Journal of the Japan Petroleum Institute
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60 巻, 5 号
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一般論文 ─ 特集「京都大会」 ─
  • 斎藤 晃, 前田 駿, 関 裕文, 眞鍋 将太, 宮本 雄地, 小河 脩平, 橋本 国秀, 関根 泰
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 203-210
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,エタンクラッカーの性能向上のために脱水素触媒を開発した。アルカンの脱水素触媒としてよく知られるGa,Ge,In,Snについて検討した。これらの触媒ついて活性試験を行った結果,高い転化率とエチレン選択率を持つGaが最適であると考えた。Gaをα-Al2O3に担持し1323 Kで焼成した触媒は経時的に活性が劣化する傾向を示したが,担体をγ-Al2O3とした触媒は高いエチレン収率,安定性を示した。活性の差異について検討を深めるため,BET,XRD,EDX,XANESの分析を行った。この結果,Gaをγ-Al2O3としたGa触媒は,担体が高比表面積かつβ-Ga2O3に近い構造のGa2O3が高分散に担持されているため高い活性と安定性を示すということが考えられた。

  • 中野 知佑, 池内 孝夫, 進藤 隆世志
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 211-222
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    原油備蓄基地において,タンク内で形成した原油系W/Oエマルジョンの水分離性(原油系W/Oエマルジョンの安定性)が,原油種によって著しく異なる要因を明らかにするため,水分離性が異なる原油(アッパーザクム,フート)を用いて原油系W/Oエマルジョンを調製し,水(水粒子)を重力沈降させてタンク内における水の沈降メカニズムを検討した。また,原油から分離した3留分(アスファルテン(ASP),脱れき油(レジン(R)を含有),ワックス状油(脱れき油からRを除いたもの))を用いてモデルW/Oエマルジョンを調製し,その安定性を評価して原油系W/Oエマルジョンの安定化に寄与する因子と,原油種により水の分離性に差異が現れる要因を検討した。その結果,一部の水粒子は沈降中に合一して大きくなり,また水が分離しやすい原油は,水が分離しにくい原油と比較して水粒子同士が合一しやすい環境を与える原油であることが示唆された。原油に含まれるASPおよびRは界面活性成分であり,ASPが形成する油水界面膜の堅ろう性およびRが油水界面膜強度や水粒子径に与える影響が原油系W/Oエマルジョンの安定性に寄与していることが示唆された。

  • 渡部 綾, 平田 望, 福原 長寿
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 223-231
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    ゾル-ゲル法でγ-Al2O3を調製し,そこへ硫酸アンモニウムを投入することで硫酸処理した担体を用い,遷移金属(Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu)を担持した触媒を調製した。そして,プロパン脱水素反応に及ぼす硫酸処理の影響と活性種の調査を行った。担体に硫酸処理をしない触媒はプロピレン選択性が低かったが,硫酸処理した触媒は高いプロピレン選択性を示した。特に,Co成分を担持した触媒が高選択的にプロピレンを生成した。また,安定性も改善されて,触媒劣化が抑制された。硫酸処理したCo触媒の反応前と反応後の触媒について物理化学的特性を評価し,触媒性能が向上した要因を検討した。XRDやRaman測定の結果から,硫酸処理は触媒のバルク構造には影響を与えないことが分かった。XPSやXANES測定から,反応前にSO42–として担持された硫黄種は,反応中にS2–に還元されることが分かった。活性の上昇とともにS2–の量が増加していることから,S2–が活性種として機能し,選択的に脱水素反応を促進する一因と推測された。

  • 小栗 輔矩, 杉浦 圭, 矢部 智宏, 小河 脩平, 関根 泰
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 232-240
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    担持ニッケル触媒を用いたメタンのトリリフォーミング(水蒸気改質+二酸化炭素改質+部分酸化)について,473 Kという低温で電場中にて検討した。自動車の排気ガス循環システムを用いた車上改質によるエネルギー回収を狙っているため,高いメタン転化率と燃焼の抑制に優れた触媒が求められる。Ni(ac)/Mg/La0.1Zr0.9O2触媒は,473 Kにおいても高いメタン転化率を示しながらメタン燃焼を抑制した。Ni/La0.1Zr0.9O2上のマグネシウムについて種々のキャラクタリゼーションを行った。マグネシウムの添加は,NiとMgの近接構造を形成し,これがメタン燃焼抑制につながっていることが分かった。

  • 粥川 智生, 藤本 高義, 三好 啓介, 新井 博久
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 241-247
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    超臨界水を用いた重質油改質技術(SCWC, Supercritical Water Cracking)は超重質油を改質して低比重,低密度の改質油を得る技術である。API比重8°のカナダオイルサンドビチューメンからは19~24°の改質油が得られ,比重・密度の観点からカナダのパイプラインの基準値を満たすことが確認できている。SCWCは,パイプライン輸送可能な改質油が希釈油を必要とせずに得られることや,シンプルな装置構成で得られることから,既存の希釈法やフルアップグレーディング法と比較して,コスト削減のメリットがあると考えている。SCWCプロセスによるベンチ装置(0.15 barrel/day)とパイロット装置(5 barrel/day)の2種類の装置を用いて実証を行った。これらの装置から得られた分解率,製品収率,製品性状を比較することで装置規模が与える影響を評価した。また,製品の安定性の分析やパイロット装置の250時間の長期運転により,SCWCプロセスが実現可能な分解率,およびシステムの信頼性を有していることを確認した。

  • 澤 侑乃輔, 梁 云峰, 村田 澄彦, 松岡 俊文, 赤井 崇嗣, 高木 是
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 248-255
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    シェールガス開発における正確なガス量評価とCO2を用いた多段階フラッキングによるシェールガス開発の環境負荷軽減に資するため,ケロジェンのミクロ孔におけるCH4分子の吸着挙動とCH4分子とCO2分子の置換挙動およびこれらの分子の移動に及ぼすH2O分子の影響について,分子動力学シミュレーションにより検討した。その結果,ケロジェンのミクロ孔でのCH4分子密度はケロジェンのメソ孔でのCH4分子密度の約1.8倍となり,この吸着ガス量の評価にはミクロ孔充填を考慮した吸着モデルを用いる必要があることが分かった。また,直線的な構造のCO2分子は正四面体構造のCH4分子と比べてミクロ孔の狭い喉部を通過しやすく,他のヘテロ原子に比べてケロジェン分子に多く含まれる酸素原子はCH4分子よりもCO2分子に対して強い親和性を示すことから,CO2分子はCH4分子よりも容易にケロジェンに吸着してCH4を置換することが示された。さらに,ケロジェンのミクロ孔にH2O分子が存在する場合,水素結合によるH2O分子の集積によってCH4分子の移動経路が閉そくされるためCH4分子の置換が妨げられることが分かった。

  • 永井 豪, 満留 敬人, 堤 健, 末木 俊輔, 伊奈 稔哲, Tamm Matthias, 野村 琴広
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 5 号 p. 256-262
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー

    ホウ素アニオン含有N-ヘテロ環状カルベン(WCA-NHC)配位子を有するイミド配位バナジウム錯体,V(N-2,6-Me2C6H3)Cl2(WCA-NHC)(1),触媒によるエチレン重合およびノルボルネンとの共重合における触媒活性は,使用するAl助触媒の影響を強く受け,特にAliBu3助触媒存在下でメチルアルミノキサン(MAO)より高活性を示した。触媒溶液の51V NMRスペクトル測定およびESR測定,V K-Edge XANES測定より,MAOの存在下での触媒溶液では価数変化が見られないのに対し,AliBu3の存在下の触媒溶液ではNMRおよびESRスペクトルが観察されず,XANESスペクトルよりAlによる還元反応が進行している可能性が示唆された。したがって,この触媒反応で見られるAl助触媒の効果は,価数の異なる触媒活性種の生成に起因することが示唆された。

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