Journal of the Japan Petroleum Institute
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63 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総合論文
  • 辻 智也, 保科 貴亮, 高木 利治
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 3 号 p. 107-122
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    ジメチルエーテル(DME)に対する8定数Benedict-Webb-Rubin(BWR)状態方程式の定数を決定するため,P-V-T関係と飽和蒸気圧を測定した。P-V-T関係では等容積法によりエタンの350.00~370.00 Kの3等温系,プロパンの350.00~450.00 Kの10等温系,DMEの350.00~450.00 Kの10等温系について圧力8.341 MPaまでの気相領域を測定した。飽和蒸気圧測定では静置法によりプロパン,ブタンおよびDMEについて238.31~402.70 Kの圧力57.06~5015.5 kPaまでの実測値を得た。DMEのP-V-T関係と飽和蒸気圧は軽質炭化水素と類似の傾向を示した。そこで,BWR状態方程式の八つの定数を対応状態原理により,プロパンとブタンの無次元化BWR定数とDMEの偏心因子から決定した。さらに,精度を向上させるために臨界点近傍については402.00 KでのDMEのP-V-T関係の実測値に合致するように3定数を再決定した。

  • 岩﨑 孝紀
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 3 号 p. 123-132
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    1,3-ブタジエンは安価かつ反応性に富むC4炭素資源として基幹化成品の製造に利用されている。しかし,反応原料として1,3-ブタジエンを利用するためには,その共役した二つの二重結合に対する付加様式の制御が重要となる。本総説では,1,3-ブタジエンの内部炭素選択的なアルキル基導入反応の発見に端を発する,均一系遷移金属錯体触媒を利用した炭素求電子剤による1,3-ブタジエンの官能基化反応に関する我々の研究成果を紹介する。銅触媒の調製方法を工夫することにより,フッ化アルキルを炭素求電子剤,アルキルグリニャール試薬をヒドリド源とする1,3-ブタジエンの内部炭素選択的な還元的アルキル化反応が進行することを見出した。ニッケル触媒を用いる類似の反応では,1,3-ブタジエンの二量化を伴った官能基化が可能であった。炭素求電子剤としてフッ化アルキルを用いることが,成功の鍵である。炭素求電子剤としてポリフルオロアレーンを用いた類似の反応により,1,3-ブタジエンへのポリフルオロアリール基の導入が可能である。これらの反応の基質適用範囲および反応機構に関する検討についても併せて述べる。

  • 片野 恵太, 高橋 祐樹, 佐藤 浩一, 辻 浩二, 早坂 俊明, 中村 勉, 豊岡 義行, 稲村 和浩
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    (一財)石油エネルギー技術センター(JPEC)は2011年度より「ペトロリオミクス」と称する新しい石油精製技術の体系化にチャレンジしている。当技術は,重質油成分を分子レベルで解析し反応モデル等を構築する究極の手法と言える。最初の5 年間で,フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FT-ICR MS)を用い重質油の構成分子として2500万のデータベースを揃え,残油直接脱硫(RDS)装置中での分子反応や重質油処理中のアスファルテン(AS)凝集析出予測モデルへの応用を提案してきた。最近では,これらを基盤技術として発展させ,非在来型原油を中心とした原油の分子レベルでのデータベース化,RDSと残油流動接触分解(RFCC)装置の最適効率運転を目指した分子反応モデリング,さらに残油アップグレーディング装置におけるAS 凝集析出予測など,実用レベルの技術への展開を図っている。

一般論文
  • 上野 錬, 上道 芳夫, 神田 康晴
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 3 号 p. 141-148
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,リン化ロジウム(Rh2P)系脱硫触媒の昇温硫化(TPS)プロファイルを測定し,耐硫黄性を定性的かつ定量的な観点から評価した。Rh/SiO2触媒のTPSプロファイルでは,400 ℃付近にRh2S3の生成に起因するH2Sの消費ピークが見られた。これに対し,このピークはP/Rh比の増加および還元温度の上昇により,高温側へシフトし,小さくなることが分かった。さらに,TPSプロファイルを30~350 ℃までの範囲で定量した結果から,P/Rh比が1.5以上の触媒では,Rh種と反応するH2Sの量をRh触媒と比較しておよそ80 %抑制できた。また,XRDにおけるRh2Pの回折ピーク強度が増加すると,Rh種と反応するH2S量は減少するため,Rh2Pが高い耐硫黄性を有していることを明らかにした。定量結果から得られた触媒中のS含有量とP/Rh比との関係は,先に報告された硫化処理後のRh2P触媒に含まれるS量とよく一致しており,本法の妥当性が確認された。以上のことから,TPS法はリン化物触媒の耐硫黄性評価法として優れており,Rh2Pが高い耐硫黄性を有していることを定性的かつ定量的な観点から明らかにした。

  • 山﨑 清行, 茂木 堯彦, 小倉 賢
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    メチル基修飾した窒素置換SBA-15(MeNSBA-15)は,骨格中のメチル基修飾された窒素原子が触媒活性点として働き,不飽和アルコールとCO2からの環状カーボネート合成に対して触媒作用を有する。合成された不飽和環状カーボネートは様々な化成品の合成中間体になり得る有用な化合物である。MeNSBA-15のこの反応に対する触媒作用を解明するために,反応基質であるアルコール体とCO2のそれぞれの濃度に対するターンオーバー頻度(TOF)の変化を測定した。その変化の傾向から,CO2の触媒表面に対する親和性が不飽和アルコールよりも高く,反応中において活性点上でカルバメート種と呼ばれるCO2が活性化した種が存在すると考えた。このことにより,MeNSBA-15によってこの反応は,カルバメート種の生成,カルバメート上への不飽和アルコールの吸着,アルコールの脱プロトン化とそれに伴うC–O結合生成,分子内環化,生成物の脱離という5 段階の素過程を経て進行していると推定した。

ノート
  • 吉川 晃平, 青柳 拓也, 小野寺 大剛, 高橋 恵理, 内藤 孝, 三宅 竜也, 野村 淳子
    原稿種別: ノート
    2020 年 63 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2020/05/01
    ジャーナル フリー

    CeO2表面におけるNO吸着機構,および吸着におけるO2,CO2,およびH2Oの共存影響をin-situ IR分光法を用いて解析した。NOはCeO2表面においてアニオン性ニトロシル基(–NO)を形成しながら吸着することが分かった。–NO形成に伴い,二座炭酸塩の分解,および表面水酸基のピークシフトが観測され,NOはCO2と競争吸着し,形成した–NOは水酸基と相互作用したことが示唆された。O2,CO2,およびH2O共存効果を比較した結果,O2との共存ではNO吸着が促進される一方,CO2およびH2Oの共存によりNO吸着は抑制され,CO2およびH2OはいずれもNOと競争吸着することが示唆された。本競争吸着機構を考慮し,CO2およびH2O濃度の高いガスにおいてはNO吸着を抑制できることから,CeO2の劣化は顕著でないとの見込みを得た。

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