Journal of the Japan Petroleum Institute
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65 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • 野本 賢俊, 久保 裕真, 三浦 大樹, 宍戸 哲也
    原稿種別: 一般論文
    2022 年 65 巻 5 号 p. 161-170
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    メタノール酸化的改質(ATR: autothermal reforming of methanol)は,低温で燃料電池に水素を供給する反応として重要である。一方で,ATRは反応雰囲気に酸素を導入するため活性種である銅の酸化や凝集による触媒の劣化が課題である。Cu/ZnO/Al2O3(CZA)ならびにPdを添加したPd-CZAは,100 ℃ という低い外部加熱温度においても,メタノール改質反応が効率よく進行し,高い速度で水素を生成した。酸素の導入停止を繰り返す酸素オンオフ耐久試験を行ったところ,CZAは銅の凝集により触媒活性が徐々に低下したのに対して,Pd-CZAではほとんど活性は低下せず,高い水素生成速度を保持した。また,銅の凝集もほとんど進行しないことが明らかとなった。H2-TPR(temperature-programmed reduction)から,Pd-CZAは銅の還元温度がCZAと比較して約30 ℃低下することが分かった。この銅の易還元性により,酸素オンオフ耐久試験中にCZAと比較して低温で銅の酸化と再還元が進行し,銅の凝集を抑制したと考えられる。さらに,Pd-CZAは前処理として水素還元を行わずにATR反応ガスを流通させることで,銅が還元され,改質反応に活性を示した。これらの結果から,Pd-CZA触媒は,自己再生能ならびに自己活性化能を示す高機能触媒であることが分かった。

ノート
一般論文 –特集「函館大会」–
  • 小野 太輝, 神田 康晴
    原稿種別: 一般論文
    2022 年 65 巻 5 号 p. 175-183
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,RhとPの担持状態がP添加Rh触媒の水素化脱硫(HDS)活性に与える影響について検討した。調製した触媒は紫外可視拡散反射分光法(UV-Vis DRS),昇温還元(TPR),X線回折(XRD),CO吸着によりキャラクタリゼーションした。P/SiO2にRhを担持する逐次含浸法で調製したRh/P/SiO2触媒では,SiO2表面に担持されたリン酸種とRh種が相互作用することで,高分散なRh–リン酸錯体が生成することを明らかにした。Rh/SiO2にP源を担持したP/Rh/SiO2触媒では,表面がPで覆われたRh種が多く見られた。一方,共含浸法で調製したRh–P/SiO2触媒では,多核化が進行したRh錯体が生成した。XRDとCO吸着量から,Rh種の分散度はRh/P/SiO2 > P/Rh/SiO2 ≈ Rh–P/SiO2となることを明らかにした。600 ℃で還元した触媒のHDS活性はRh/P/SiO2 > P/Rh/SiO2 ≈ Rh–P/SiO2となった。Rh/P/SiO2触媒が最も高いHDS活性を示したのは,Pによる被覆がなくRh原子が表面に露出しているRh2Pが高分散に存在するためであると言える。

  • 山﨑 達也, 高垣 敦, 宍戸 哲也, 阪東 恭子, 小平 哲也, 村上 純一, Jun Tae SONG, 丹羽 栄貴, 渡邊 源規, 石 ...
    原稿種別: 一般論文
    2022 年 65 巻 5 号 p. 184-191
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    白金担持アルミナ上で,一酸化窒素(NO)を酸化剤としてメタンをシアン化水素(HCN)に変換する際の白金ナノ粒子の粒径効果について検討した。担持量と焼成温度を制御することにより,1.6〜4.1 nmの範囲で様々な平均粒子径のPt触媒を得ることができた。Pt表面サイト量はパルス法によるCO滴定で決定し,触媒活性は同一接触時間下で評価した。Pt の粒子が小さい触媒(1.6〜3.2 nm)では,NO 転化率が粒子径の大きい触媒よりも低いことが分かった。粒子径の大きな触媒(4.1〜4.2 nm)は,10 wt% Pt/Al2O3 において 400 ℃で 収率1.3 %(炭素ベース)で高い HCN 選択率(53.5 %)を示した。大きなPt粒子が高い活性を示す理由の一つは,金属と担体の界面で進行するHCNから二酸化炭素とアンモニアへの逐次反応を抑制したためと思われる。Pt L3端X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルから,反応試験後の小粒子触媒はPt–CN種で覆われていることが分かった。一方,大粒子触媒ではPt–COが主な吸着種として観測され,大粒子触媒の方がHCN脱離が容易であることが示唆された。

  • 金田 玲奈, 菅沼 学史, 辻 悦司, 片田 直伸
    原稿種別: 一般論文
    2022 年 65 巻 5 号 p. 192-199
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    担持ニッケル触媒によるピログルタミン酸の水素化でラクタム構造を有するアミノアルコールのピログルタミノールが生成する反応について研究した。Ni/SiO2は高選択性を示し,ピログルタミノール選択率は73 %だった。触媒表面上に吸着したカルボキシ基の構造と反応性を調べるためにin situ FTIR分析を行い,酢酸をカルボン酸の単純モデル化合物として用いた。Ni/SiO2上で酢酸が開裂後,SiO2表面に吸着し,単座シリルエステル種が生じた。Ni/SiO2上のシリルエステル吸着種はNi/Nb2O5やNi/ZrO2上のアセテートや酢酸吸着種に比べて水素の供給により速やかに減衰した。これらの結果からNi/SiO2上でピログルタミン酸は酢酸と同じようにシリルエステル吸着種を形成し,水素化されると考えられる。

  • Sirilak MEKCHAM, Xiaohua HOU, 野村 琴広
    原稿種別: 一般論文
    2022 年 65 巻 5 号 p. 200-206
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    各種芳香族イミド配位子を有するバナジウム(V)–アルキリデン錯体触媒,V(CHSiMe3)(N-2,6-Cl2C6H3)(OR)(PMe3)2 [R=C6F5 (1), C6Cl5 (3), OC(CF3)3 (5)], V(CHSiMe3)(N-2,6-F2C6H3)(OC6Cl5)(PMe3)2 (2), V(CHSiMe3)(NR’)[OC(CF3)3](PMe3)2 [R’=C6H5 (4), C6F5 (6)],によるノルボルネン(NBE)やシクロへプテン(CHPE)の開環メタセシス重合(ROMP, Ring Opening Metathesis Polymerization)における(3級ホスフィンやB(C6F5)3などの)添加剤効果を検討した。触媒活性はB(C6F5)3の添加により著しく低下した。5と1当量のB(C6F5)3との反応では,PMe3の解離後にMe3SiH=CHSiMe3の副生を伴い,触媒失活種(2量体)の生成が示唆された。45による25 ℃でのNBEのROMPによる活性は3当量のPMe3やPEt3の添加で向上し,PnBu3やPtBu3,PPh3,P(OMe)3の添加では向上しなかった。いずれの場合も,得られるポリマーのオレフィン二重結合は高いcis選択性を示した(97~>99 %)。4のC6D6溶液中に2当量のPEt3を添加すると,温度可変31P-NMRおよび19F-NMRスペクトルから速やかなホスフィン(配位子)交換による別のアルキリデン種の生成が示唆された。アリルトリメチルシラン(ATMS)存在下,2によるシクロへプテンの連鎖移動開環重合が進行した。得られるポリマーの分子量は系内のATMS濃度で調節可能で,両末端が官能基化された直鎖状の開環オリゴマーが合成可能となった。一方,16ではこの種の反応は起こらなかった。

ノート –特集「函館大会」–
  • 水上 裕貴, 安井 彩乃, 平野 奨, 木村 彰克, 宇野 満, 砂場 敏行
    原稿種別: ノート
    2022 年 65 巻 5 号 p. 207-211
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    石油 · 天然ガス開発において,坑井の生産性を改善する目的で酸処理が行われる。二相ステンレス鋼は優れた耐食性を有するため厳しい腐食環境で使用されるが,酸処理においては腐食抑制剤を使用していても二相のうち一方の相で選択溶解が発生し,激しく腐食することが知られている。本研究では,腐食抑制剤への添加剤としてヨウ化銅(CuI)に着目し,国内外に使用実績のある22 wt% Crを含有する二相ステンレス鋼の酸環境(塩酸水溶液)中の腐食に対するCuIの影響を浸漬試験および電気化学測定を用いて調査した。浸漬試験の結果,腐食抑制剤のみでは防食率が35 %であったのに対して,CuIを添加した条件では97 %以上の防食率を示した。さらに,断面観察やXRDの結果から,CuIが選択溶解を抑制していることが確認された。また,電気化学測定ではCuIを添加しないコントロール条件より腐食電位が貴な値となり,表面皮膜抵抗がより大きくなったことから,CuIは二相ステンレス鋼の不働態皮膜の耐食性を高めていると考えられる。

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