4分画して回収した実験では,これらのタイプは前半の2分画のみに含まれていた。1分子に2個のベンゼン環を有するジフェニル類のモデル試料を用いた分析より,ジフェニル類はヘプタン流出分の後半とトルエン流出分の最初に流出すること,ヘプタン中のものはHPLC分析で単環芳香族分と分離できることが明らかとなった。これよりジフェニル類は多環芳香族分として定量できることが分かった。ELSDの結果より,MEおよびCLの飽和分中には非芳香族分,単環芳香族分のみが存在し,ジフェニル類は実質的に含まれていないことが明らかとなった。JPI法(DS法)とHPLC分析を組み合わせることにより,マルテン中の飽和分,単環芳香族分,多環芳香族分,レジン分の4成分を定量することが可能となった。

  • 北牧 祐子, 朱 彦北, 沼田 雅彦
    原稿種別: 技術報告
    2016 年 59 巻 6 号 p. 317-321
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル フリー

    産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ, AIST)では,バイオディーゼル燃料(B100)中成分分析などの精度管理用認証標準物質,NMIJ CRM 8302-aの開発を行った。本認証標準物質は,パーム油由来の脂肪酸メチルエステルであり,認証項目は水,6種類の元素(S,Na,K,Mg,Ca,P),密度および動粘度である。本論文では,バイオディーゼル燃料認証標準物質中の硫黄の精確な値付けについて述べる。硫黄の値付けには,誘導結合プラズマ質量分析法と燃焼─イオンクロマトグラフィーを用いた。誘導結合プラズマ質量分析法では,試料の前処理に3種類の方法を採用した。燃焼─イオンクロマトグラフィーによる硫黄定量法の妥当性確認は,硫黄の認証値が付与されている3種類の認証標準物質(NIST SRM 2773,NIST SRM 2298,NIST SRM 229)を用いて行った。硫黄の認証値は,4種類の手法で得られた測定値を重み付けして平均することで決定した。

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