Journal of the Japan Petroleum Institute
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62 巻, 5 号
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総合論文
  • 坂 志朗, Harifara RABEMANOLONTSOA, 南 英治, 河本 晴雄
    原稿種別: 総合論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 199-204
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    酢酸発酵によるリグノセルロースからの先進エタノール生産プロセスを開発した。2段階加圧熱水によりリグノセルロースをC6糖およびC5糖,これら糖類の過分解物,リグニン由来物質などへと分解し,嫌気性条件下で酢酸発酵する。発酵には混合微生物を用い,回分または流加培養によりNaOH(Ca(OH)2も可)でpHを6.5~7.0に制御しながら発酵する。得られた酢酸ナトリウムはバイポーラ電気透析により酢酸に変換し,最大200 g/Lまで濃縮してルイス酸担持触媒(Ru–Sn/TiO2)により水素化し,バイオエタノールを得る。アルコール発酵法では,乾物1トンのスギより200~300 Lのバイオエタノールが生産されるのに対し,本プロセスでは2倍のエタノールが得られた。また,アルコール発酵法に比べてエネルギー回収率は高く,かつCO2排出原単位は低く,環境負荷低減のためのCO2削減に本プロセスが有効であることが明らかとなった。

一般論文
  • 佐藤 和政, Aqidatul IZZA, 渡辺 克哉, 萩原 和彦, 加藤 睦美, 天野 佳正, 町田 基
    原稿種別: 一般論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 205-210
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    硫黄分(7.6 wt%)を含む石油コークスを原料とし,硫黄分の減少を抑制しながら細孔構造を発達させるKOH賦活条件の検討を行った。KOH賦活は物理混合法および含浸法を用いた。物理混合法と含浸法はそれぞれ大粒径および小粒径の原料の細孔発達に効果的であった。KOH/コークスの質量比と賦活温度が上昇すると,比表面積は増加するが硫黄含有率は減少した。したがって,硫黄分の減少を抑制し細孔構造を発達させるためには低温かつ水酸化カリウム量を減らした温和なKOH賦活条件が適する。粒径420~1000 μmの原料を物理混合法にて,また粒径10 μmの原料を含浸法にて,賦活温度550 ℃,KOH/コークスの質量比1の条件で賦活をした結果,得られた活性炭の比表面積および硫黄含有率はそれぞれ651 m2/g,2.9 wt%および812 m2/g,5.2 wt%であった。物理混合法で調製した活性炭を酸化処理してNi(II)イオン吸着を調べたところ,硫黄含有活性炭表面に酸性域でも吸着に有効なスルホ基が生成している可能性が示唆された。

一般論文 – 特集「創立60周年記念東京大会」–
  • 石井 克典, 柴田 愛, 竹内 淳登, 吉浦 詢子, 卜部 拓巳, 亀田 洋輔, 野村 幹弘
    原稿種別: 一般論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 211-219
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    膜反応器用水素選択透過シリカ膜の開発を対向拡散CVDにて行った。シリカ源としてテトラメトキシシラン(TMOS),メチルトリメトキシシラン(MTMOS),n-ブチルトリメトキシシラン(BTMOS),3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APrTMOS)を用いてシリカ膜を調製し,蒸着温度の影響と蒸着挙動を調べ,高温ガス分離性能の評価を行った。TMOS,MTMOSを用いて高温で蒸着した場合,H2/N2ガス透過率比100以上の高い分離性能を示すシリカ膜が得られた。一方,BTMOS,APrTMOSを用いて270 ℃程度で蒸着した場合,H2/N2ガス透過率比100,かつN2/SF6ガス透過率比100を示すシリカ膜が得られた。この理由として,シリカ源の有機置換基の安定性が関わっており,置換基の分解とシロキサン結合形成による膜形成が競合することで,細孔径の分布がTMOS由来のものからより大きい細孔へ変化するためであると考えている。特に,アミノ基を導入することで有機置換基の安定性が変化し,APrTMOSをシリカ源に用いた場合,BTMOSと比べ,高いH2ガス透過率を有するシリカ膜が得られた。BTMOSでは蒸着時間を30 minから180 minへ延ばした場合,H2ガス透過率は90 %減少したが,APrTMOSでは20 %しか低下しなかった。また,APrTMOSの蒸着時間をさらに240 minまで延ばしたところ,H2ガス透過率は7.2 × 10−7 mol m−2 s−1 Pa−1まで向上し,H2/C3H8ガス透過率比21000を示すシリカ膜が得られた。高温下で分離性能を示したMTMOSをシリカ源としたシリカ膜を用いてH2/C3H8分離試験を行った結果,500 ℃での単成分の結果から算出した単成分透過率比と混合ガス分離係数が約100と同レベルであった。以上の結果から,二成分系で高い分離性能を有するシリカ膜を調製するためには,有機置換基の熱安定性を有するシリカ源を用いてシリカ膜を調製し,また,その膜が単成分透過試験において高い分離性能を示す必要があることが明らかとなった。

  • 西田 吉秀, 和田 雄一郎, Chandan CHAUDHARI, 佐藤 勝俊, 永岡 勝俊
    原稿種別: 一般論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 220-227
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    マイクロ波加熱を利用した化学的還元法により,ポリビニルピロリドンで保護された貴金属ナノ粒子を簡便に調製した。通常,エタノールは沸点が低すぎるため,還元剤として適さないが,本研究では密閉調製容器を用いることでエタノールを還元剤として使用することを試みた。その結果,エタノールの優れた還元力により,3 nm前後の粒径を有するRu,Rh,Pd,Ir,Ptナノ粒子が形成することが分かった。PdとPtナノ粒子については,それらの結晶子径が還元剤であるエタノールの濃度に依存していた。さらに,調製した各金属ナノ粒子のニトリル水素化活性を評価したところ,Rhのみが優れたニトリルの転化率と目的生成物(第二級イミン)の収率を示すことが分かった。Rhの触媒活性は,その粒径によって大きく変化し,平均粒径3.3 nmのRhナノ粒子が最も優れた触媒重量あたりの活性を示した。このような粒径の最適化により,我々は世界で初めてニトリルを常温常圧で第二級イミンへと変換することに成功した。

  • 山口 有朋, 三村 直樹, 白井 誠之, 佐藤 修
    原稿種別: 一般論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 228-233
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    リグニン解重合反応による有用な芳香族化合物製造は,リグノセルロース系バイオマスの有効利用の観点から注目されている。リグニンは,芳香族化合物モノマーが様々な結合で繋がった複雑な三次元的な高分子である。リグニン解重合には,モノマー間に存在するC–Oエーテル結合およびC–C結合を開裂する必要がある。我々は,担持金属触媒を用いて超臨界水中にてリグニンのモデル化合物の結合開裂挙動を報告している。本論文では,リグニンモデル化合物の結合開裂挙動の結果から,リグニンから得られる芳香族モノマー収率を予想した。予想されるモノマー収率は,Pd/C>Rh/C>Pt/C>Ru/Cの順となり,針葉樹より広葉樹のリグニンからより多くの芳香族モノマーが得られる。さらに,我々はオルガノソルブリグニンの解重合反応によるモノマー収率の予測と実験結果を比較した。実験で実際に得られるモノマー収率は予想結果と同じ担持金属触媒の順となった。しかし,実験結果でのモノマー収率は予想されるモノマー収率よりも低くなった。これは,モデル化合物の分解反応中には再重合反応があまり進行しないのに対して,リグニンの解重合反応中には再重合反応が進行するためと考えられる。

  • 猪股 雄介, 美濃 真, 秦 慎一, 清永 英嗣, 盛田 啓一郎, 引野 健治, 吉田 和広, 春田 正毅, 村山 徹
    原稿種別: 一般論文
    2019 年 62 巻 5 号 p. 234-243
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    石炭火力発電所あるいは工業用ボイラーでの燃焼活動によって生成する窒素酸化物(NOx)の効率的な除去が望まれている。その方策としてアンモニアを還元剤として用いたNH3-SCR(Selective Catalytic Reduction)が挙げられるが,低温で活性を示す実用触媒の開発が急務の課題となっている。本研究では,金属酸化物担持金ナノ粒子の低温脱硝触媒としての可能性を検討した。様々な金属酸化物に担持した金ナノ粒子のNH3-SCRを検討したところ,1 wt%Au/CuOが100 ℃でNO転化率20 %,N2選択率約100 %を示すことが明らかとなった。一方,200 ℃では金を担持することで起こるアンモニア酸化反応に起因し,副生成物としてN2Oが生成することが明らかとなった。他の貴金属担持触媒(Pt/CuO,Pd/CuO)についても同様に活性検討を行ったが,低温(100~120 ℃)ではAu/CuOが最も高い活性を示した。さらに,2元金属酸化物担持金ナノ粒子触媒のNH3-SCRを検討し,1 wt%Au/10 wt%CuO/Al2O3が最も高いN2収率(45 %)を示すことが明らかとなった。

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